政権末期のためか、韓国・文在寅大統領に対する批判の声が上がるようになっています。韓国メディア『中央日報』に非常に興味深い記事が出ています(2021年05月13日)。
文大統領の標榜した「所得主導経済」なるものに理論的背景を与えたという「學峴(ハクヒョン)学派」からも、文政権の経済政策は失敗だったと指摘されたというのです。
所得主導経済とは?
「所得主導経済」とは、至極簡単にいうと「労働所得の引き上げによって経済を成長させる」という考え方です。
労働者、家計の所得を増やせば消費が増え、 製品・サービスがたくさん売れるようになる。すると企業の業績も上がり、さらなる賃金増もある。そうなるとさらに消費も増え……と好循環を生み出せるというのです。また、企業・家計の所得が増えれば税収も上がり、国の公的サービスも充実しますね。
なんだか「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話ですが、この「所得主導経済」を実践するために文大統領は、「最低時給を1万ウォンに!」などの公約を掲げていたのです。で、実際に大統領になってからも「所得主導経済」の考え方を基に政策を打ってきました。
が……。
ハクヒョン学派も文政権の経済政策には「NO!」
で、先の『中央日報』記事の話に戻ります。
同記事によれば、文政権の政策に理論上の基盤を与えたはずの「ハクヒョン学派」の先生方が、「将来の世代のための政策パラダイムの転換」という論文の中で、文政権の経済政策は失敗であると断じ、その原因を以下のように述べているとのこと。
記事の一部から以下に引用します。
任期内に成果を実現しなければならないという焦りから市場の動作原理を無視し、過去の開発の時代にも利用できる市場に逆らう措置を乱発した
政治的配慮が支配する人気迎合的政策を首尾一貫することなく推進し、国民の経済活動に混乱を与え、経済政策の原則さえ毀損した
それぞれの指摘が具体的に文政権のどの施策・姿勢について述べているのが、この記事からは分かりませんが、まず分配から始めて経済を成長させるという考え方ですので、「やっぱり最低時給1万ウォンは無理でした」と途中で諦めたことなどを批判しているのかもしれません。
つまり、この学派の先生方は「なぜ途中で諦めるんだ。任期が終わった後になってからでも成果が出ただろうに」と嘆いていらっしゃるのではないでしょうか。
お言葉ではございますが、「所得主導経済」なるものがそもそも無理だった――という結論はないのでしょうか。
※「所得主導経済」については、安倍誠先生の以下の解説が大変に勉強になります。ぜひご参照ください。
⇒『日本貿易振興機構 アジア経済研究所』公式サイト「文在寅政権の経済学――「所得主導成長」とは何か」
(吉田ハンチング@dcp)