読者の皆さまも最近、中国の負債がGDPの3倍に達したというニュースを目にされたのではないでしょうか。これは、『JPモルガン』研究者の推計を基にしています。
中国のマクロレバレッジ比率が283.9%に達すると推測したのです。マクロレバレッジ比率とは、政府・(非金融)企業・家計3部門の負債の合計をGDPとの比で求めた指標です。
中国の3部門の負債合計はGDPの2.839倍あり、つまり約3倍になるというわけです。
問題なのは「政府負債」です。これの実態がよく分かりません。中央政府と地方政府、2つの負債を足して「D1」、それに「非営利公共機関の負債」を足すと「D2」です。
国際間の政府負債の比較を行うときには、普通は「D2」を用います。『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)や『OECD』(Organisation for Economic Co-operation and Developmentの略:経済協力開発機構)でも「D2」を使います※。
D2:D1 + 非営利公共機関の負債
D3:D2 + 非金融公企業の負債
※韓国のように例外的に「D1」で発表している国もあります。恐らく負債を小さく見せるためと考えられます。
中国の場合には「政府負債」が正しくカウントされているのかがよく分かりません。特に問題なのは「地方政府の負債」です。
例えば、地方融資平台(Local government financing vehicle)の負債は、「9兆ドル」(約1,250兆円)という天文学的な金額に達していると推計されています。
また、『ゴールドマン・サックス』の報告書によれば、中国の地方政府は歳入の15~20%を利息返済に充てており、まさに火の車。事実上は中国の地方政府は破綻しているといっても過言ではないのです。
さらに、中国共産党中央政府は「地方政府を救済しない」と明言しています。地方政府が飛んだとしても、中央政府は「知らんがな」を貫くつもりなのです。
「銀行よ、地方政府に金を出せ」
そこで注目されているのが、『商業銀行』が地方政府への融資を義務付けられた――という情報です。Money1でも少しご紹介しましたが、
・最初の4~5年間は無利子での融資
(元本返済の義務なし)
・最長25年での返済
という驚くべき内容です。中国政府は公式に認めてはいませんが、これが事実なら「銀行よ、(事実上破綻している)地方政府にお金を出せ」です。
なぜこんなことになるのかといえば、銀行以外のところにお金がないからです。
2022年時点で中国の銀行業界の利益は「約2兆1,000億元」、6つの国有商業銀行の利益は約1兆3,500億元」でした。
端的にいえば、地方政府が二進も三進もいかなくなっているので、銀行はもうけている分を地方政府に付け替えろ、といっているのと同じです。
中国共産党が独裁を行っている中国だからこそできる無茶苦茶な手ですが、こんなことをすれば今度は銀行の利益が飛びます。
地方政府に投入されるお金の分だけ、運用して稼ぐ「時間と運用機会」を喪失することになるからです。
つまり、もはや中国には地方政府の負債を抑える手立ても、支援する方法も尽きているのです。
銀行に融資を強要したところで焼け石に水。
なぜなら、そのお金をこれまでのように不動産開発・インフラ開発に突っ込むので、リターンを生まないからです。ザルで水を汲むようなものです。
誰も住まない巨大マンション群、ほとんど自動車が通らない高速道路、万年赤字続きの高速鉄道、そんなものを造ってなんになるでしょうか。
穴を掘って埋めるだけの作業でもGDPは増えますが、それが国富を増やすことにつながるかといえば、全然別の話です。中国はお金の無駄使いを続け、それがもうどうしようもなくなっています。
無駄使いをするお金も、もうないのです。
だからこそ、中国の商務部や外交部は躍起になって、自由主義陣営国に「中国に投資するチャンスが来た」などというプロパガンダを繰り広げているのです。
こんなあからさまなウソにだまされる国や企業があったら「バカすぎる」としか評せません。
(吉田ハンチング@dcp)