大株主であるルノーは、日産自動車を取り込もうと「経営統合」に向けて圧力を強めています。04月28日『ファイナンシャル・タイムズ』紙は、内部リーク情報として、「ルノーのティエリー・ボロレCEO、ジャンドミニク・スナール会長が日産の西川広人CEOと夕食を共にした際に、西川CEOは完全統合について『関心はない』と伝えた」と報道しています。
フランスはしばしば社会主義国家といわれます。「黄色いベスト運動」に見られるように労働者の権利が厚く保護されている国で、特に国が有力企業の株主となっていることで知られています。ルノーもいってみれば国有企業のようなもの※。フランス政府としては日産の技術力と利益を自国の利益としたいという目論見があるのです。
日産としては、斜陽企業であるルノーに統合されて利益を吸い上げられるのはまっぴらだという思いがあるでしょうから、当然拒否しています。この対立が続くと株式の取得合戦に発展することが予測されます。また、フランス政府が乗り出してくると、「民間企業のことなんで知りませんよ」という態度を貫いてきた日本政府も腰を上げざるを得なくなる可能性があります。政府同士のどつき合いになると……これは面倒ですよ。
※第二次大戦後、1945年にシャルル・ド・ゴール将軍の行政命令で国営化され「ルノー公団」になりました。その後、すったもんだの末1996年に民営化されています。2019年04月時点ではフランス政府はルノーの株式を15%保有する筆頭株主です。もともとは20%保有していたのですが、2017年に5%分を売却して5,500万ユーロもの利益を得ました。
(柏ケミカル@dcp)