韓国『順天郷大学』IT金融経済学部の金龍夏(キム·ヨンハ)教授といえば、年金問題の専門家として有名な先生です※。
「韓国の年金システムがもたない」と警鐘を鳴らされています。
2057年には年金基金は枯渇する
Money1でも何度かご紹介してきましたが、韓国は基本「低負担・低福祉」を旨としてきた国です。高度成長期で人口の右肩上がりな時代ならそれでも良かったのですが、人口増加もピークを超えて今や下り坂。昔の制度設計ではもちません。
国民年金基金は2057年には枯渇するといわれているのです。
金教授は以下のように提言しています。
「今の国民年金制度をそのまま放置しておけば、2030世代(現在20、30歳代の人)が年金を本格的に受け取り始める2057年ごろには基金が枯渇する恐れがある」
「基金に資金がなくなると、現行「所得の9%」を出す国民年金保険料率を『30%レベル』まで上げなければならない状況があり得る」
現在20、30歳代の人たちが老齢年金を受給しだす頃には、基金が枯渇しており、現在所得の9%で済んでいる保険料率が30%に上がっているかも――というのです。
所得の30%を持っていかれるなんて話は韓国の皆さんも願い下げでしょう。
金教授は、枯渇させないで収支を合わせられる保険料率は「17%」としています(18%という計算結果もあります)。ですので提言としては、
「基金が枯渇する前に、あらかじめ年金改革を実施して収支を合わせることができる水準である17%まで保険料率を高めなければならない」
「ただし、20余年にわたって徐々に上げて、家計と企業の衝撃を最小化しなければならない」
となっています。保険料率を現在の2倍にするべきとのこと。
20年余りかけて、という条件は付いていますが、それでも「2倍にします!」という法改正には、国民からの反発が避けられないでしょう。
※ちなみに、この金教授はアイドルグループ『EXO』のリーダー・スホさんの実父。金教授は「親日派」、スホさんは「親日派の息子」とネット上のレッテル貼りにあったことがあります。以下の記事で『中央日報(日本語版)』が報じています。
文政権が次期政権に丸投げした難題
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権には難題ばかりが突きつけられています。しかし、これは前文在寅政権がポンコツだったからです。
この国民年金基金の枯渇問題にしても、文大統領の任期中に問題が提起されていたにもかかわらず、根本的な改革を何もしませんでした。
その理由は不明ですが、徹底的なポピュリストであり、手柄は誇るくせに不始末については沈黙を守るという不誠実な態度であったことから推察するに、「国民から不人気となる改革はやりたくなかった」のでしょう。
この怠惰な態度によって何よりも大切な時間を失いました。時間は取り返しがつきません。
文政権が先送りした難題を尹政権が解かなければならなくなっています。
(吉田ハンチング@dcp)