『韓国銀行』総裁が「今年も来年も経常収支は黒字だ」。経常収支が「343億ドル」も減ってますけど……

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2022年08月に韓国の経常収支は約30億ドルの赤字となりました。

経常収支が赤字になると韓国はとたんに国が傾きます。

アメリカ合衆国のように経常収支が大赤字でも金融でお金が巨額に入ってくるから大丈夫だもんね、という国ではないからです。

経常収支の赤字が連続するとどこかから足りない外貨を補わなければなりません。これが、過去2回、韓国に訪れたドボン騒動の元になりました。

Money1でも何度もご紹介してきましが、韓国にとって「貿易収支赤字 ⇒ 経常収支赤字」はいつか来た道なのです。そのため「残酷な四月」以外の月、08月に経常収支が赤字転落したのは、よくない兆しです。

韓国内でこの経常収支赤転について、メディアが懸念の記事を出していますが、さすがに韓国の金融当局も心得たもので、火消しを始めています。

韓国メディア『NEWSIS』の記事から以下に引用してみます。

李昌鏞(イ・チャンヨン)『韓国銀行』総裁は07日、「韓国の経常収支は今年年間で黒字基調を維持するだろう」とし、来年も黒字と見込んでいると明らかにした。

李総裁はこの日、国会企画財政委員会の国政監査に出席し、「今年と来年の経常収支は黒字を維持すると見るか」というイ・スジン『共に民主党』議員の質問に「経常収支が上半期に270億ドル程度の黒字で下半期は残り数カ月だ。黒字と赤字を行き来したとしても、年間全体では黒字基調が維持されるだろう」と話した。

また「統計的にもすでに半年以上が過ぎたから確実だ」と付け加えた。

(中略)

同総裁は「来年の場合、半導体景気が第2四半期を過ぎてから良くなると見ており、世界中の景気後退も上半期に集中し、上半期以降に回復するだろうから、エネルギー価格も少し安定し以前より少なくなるかもしれないが、来年も経常収支の黒字基調は維持されると予想する」と明らかにした。

⇒参照・引用元:『NEWSIS』「李昌鏞『経常収支は今年年間黒字確実…来年も黒字』」

「今年と来年の経常収支は黒字を維持すると見るか」という質問には呆れますが、それでも李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「今年の黒字は確実」、2023年も「経常収支の黒字は維持される」と答えました。

本当は「来年のことなんか分かんねーよ」と答えたかったのではないでしょうか。

ただし、2022年の経常収支が黒字で回るだろうことはほぼ確実です。

たからといって韓国経済が安泰というわけではありません。

2022年08月までの国際収支統計が出ましたので、昨年・2021年と今年2022年の経常収支の推移を比較すると以下のようになります。


⇒データ出典:『韓国銀行』公式サイト「ECOS」

「オレンジの2022年」と「青の2021年のライン」の差をご覧ください。2022年の経常収支がいかに低迷しているかが分かります。

累計金額で具体的に比較すると以下のようになります。

01~08月「経常収支」累計
2021年:569億300万ドル
2022年:225億2,490万ドル
2022年 – 2021年:-343億7,810万ドル

08月までの時点で、昨年と比較して経常収支はすでに「344億ドル」も減少しています。その分、昨年より外貨が入ってこなくなり、外貨準備が積めなくなっているわけです。

で、足りない分をかつてのように海外からの融資などに頼ると……また償還に問題が生じたりするわけです。

ですから、2022年なんとか黒字で回ったとしても「危機的状況にならない」とは決していえません。

過去にも例があるのです。他でもない「2008~2009年の韓国通貨危機」です。

2008年は経常収支が黒字で回ったのに、その年の10月にはアメリカ合衆国・『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)が提供した「通貨スワップ」(一応「 」でくくります)で救われています。また12月には中国との「通貨スワップ」も締結しました。

――というわけで、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁のお言葉はもっともではありますが、それで安心とはいかないよ――なのです。

(柏ケミカル@dcp)

以下は面倒くさい話がお好きな方向けの注釈です。

ただし、これは年間での話。月次の経常収支は以下のようなひどい状況でした。


↑2008年の国際収支統計から切り出したもの(データ出典は『韓国銀行』公式サイト「ECOS」)。黄色でフォーカスしてあるのが経常収支。青でフォーカスしてあるのが貿易収支の赤字月です。▲はマイナスの意味です。

ご注目いただきたいのは、赤字(▲)になっていなくても貿易収支の金額が異常に小さいことです。

2008年の貿易収支推移
01月:6億3,090万ドル
02月:▲3億8,350万ドル
03月:11億160万ドル
04月:4億8,840万ドル
05月:▲5億5,740万ドル
06月:8億6,850万ドル
07月:3億8,320万ドル
08月:▲22億3,220万ドル
09月:16億8,620万ドル
10月:8億2,810万ドル
11月:14億6,070万ドル
12月:74億7,160万ドル

⇒データ出典:『韓国銀行』公式サイト「ECOS」

上掲のとおり、2008年は12月の「74億7,160万ドル」以外は、貿易収支が「なんでこんな少ないの!」というほどの小額か赤字です。

つまり、貿易収支の大幅な縮小・赤字化が容易に経常収支の赤字化につながり、経常収支の赤字化が容易に韓国経済を傾けてしまうのです。月次での「貿易収支赤字化 ⇒ 経常収支赤字化」は、韓国の場合、非常に危ないサインなのだ――ということを示しています(特に当時は)。

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