2024年11月15日、中国の統計局は重要なデータを多数公表しました。その中から「2024年1—10月份全国房地产市场基本情况」(2024年1~10月期 全国不動産市場の基本状況)をご紹介します。
中国の経済発展を支えてきたのは、
●不動産
●輸出
●内需
です。しかし、読者の皆さまもご存じのとおり、この3つの全て駄目になっています。
中国当局はこのうち「輸出が回復してきた」としていますが、自由民主主義経済国が「中国の過剰生産性を他国に押し付ける輸出」に対して歯止めをかけるようになっており、この先、順調に回復するかどうか分かりません。
経済が低迷しているために内需も伸びません。
今回公表されたデータは「不動産」についても期待できないことを示しています。以下をご覧ください。
「全国不動産開発投資増加率」のグラフです。不動産開発に対する投資が対前年同期比でどのように推移しているかを示します。
↑対前年同期比で投資金額はずっとマイナスです。
一、不動産開発投資の実施状況
1~10月期において、全国の不動産開発投資は8兆6,309億元で、前年同期比10.3%減少しました(比較可能な基準で計算、詳細は注6を参照)。このうち、住宅投資は6兆5,644億元で、10.4%減少しました。
不動産市場に投下される資金は、対前年同期比でマイナスを続けているのです。
次に「全国新築商品住宅の販売面積および販売額の増加率」です。
↑グラフの黄色の線が新規住宅の販売面積の対前年同期比、青い線が新規住宅の販売額の対前年同期比。二、新築商品住宅の販売および販売待ち状況
1~10月期、新築商品住宅の販売面積は7億7,930万平方メートルで、前年同期比15.8%減少しました。そのうち住宅販売面積は17.7%減少しています。
新築商品住宅の販売額は7兆6,855億元で、20.9%減少し、そのうち住宅販売額は22.0%減少しました。
中国当局は、不動産市場においても低迷が緩和してきている――としているのですが、01~10月累計で、新規販売面積は-20.0%、新規販売額は-20.9%なのです。
不動産投資が対前年同期比でずっとマイナス、新規住宅販売額も同じです。
さらに必見なのが以下のデータです。「2024年01~10月累計の全国不動産開発と販売の状況」です。
不動産開発投資(億元)、不動産施工面積(万平方メートル)など全てが対前年同期比でマイナスなのですが、唯一プラスになっているのが、黄色のマーカー部分、「商品住宅在庫面積(万平方メートル)」です。
投資、販売は回復していない上に「在庫」は増加しているのです。
不動産開発の各項目で減少が続いている一方で、販売されていない在庫(未売却物件)が増加しているというのは、需要が供給に追いついていないことを表しています。
このような状況が続けば、不動産市場全体がさらに冷え込み、価格の下落や投資資金の減少が進む可能性があります。
住宅在庫の増加は開発企業にとっても大きな負担です。
売れない在庫が増えると、資金が固定化され、新たな投資が難しくなるため、さらに経営が苦しくなるでしょう。また、一般市民も不動産市場に対する信頼感が低下し、購入意欲が減退するという悪循環に陥る危険もあります。
これは単に「一時的な低迷」ではなく、根本的な需要減退や過剰供給が絡む構造的な問題として解釈されるべきです。
まさに最悪な状況といえます。
中国の不動産市場が回復する兆しは見えない――といえるでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)