韓国でウォン安進行が懸念されていますが、Money1で連日ご紹介しているとおり、「1ドル=1,180ウォン」近辺で一進一退の攻防が続いています。
しかし、韓国企業ではさらなるウォン安進行を覚悟しているようです。というのは、外貨預金を増やす方向で動いていることが見て取れるからです。
2021年11月16日、『韓国銀行』が「2021年10月の居住者外貨預金※動向」のデータを公表したのですが、これが非常に興味深い結果となっているのです。
まず以下をご覧ください。
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2021年10月の居住者外貨預金動向」
外貨預金が前月と比較して「65.7億ドル」(約7,507.5億円)も増え、総計が「1,007.7億ドル」(約11兆5,149.9億円)となりました。
上掲のとおり、通貨別で最も増えたのは「ドル」で「53.7億ドル」(約6,136.3億円)増加して「875.2億ドル」(約10兆9.1億円)。ドルだけでなく、円、ユーロ、人民元、その他の通貨、全ての外貨預金が増加しました。
では、誰が外貨預金を増やしたのでしょうか。以下をご覧ください。
※データ引用元は同上
企業です。企業が「62.0億ドル」(約7,656億円)も増やしています。増加した「65.7億ドル」の「81.3%」が企業の預金です。
なぜ、ここまで企業が外貨預金を増やすかといえば、さらなるウォン安進行に備えて稼いだドルをウォンに換えずに温存しているものと推測できます。
韓国では、原材料・中間財・資本財を輸入して製品を輸出する構造になっていますが、韓国企業は、原材料・中間財・資本財を海外から購入するときにはドルを支払わなければなりません。
製品を輸出して受け取った代金、ドルをウォンに換えてしまうと、さらにウォン安が進行した場合、支払いでドルを調達する場合に損をします。
例えば、「1ドル=1,165ウォン」のときに5ドル受け取ってウォンに換えれば「5,825ウォン」。これ以降で5ドル支払わなければならないときに「1ドル=1,200ウォン」にウォン安が進行していたらどうなるでしょうか。
「5,825ウォン」は「4.85ドル」にしかなりません。韓国企業にとってウォン安が進行するときにはドルで持っていた方が得なのです。
裏を返せば、企業のドル預金が増えているということは、韓国企業がこの先の為替レートがさらにウォン安に進行するのではないかと恐れている(あるいは「ウォン安がさらに進行するので将来ウォンに換えた方が得」と期待している)――そう考えられます。
さて、ウォン安はどこまで進行するでしょうか。
※「居住者外貨預金」というのは、韓国人と韓国企業、韓国内に6カ月以上居住している外国人、韓国内に進出している外国企業などの国内外貨預金を指します。
(吉田ハンチング@dcp)