韓国「文大統領は共産主義者だ」発言に「無罪」趣旨の判決

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2021年09月17日、韓国大法院(最高裁判所に当たります)から注目されていた裁判の判決が出ました。

2013年01月、『放送文化振興』会元理事長の高永宙(コ・ヨンジュ)さんは、当時『新政治民主連合』の代表だった文在寅(現大統領)に対して「釜林事件の弁護人で共産主義者だ」という主旨の発言を行い、名誉毀損罪で起訴されました。

「釜林事件」は文大統領の原点となった弁護案件

釜林事件というのは、全斗煥(チョン・ドファン)政権下の1981年に釜山で発生した事件です。当時韓国では学生運動の嵐が吹き荒れていました。

1980年には光州事件が起こり、今にも共産主義者による政権転覆が起こるかのような騒然とした世相で、全大統領は共産主義者の取り締まりを強硬に行いました。

釜林事件もこの流れの中で起こりました。釜山警察は『釜山読書連合会』のメンバー22人を不法に拘禁。罪状は、有害書籍の回覧、不法集会を組織した国家保安法違反、戒厳法違反、集会および示威に関する法律違反というものでした※1

文在寅さん(判事志望でしたが学生運動の過去が問題になったようでなれなかった)は後に大統領になる盧武鉉(ノ・ムヒョン)弁護士と『弁護士盧武鉉・文在寅合同法律事務所』をオープン。盧弁護士が抱えていた2つの事件(「釜山米国文化院放火事件」※2「釜林事件」)を事務所で担当しました。

盧弁護士はこの事件を担当したことから政治の世界に足を踏み入れることになりますが、文在寅さんもまた盧弁護士の後に続くことになります(盧政権では大統領秘書室・民情首席秘書官を務めました)。

いわば「釜林事件」は、文在寅さんにとっては政治の世界に向かうことになる自身のキャリアの転回点でもあったわけです。ですので名誉毀損で訴えたのかもしれません。

しかし一方で、この裁判は権力者に対する言論を封じようとする行為と批判も受けていたのです。

一応の無罪認定で二審に差し戻しとなった

一審では無罪。二審では有罪となりました。二審で名誉毀損に当たると判断した理由について、「単純な意見表明ではなく、全体的に検証可能で具体化された虚偽事実の摘示に当たる」「文大統領の社会的評価を低下させる表現」としました。

二審の判断を下したのは『国際人権法研究会』に所属する崔瀚敦(チェ・ハンドン)部長判事でした。『国際人権法研究会』は左派団体でその中心メンバーは元学生運動活動家です。いわば、文大統領のシンパといっても間違いではありません。

で、今回の大法院判決ですが、「文大統領の名誉を毀損するほどの具体的事実摘示があるとは言えず、表現の自由の限界を逸脱したとも言いにくい」ということで、二審の判決を棄却しました。

ソウル中央地方裁判所に差し戻したのですが、事実上の無罪認定です。

本件の差し戻し審の行方にもご注目ください。

※1
起訴された被告22人のうち19人が1~7年の懲役となりました。弁護側は拷問によって自白を強要されたこと、証拠は公安によるでっちあげと主張しましたが通りませんでした。その後、公安当局の不当逮捕であったと再審が行われて、全員が無罪となっています。

※2
後に「釜山米国文化院放火事件」は韓国における反米運動の嚆矢と呼ばれるようになります。

(吉田ハンチング@dcp)

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