韓国はすぐに「後頭部を殴られた」と言い出す被害妄想の強い国ですが、韓国メディアの同様の傾向があります。
これに類した記事を韓国メディア『毎日経済』が出しており、これが大変に面白いのでご紹介します。
韓国の防衛産業の輸出規模は150億ドルに達する
まず記事から一部を以下に引きます。
韓国防衛産業の輸出額は昨年140億ドルまで勢いを増し、2年連続「世界10位圏」に名を連ねた。
最近10年間で年間20億~30億ドル規模の飛躍的成長だ。
輸出対象国も2022年4カ国から昨年アラブ首長国連邦(UAE)、フィンランドなど計12カ国に増えた。
K-9自走砲、K-2黒豹戦車、迎撃ミサイル「天宮II」、多連装ロケット「天武」など戦略兵器が世界市場で高い評価を受けている。
特に『ハンファオーシャン』は国内造船所で初めて年間20兆ウォン規模でアメリカ合衆国海軍艦艇の整備事業を受注し、防衛産業の領域を海洋にまで拡大した。
今年の防衛産業の輸出規模は150億ドルと見込まれ、政府が提示した「4大防衛強国」の目標に一歩近づいた。問題は世界最大の防衛産業輸出市場である合衆国進出が事実上手詰まりになっているということだ。
(後略)
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が「韓国第1の営業マン」として、中東、東欧を回ってセールスを行ったこともあり、韓国防衛企業の製品は売上を伸ばしました。ロシアが不法に始めたウクライナ戦争が大きな影響を与えたことは否めませんが、契約を取れたことは確かです。
もっとも、北朝鮮がロシアに兵器を輸出することになり、南北朝鮮の兵器が戦場に向かったことは実に歴史的皮肉と言わざるを得ません(南朝鮮の弾薬はアメリカ合衆国経由でウクライナを支援することになりました)。
どうして「世界4大防衛強国」に入れると思うのか?
記事内にある「4大防衛強国」というのは、アメリカ合衆国、ロシア、フランス、中国のことです。
記事が参照しているデータはスウェーデン『ストックホルム国際平和研究所』のもので、2018~2022年の各国の武器輸出で韓国が第9位となったことから――4大強国に入れるのではないかと夢想しているのです。
しかし、4位に入れるのかは大いに疑問です。というのは、このデータによるとシェアは以下のようになるのです。
世界武器市場のシェア
第1位 アメリカ合衆国……40.0%
第2位 ロシア……16.0%
第3位 フランス……11.0%
第4位 中国……5.2%
第5位 ドイツ……4.2%
第6位 イタリア……3.8%
第7位 イギリス……3.2%
第8位 スペイン……2.6%
第9位 韓国……2.4%
このような状況で、なぜ韓国が4大強国に入れるのかというと、「4~8位のシェアは大差なく、現在のトレンドなら実現可能なも目標だ」そうです。
現在の合衆国・ロシア・フランス・中国のどの国を蹴落として「4大」に入るつもりなのか存じませんが、最もシェアの小さな中国を蹴落すにしても、少なくとも現在の倍は売らないといけません。
正気なのでしょうか。
恐ろしいことに、「いけるいける!」というのは『韓国産業技術振興院』の意見なのです。
米国は韓国とは「RDP」を締結していない!
――で、記事内にある「韓国防衛産業の製品が事実上合衆国市場に参入できない」理由というのは、合衆国の法規制によります。
RDP(Reciprocal Defense Procurement Agreementの略:防衛相互調達協定)です。
これは、合衆国の国防総省が同盟国や親密な貿易パートナーと締結する覚書の一種です。
この協定により、締結国はアメリカの「Buy American Act(略称「BAA」:アメリカ製品優先購入法)」の規制を免除されます。
具体的には、BAAではアメリカ国内で調達される製品に対して、一定割合以上のアメリカ製部品を使用することを義務付けています。現在、この基準は55%以上で、満たさない場合は、輸入コストに50%の追加関税が課されます。
さらに、この基準は2029年までに75%まで引き上げられる予定です。
つまり、RDPを締結している国は、BAAの適用を受けずに合衆国市場に参入できるため、アメリカ製部品の使用義務を回避できます。
つまり、RDPは防衛産業における自由貿易協定のような役割を果たしており、この協定がないと合衆国市場への参入障壁が非常に高くなるということです。
日本に遅れをとっているという僻み!
韓国はこの協定を締結できていません。
そこででてくるのが「日本に遅れをとっている」「合衆国は韓国より日本を優遇している」という妬み嫉み根性です。
同記事から傑作な物言いを以下に引用します。
(前略)
政府は2022年の米韓首脳会談で、両国間のRDP(防衛相互調達協定)締結に向けた議論を本格化することを決定しましたが、まだこれといった成果は出ていない。合衆国は日本、イギリス、オーストラリア、ドイツなど28カ国とRDPを締結しているにもかかわらず、血盟とされる韓国は無視している。
協定が締結されれば、年間700兆ウォン規模の米軍の軍需物資調達市場や、年間2,000件に上る米軍の先端兵器開発プロジェクトに参加することができる。
(中略)
合衆国は日米間安全保障同盟の強化という観点からも、韓国とRDPを締結するのが妥当だといえるだろう。
(後略)
まず、「血盟とされる韓国を無視している」が傑作です。果たして合衆国は韓国を血盟などと考えているでしょうか。
また、「年間2,000件に上る米軍の先端兵器開発プロジェクトに参加することができる」などと書いていますが、いつ中国側に転ぶかもしれない韓国なんか、そのよう安全保障上大事なものに参加させるわけないでしょう。
挙句の果てに「(合衆国は)韓国とRDPを締結するのが妥当だといえるだろう」と上から目線で書いています。実にいい気なものです。合衆国が韓国を信用していると思っているところに、そもそもの事実誤認があります。
こういうことが平気でいえるのも、周辺国が韓国をどう見ているかを「客観的に考察できない」という欠陥の表れです。自国をすごい国だと思いこんで過大評価していることが、いつまでたっても分からないのです。
(吉田ハンチング@dcp)