『韓国電力公社』(以下『韓国電力』と表記)がお金を飲み込む底なし沼と化しています。
2022年は約30兆ウォンの営業赤字を出すものを見込まれていますが、上半期は約14兆ウォンの赤字だったので、予測は当たらずとも遠からずといったところです。
しかし、これがさらに膨らむのではないかという観測が出ました。40兆ウォンの赤字までいくのではないか、というのです。
まず、40兆ウォンという観測を紹介した韓国メディア『毎日経済』の記事から一部を以下に引用してみます。
(前略)金融情報会社『F&G』によると、韓電の今年の営業損失見通し(コンセンサス)は30兆1,748億ウォンに達する。
今月に入って電気料金を追加引き上げたにもかかわらず、今年下半期の営業損失は今年上半期「14兆3,033億ウォン」を超えた「15兆8,716億ウォン」と予想される。
一部では営業損失が最大40兆ウォンに達するという観測も出ている。
(後略)⇒参照・引用元:『毎日経済』「天井を抜いた電力購入費…韓電40兆赤字の懸念」
『韓国電力』が大赤字に陥っている主な理由は、石油・石炭・LNGなどの燃料価格が急騰しているのに適正に電気代に反映できないためです(先記事でご紹介したことでありますが値上げ幅も厳しく制限さえている)。韓国の場合、そもそもが電気のダンピング販売だったのに、燃料代が急速に値上がりしたことによって、「電気を売るほど赤字」という世にもあほらしい事態に陥ったのです。
こんなことは、最後は税金でなんとかできる公社でなければ耐えられません。
営業赤字がさらに膨らむという観測には根拠があります。
『韓国電力』が購入しなければならない電力卸売価格(SMP)が高騰しているのです。以下をご覧ください。2022年01~09月の月次平均SMPの推移です。
SMPは上昇傾向にあります。09月には「234.75ウォン」に達しました。
『韓国電力』は、発電会社などからこのSMPから電力を買わなければなりません。売電価格が上がらないので、SMPが上がれば上がるほど、経営は苦しくなるのです。
↑SMPは上掲のとおり『電力取引所』で確認できます。Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください/スクリーンショット
『電力取引所』のデータによれば、SMPは2022年10月20日、午前9時358.36ウォン/kwh(統合基準)に達しました。2010年01月に記録した「334.52ウォン」以来のことです。
これから冬に入り、電力消費量は増えます。SMPが高値進行を続ければ、『韓国電力』はさらに赤字を掘るのではないのか――といわけです。
本当に赤字がそこまで増えるのか正確な予測はできませんが、赤字が拡大する可能性は確かにあります。問題は、この赤字は最後には血税で補填するしかない――という事実です。
『韓国電力』の債券が多すぎる!
さらに『韓国電力』のこの窮地は、韓国の資金調達市場に甚大な被害を与えています。
上掲のような大赤字ですので、『韓国電力』はどこかから資金を調達しないと回りません。そこで社債発行など借金の手段を講じるわけですが、これが巨額に過ぎるのです。
2022年に『韓国電力』が発行可能な社債の金額は「29兆4,000億ウォン」です(ただしシーリングが撤廃されればさらに発行可能)。
これでは全く足りません。
その証拠に『韓国電力』は第1四半期だけでも「9兆6,700ウォン」の社債を発行しているのです。単純に4倍しても約40兆ウォンの社債を発行しないといけない計算になります。
さらにCPによる資金調達手段なども講じればどうなるでしょうか。
債券市場に莫大な金額の社債・CPが流れ込みます。『韓国電力』は公社ですから、その信用格付は国債に近い高いものです。当たり前ですが、投資家はリスクの低い確実に利益の出るものを選びます。
『韓国電力』の社債・CPが選好されると、それより信用格付の低い企業の社債・CPが売れなくなります。
債券市場では実際にこのようなことがすでに起こっています。先にご紹介したとおり、韓国レゴランドの不渡り騒動に端を発して、短期資金調達市場には売り物が溢れ、金利が急騰しているのです。
『韓国電力』の社債・CPが投資家の資金を奪っていったら、他の企業の資金調達はますますタイトにならざるを得ません。
公的企業が民間企業の資金調達を阻害して飛ばす可能性があるのです。
というわけで、『韓国電力』はもはやメエルシュトレエムです。資金を飲み込む恐怖の大渦が他の企業を巻き込む可能性があります。
(吉田ハンチング@dcp)