韓国企業が資金調達を巡ってドタバタです。
最近は日本語メディアでも大赤字の『韓国電力公社』が資金を飲み込むブラックホールなどと報じられていますが、これは親方太極旗なのをいいことに資金ショートを防ぐため社債を発行しまくっているからです。
親方太極旗の公企業が信用格付けをバックに資金をかさっらっていくので、信用格付の落ちる民間の中小・中堅企業などはたまったものではありません。
ただでさえ金利が高騰していて大変だというのに。
このような状況の中、『韓国ガス公社』が劣後債を1兆ウォン規模発行して資金調達するという情報が出ました。韓国の公社の例に漏れず、『ガス公社』もまた財務状況がよろしくありません。
韓国メディア『infomax』の記事を以下に引用してみます。
(前略)
16日、金融投資業界によると、最近『韓国ガス公社』は劣後債発行主管社選定のための入札提案要請書(RFP)を発送し、本格的な調達作業に乗り出した。『ガス公社』が各証券会社に発送したRFPによると、12月上旬に1兆ウォン内外の規模で劣後債を発行する計画だ。
30年満期で5年のコールオプションが付いた劣後債を考えている。
買収に参加する意思がある証券会社は、少なくとも500億ウォン以上の買収希望金額を提示しなければならず、100億ウォン単位で金額を上げることができる。
(後略)⇒参照・引用元:『infomax』「ガス公社、来月1兆ウォンの永久債発行の推進」
韓国の債券市場が凍結しているというのにビッグな計画です(笑)。
負債比率をなんとかするために発行する!
なぜ、このような環境なのに1兆ウォンもの劣後債を発行するのでしょうか。
それはMoney1でもかつてご紹介したことのある、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権の「公共機関改革」です。負債を自己資本で割った負債比率が200%を超えるか、財務評価点数が基準を下回る機関については、自助努力を行え――としました。
『ガス公社』の負債比率がいくらかというと、なんと「437.3%」もあります。
これをなんとかするために巨額の劣後債の発行を目論んだのです。
劣後債というのは、条件によって資本に組み込むことができます。負債比率は、上記のとおり「負債 ÷ 自己資本」で求めますので、劣後債を発行することで、うまくいけば分母の方を1兆ウォン増やすことができるわけです。
ただ、これを行ったとしても、5年のコールオプションがありますので、償還すればその1兆ウォンは返済しなければなりません。また、コールオプションを執行せず、すなわちコールスキップすれば、先の『興国生命』の二の舞で、韓国の債券市場についての信用がさらに失墜します。
煎じ詰めれば、『ガス公社』の劣後債の発行はその場しのぎに過ぎません。「どうするんだコレ」という話なのです。
劣後債の発行が止まった!
「どうするんだコレ」だったのですが、2022年11月21日、当の『ガス公社』が1兆ウォンの劣後債の発行について「報道に出ているがまだ決定されたことではない」と公示を出しました。
以下をご覧ください。その公示です。
↑Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください。当社は、財務的安定性のためにさまざまな資金調達方法を検討中ですが、まだ決定された事項はありありません。
今後具体的な内容が決定された時点、または1カ月以内に再公示するようにします。
『ガス公社』の劣後債発行にブレーキがかかったようです。債券市場の冷え込み、あるいはその場しのぎの策だと見抜いた金融当局が「やめろ」とストップをかけたのかもしれません。
ともあれ、負債比率の見栄えをよくするためという動機で、親方太極旗の公企業が民間企業の資金調達の邪魔をするという事態はとりあえず止まりました。
実際にやるかどうかは不明ですが、韓国の債券市場からは目が離せません。
(吉田ハンチング@dcp)