暗号資産取引所絡みで、韓国の市中銀行から外国へ異常な外貨流出が認められたという件の続報です。
外国への異常な送金があった!
2022年07月27日に金融監督院が公表した調査の進展状況によれば、海外への資金流出規模は総額「33億7,000万ドル」(約4兆1,000億ウォン)となっていました。
『新韓銀行』:20億6,000万ドル(約2兆5,000億ウォン)
計33億7,000万ドル(4兆1,000億ウォン)
※ただしこの中には通常の商取引も入っていると推測されます。
利用されたスキームは以下のようなものでした。
↑あくまでも模式図です。送金側、受け側の法人は複数社。同じスキームを使って複数の法人がマネロンの疑いがある海外送金を行っていた可能性があります。
暗号資産取引所から複数の個人・法人口座を経由して法人口座へ。そこから輸入代金の決済という名目で外国へ資金が出ていった、とされています。これは一例です。
キムチプレミアムを利用したアビトラでもうけたお金か
もともと暗号資産取引所にあった資金はなんなんだ、という疑問がありますが、韓国メディアの報道によれば、いわゆるアビトラで儲けたものと目されています。
Money1でも少しだけご紹介したことがありますが、韓国の暗号資産取引所は「キムチプレミアム」と呼ばれて、諸外国の取引所よりも売買価格が高い傾向にありました。
相対的に安く暗号資産を買える取引所で購入。これを韓国の取引所に送って売却するわけです。そうすると差額分だけリスクがなくもうけることが可能です(送金手数料と時間がリスク)。このような取引所間の価格差を利用する取引のことを「アービトラージ」といいます。略してアビトラです。
以下の過去記事では、中国の投資家が韓国の暗号資産取引所で組織的にアビトラを行っているという件をご紹介しました。
これも、韓国の暗号資産取引所では他の取引所より高値がつくことが多いという「キムチプレミアム」を利用してのことでした。
韓国メディアの見込みが正しいのだとすれば、今回問題になっている資金流出は脱税でありマネーロンダリングです。
拘束された3人は約4,000億ウォンの送金に関与
本件に関与したと目される人間が既に3人、「特定金融取引情報の報告および利用等に関する法律(特金法)」違反、「外国為替管理法」違反で当局に拘束されています。
仁川にある素材メーカーA社の企業代表(上記3人のうちの1人)が恐らく首謀者で、『ウリ銀行』のソウル支店から約4,000億ウォンを送金したと見られ、これを支援した人間は事後に数十億ウォンの手数料を受け取った――と報じられています。
ただし、これだけではありません。他にも同様にケースがないのかは現在も調査が進んでいます。なにせ捜査対象となっているのは、上記の『ウリィ銀行』『新韓銀行』だけでも「33億7,000万ドル」(約4兆1,000億ウォン)です。
もしこれが全部違法な送金だとすれば、約4,000億ウォンなど氷山の一角だといえます。
異常送金と目されるのが2倍になった!
他の市中銀行などにも調査を拡大した結果……不審な海外送金が「8兆5,415億ウォン」もあったことが分かりました。
つまり2倍に膨らんだのです。
金融監督院によると、異常な海外送金に関与していた業者も当初の「44社」から「65社」に増えました。もちろんA社だけなどでは断じてありません。
金融監督院の李卜鉉(イ・ボクヒョン)院長は「検査で確認された(銀行の)違法・不当行為については、関連法規と手順に従い、厳しい措置を取る。必要に応じ、関税庁など関連機関と情報を共有する」と述べています。
また「異常な外国為替取引については深刻にとらえており、制裁などは避けられないのではないか」とも語っていますので、関わった金融機関はただでは済まないものと見られます。
さて、調査対象となる金額も膨らみ、言葉は悪いですが非常に面白くなってきました。
大前提として、この金額は銀行側が自主的に出した資料によれば……です。銀行の自主的な検査による結果に過ぎませんので、もし金融監督院が立ち入り検査を行った場合、さらにマズイものが見つかり、金額が膨らむ可能性があります。
読者の皆さまもぜひご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)