2025年10月01日付けで韓国の統計局が「児童・青少年の生活の質 2025」を公表しています。
以下をはこのリポートの冒頭部分です(飛ばしていただいても大丈夫です)。
『児童・青少年の生活の質 2025』概要□ 国家データ庁 国家統計研究院では、児童・青少年の生活の質を総合的に測定・モニタリングできる『児童・青少年の生活の質 2025』指標報告書を発刊した。
ㅇライフサイクルの段階のうち、「児童・青少年」の全般的な生活の質を集約して示す報告書であり、2022年の初発刊以降、今回が2回目となる。
※「児童・青少年」は満0〜18歳を対象としているが、指標によっては異なる場合がある。
ㅇ物質的状況および住居環境、健康、学習・能力などの8つの領域にわたる62の指標で構成されており、これを通じて児童・青少年の生活がどのようなものかを全体的に示している。
※既存の統計資料を活用しており、指標ごとの出典は多様で、作成年度や周期も異なる。
□本報告書は、児童・青少年の生活の質を総合的に提示することで、エビデンス(証拠)に基づいた生活の質向上政策に必要な基礎資料を提供することを目的としている。
(後略)
韓国の若い世代がどのような「生活の質」を体験しているのか――を提示したリポートです。全部が非常に興味深い内容ですが、その中から一つ「!」という部分をご紹介します。
「15~19歳」の若者が、自身の生活にどの程度満足しているか?――を調べてもので、「自身の全般的な生活の満足度について0~10点尺度で回答したうち、6点以上と回答した割合」です。
↑濃い青色が韓国。左にいくほど生活満足度が高い国。韓国の場合は「65%」の若者が生活に満足していると回答したことになります。
上掲のとおり、韓国の若者の生活満足度は下から数えた方が早い――という結果になっています。順位を並べると以下のようになります。
第1位 オランダ……87%
第2位 フィンランド……82%
第3位 デンマーク……81%
第4位 ハンガリー……79%
第5位 スウェーデン……78%
第6位 ポルトガル……78%
第7位 リトアニア……77%
第8位 メキシコ……76%
第9位 スペイン……76%
第10位 カナダ……76%
第11位 コスタリカ……76%
第12位 スロベニア……75%
第13位 アイスランド……75%
第14位 スウェーデン……75%
第15位 スロバキア……74%
第16位 フランス……73%
第17位 ラトビア……73%
第18位 イタリア……73%
第19位 オーストリア……71%
第20位 ギリシャ……71%
第21位 アイルランド……71%
第22位 アメリカ合衆国……71%
第23位 日本……69%
第24位 チェコ……69%
第25位 コロンビア……69%
第26位 スロベニア……68%
第27位 ドイツ……65%
第28位 ニュージーランド……65%
第29位 韓国……65%
第30位 ポーランド……64%
第31位 チリ……62%
第32位 イギリス……62%
第33位 トルコ……43%
トルコの43%しか生活に満足度が高くない――という結果も「いかがなものか」なのですが、イギリスが下から2番目というのも衝撃的な結果です。
なぜ、韓国の若者の生活満足度が低いのでしょうか。以下は推測です。
なぜ韓国の若者の生活満足度が低いのか?
「韓国の若者の生活満足度は低い」理由として、以下のような点が考えられます。
1.将来に対する展望のなさ(=希望の欠如)
韓国メディアやネット言論空間で定着した「헬조선(ヘル朝鮮)」という言葉が象徴するように、「生きづらさ」「努力しても報われない社会」という認識が若年層に広がっている。
高学歴を得ても安定した職に就ける保証はなく(ほとんどの人が財閥系大企業グループに入社できない)、住宅価格も高騰。将来設計が立たないと感じる層が多い。
※『OECD』の調査でも、「将来に対する楽観性」が低い国ほど、生活満足度も低い傾向が見られる。
2.過度に競争的な教育システム
「スカイ(SKY:ソウル大・高麗大・延世大)至上主義」とも言いわれる、序列化された学歴社会と猛烈な受験競争が子供時代から始まる。
学校の後に학원(学習塾)をはしごする「夜11時まで勉強が日常」という生活に多くの中高生がさらされている。
精神的負担が非常に大きく、燃え尽き症候群や鬱、自殺率の高さにも関係していると指摘されている。
3.家庭の経済格差と社会階層の固定化
韓国は相対的貧困率が高く、家庭の経済的な背景が教育機会・就職・結婚・住居に直結する構造が強い。
「親の資本」があらゆる面で本人の未来を左右するという現実が、若者に強い無力感・不公平感を植えつけている。
4.社会的不信と分断の深化
政治的分極化とそれに伴う世代間・性別間の対立(例:フェミニズム対反フェミ、MZ世代 vs 上の世代など)が顕著。
調査対象となった15~19歳よりも上の世代、特に20代男性は、自らを「逆差別されている」と感じているという調査もあり、社会に対する信頼度が低い。
15~19歳といえば思春期の若者です。
彼らが自身の生活に満足していない――というのは、ある意味で「頼もしい」のかもしれませんが(社会の変革の原動力になる意味で)、韓国のように「教育 ⇒ 就職 ⇒ 結婚 ⇒ 住宅 ⇒ 老後」というライフイベント中の、すべてが「競争」と「格差」によって支配されている社会構造では、若者が不満を抱いても仕方ないのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)








