韓国経済ウォッチャーとしては、『韓国銀行』の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁、企画財政部の洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官の新年のあいさつ、賀詞交換会での発言には注目せざるを得ません(今年は賀詞交換会はなかった模様)。
何度かご紹介しているとおり、「KOSPIが3,300にいったらバブル」など、後にドンピシャで当たることになる発言があったりするので見逃せないのです。
というわけで、2022年の洪長官の発言の注目ポイントを以下にまとめます。
(前略)
金融人の皆さん、コロナ危機と苦痛を3年目に続けることはできません。今年必ずコロナを終息させ、日常を取り戻し、韓国経済が「完全な経済回復と先導型経済への跳躍」を成し遂げなければなりません。
(中略)
今年は再び政府と金融圏が合心しなければならず、特に金融人の皆さんの情熱、献身を要請することになります。
政府が率先して先頭に立ちます。
その延長線上で金融人の皆さんに次の4つを新年の当事者の言葉として差し上げたいと思います。
「コロナ禍の3年目は無理」というのはまさに本音でしょう。こういう正直な発言があるところが洪長官の憎めない点です。
「4つ」というのは以下です。
まず、金融の包括的な役割がまだ重要であり、持続する必要があるということ。
第二に、一時的な金融支援の秩序ある正常化、その中で連着陸を達成すること。
第三に、金融が次世代の成長動力の創出を支えると共に、金融業自らも進化する未来の新産業に発展することを期待します。
第四。最後に家計負債・流動性などリスク要因を徹底的に管理しなければなりません。
先にご紹介したとおり、例えば中小企業・個人事業主に対する融資の「元本・利子返済」が猶予されています。
その猶予金額は、2021年10月末時点で、106万件・261兆2,301億ウォン(約25.3兆円)あることが分かっています。猶予期限は2022年03月末となっていますので、このうちいくらが不良債権化するのか、今から戦々恐々な状態です。
このような支援策の消滅になっても、金融不安を起こすことなく、ソフトランディング(軟着陸)させなければいけない――と洪長官は言っているのです。
また「家計負債、流動性のリスクを徹底的に管理しなければならない」というのは全くそのとおりで、これまた先にご紹介しましたが、『韓国銀行』は現在の韓国の金融システムは「潜在的な脆弱性を抱えた不安定な状態」と指摘しています。
これに衝撃が加わると、アリの一穴が堤防を崩すといったことになりかねません。
問題なのは、韓国内で起こる衝撃なら予見もできるでしょうが、外国で起こる衝撃が韓国を揺さぶる場合です。例えば中国。韓国にとって中国は最大の貿易相手国です。中国で厄介な事態が発生すれば韓国経済に大きな影響を与えます。
2022年に韓国経済が危機を迎えないかどうか、注目いたしましょう。
(吉田ハンチング@dcp)