「アメリカ合衆国がもはや韓国を同盟国とは見ていない」という傍証になる件をご紹介します。
2022年01月27日、韓国とアメリカ合衆国の間で「米韓通商長官会議」が開催されました。
韓国の産業通商資源部の呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長が渡米し、ワシントンD.C.で『UTSR』のキャサリン・タイ代表と会談を行ったのです。
以下が韓国産業通商資源部が出したプレスリリースです。まず標題が、
米韓通商長官会談開催 ~鉄鋼232条措置、インド太平洋経済フレームワーク、米韓FTA 10周年をきっかけに実務級新通商協議チャンネル稼働などを議論~
⇒参照・引用元:『韓国 通商資源部』公式サイト「韓米通商長官会談開催」
となっています。
韓国の最も話したいのは「前トランプ政権が行った韓国産の鉄鋼輸入制限措置を解除してもらうこと」※です。
しかし、韓国があまり話したくない「インド太平洋経済フレームワーク」についてが議題にしっかり入っています。合衆国はこちらを重点的に話したいのだと推測できます。
この時点でもうかなり面白いのですが、韓国は交渉を焦っています。なぜ焦っていると分かるかというと、上掲プレスリリースの中に正直にこう書いてあるからです。
(前略)
❶呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長は、合衆国の鉄鋼232措置改善の必要性について、これまで何度も議論したにもかかわらず、進展が見られないために国内の懸念が高まっていることを強調し、早急に改善すべきだと促した。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国 通商資源部』公式サイト「韓米通商長官会談開催」
焦っても交渉は恐らく進展しないのではないか。なぜなら……
焦っている理由は簡単で、同じようにトランプ大統領のためにエライ目に遭ったEU、日本が先んじて交渉を行っているためです。
「韓国だけが置いていかれた」という事態はどうしても避けたいのです。
ただ、韓国の交渉は合衆国の政治的思惑で先に進むのが困難であると思われます。
『JETRO』の「ビジネス短信」(2021年12月09日)の中に興味深い記述があるので以下に引用します。
(前略)
バイデン政権は232条関税に関して、EUとの間では関税割当の導入で合意し(2021年11月2日記事参照)、日本とも問題解決に向けた協議開始で合意(2021年11月15日記事参照)するなど、同盟・関係国・地域との協調路線を取っているが、232条関税自体を完全に撤廃する動きは見せていない。
この『JETRO』のリポートが正鵠を射ていると思われます。
つまり、(少なくとも現政権の)韓国は、合衆国にとってもはや協調路線を取るべき国ではないのです。そのように扱われていると感じるからこそ、韓国は合衆国と早く交渉を進めたいと焦っており、だからこそ合衆国は韓国をまともに相手にしないのです。
興味深い交渉だと思われませんでしょうか。
親米の尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが大統領になったら事態は好転するかもしれませんね。
※合衆国が自国の鉄鋼産業を保護するために、「1962年通商拡大法232条」を根拠に韓国産の鉄鋼輸入を制限。当初は25%の関税を賦課する予定でしたが、輸入数量を割り当て、その数量内でなら合衆国に輸出できる――とした。割り当てられた輸入数量は、「2015年から2017年の韓国からの平均輸入数量」の70%が上限(製品別に設定)。これは韓国政府と合衆国政府間の合意です。