ここ数日、韓国の政界は米韓軍事演習(2021年08月10日~の予定:もう明日です)を実施するかどうかで政局は大もめです。
南北首脳会談をどうしても実現したい文大統領
そもそも現在の文在寅大統領が親北朝鮮の人物であり、政権末期の最中に「自政権のレガシーとして何がなんでも南北首脳会談を実施したい」と熱望しています。
2021年07月27日10:00、南北通信ラインが回復されました。
これは、北朝鮮に何度も親書を送って実現できたこと。現在も韓国政府は「南北首脳会談については何も決まっていない」などと白々しい態度を続けていますが、水面下で必死に北朝鮮に働きかけていることは言うまでもないでしょう。
ここまでお膳立てをしたのに、米韓軍事演習が行われると完全のこの準備に冷や水をぶっかけることになります。
北朝鮮側は米韓軍事演習に対して罵詈雑言を浴びせてけん制しているからです。
金正恩総書記の実妹である金与正朝鮮労働党副部長は、2021年08月01日、(08月に予定されている米韓軍事演習が行われた場合)「信頼回復の一歩を再び踏み出したいと願う北南首脳の意思を深く傷つけ、北南関係の今後を曇らせることになる」という述べています(『朝鮮中央通信』報道)。
このように北朝鮮からの圧力がある以上、文在寅政権としては中止、あるいは延期したいところです。
ところが、アメリカ合衆国が許すわけはありません。
米韓首脳会談時に合衆国が韓国へのワクチン提供を表明したのは、「在韓米軍関係者」への接種のためです。これは明らかに米韓軍事演習に支障を来さないためです。
文大統領は感謝を表明し、すでにワクチンも受け取っていますからなかったことになどできません。文政権が今になって「どうしよう」と慌てふためく中、合衆国軍当局者は予定どおり実施するという態度を崩しません。
大統領の代わりに与党議員が中止を要求する始末
ずるいのは、文大統領自身は何も言わないことです。
何度もご紹介していますが、この文在寅という人は、国内外での難しい課題に対して自分の意見を一切表明しません。矢面に立つのは所管の大臣・官僚であったり、政府与党議員だったりします。
自分への批判を避けるためでしょうが、最終的な責任を取らなければならない最高権力者・大統領の態度とは見えません。卑怯といわれても仕方ないのではないでしょうか。
2021年08月02日、青瓦台・大統領府の関係者が「さまざまな状況を総合的に考慮し、米韓両国が協議中である」と述べた――という報道が出ます。
明らかに中止への含みの入った観測気球です。中止したいという文大統領を忖度したものです。
2020年08月05日、今度は親文在寅の与党議員が動きます。『共に民主党』70人あまりの議員が「北朝鮮との対話を実現するために米韓軍事演習の延期を求める」という声明を出しました。
中国のあの外相も参戦!
面白いのは、中国の王毅外相(出た!)がこの米韓軍事演習の議論に参戦したことです。
2021年08月06日、ASEAN地域フォーラムの閣僚会議で王毅外相は「合衆国は緊張の激化につながる行動をとるべきではない」と述べました。
また、「膠着状態を打開する有効な方法は北朝鮮に対する制裁を緩和することだ」と主張。米韓合同軍事演習について「合衆国が北朝鮮との対話の再開を望むなら、緊張の激化につながる行動を取るべきではない」とも。
自分たちが南シナ海で行っていることを棚に上げてよくまあ言えたものですが、中国も米韓軍事演習について圧力をかけているわけです。しかも、合衆国ではなく、むしろ韓国に言っているとも取れる言葉です。
合衆国と北朝鮮だけではなく、中国まで参加して韓国に圧力をかける状態となった、米韓軍事演習。
結局、「予定どおりに実施されるが規模は大幅に縮小される」と見込まれています。どのような演習になるのかに注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)