2022年02月17日、韓国の文在寅大統領が外国の投資企業関係者を大統領府に招き、投資拡大を要請する会を催しました。
邪推かもしれませんが、文大統領がこのような会を催したのには韓国から資金が抜けるのを心配したから、また資金の調達が困難になるのを懸念したからではないでしょうか。
現在、韓国経済は資源価格の高騰によって貿易のもうけが減るという事態に陥っています。
先にご紹介したとおり、通関ベースながら2021年12月、2022年01月と2カ月連続で貿易赤字。12月の方は国際収支統計では黒転しましたが、01月の方は恐らく黒転してもスレスレで、経常収支が赤字に陥る可能性があります。
経常収支の赤字は韓国から資金が流出したことを意味します。
この資金流出は、資金流入によってファイナンスされなければなりません。つまり、どこかから資金を引いてこないといけないのです。
先にご紹介したとおり、例えば「韓国通貨危機」の際には経常収支が赤字スレスレで、しかも外国に向かって巨額の投資が行われていました。つまり、貿易などで稼ぐお金以上に韓国から莫大なお金が出て行っていたわけです。
この資金流出をファイナンスしていたのはなんだったかといえば、外国からの巨額の短期借り入れだったのです(以下の過去記事を参照してください)。
外国からの借金による資金流入で韓国は巨額の資金流出とのバランスが取れていました。現在また経常収支が赤転したら、なんらかの手段で資金を流入させないといけません。
で、韓国の文大統領は自ら「投資をしてくれ」と動いているのではないか――と考えるのは邪推でしょうか。
ちょくちょく自画自賛を挟む文大統領
以下に青瓦台・大統領府が出したプレスリリースから注目ポイントを和訳してご紹介します。
(前略)
韓国の可能性を信じて投資してくださった世界企業があったので、韓国は世界10大経済強国になることができました。(中略)
コロナ危機とグローバルサプライチェーン再編で世界経済の不確実性が高まり、グローバル外国人投資が萎縮する状況の中でも韓国に対する外国人投資はむしろ大きく増えました。
現在の韓国政府になって過去5年間の年間平均外国人投資金額は昨年、5年前比34%増加し、特に昨年には300億ドルに迫り、歴代最大実績を達成しました
(中略)
投資分野も未来車、バイオ・ワクチン、ICTなど先端新産業分野、サプライチェーン安定化に寄与する素材・部品・装備分野、肥大面サービス、再生エネルギーなど韓国版ニューディール分野の投資が大幅に増加しました。
このように外国人投資が増加したのは、高まった韓国経済の地位と共に、韓国政府が力点を置いて推進する主要な経済政策が反映されたことで、その意味が非常に大きいと思います。
(中略)
外国人投資企業が韓国を拠点に世界市場に進出できるように、新北方と中南米、中東とアフリカにFTAネットワークを拡大します。
『CPTPP』のようなメガFTA加盟も推進しています。
(中略)
韓国は安定的で持続可能で魅力的な投資先です。
高い技術力と生産能力に基づいた頑丈な製造業を保有しており、現在世界GDPの85%に相当するFTAプラットフォームを構築しています。
(中略)
韓国は外国人の投資資金と技術で産業高度化の基盤を磨きました。 世界金融危機のような経済危機も外国企業と共に克服しました。
(中略)
韓国の魅力を世界に広く知らせる投資伝道士になってください。
(後略)
韓国は「世界10大経済強国」「韓国版ニューディール分野の投資が大幅に増加」「高まった韓国経済の地位」など、ちょくちょく自画自賛が入っているのが文大統領っぽいところです。
さらっと「新北方政策」と入れ、この後に及んで北朝鮮を巻き込んでいるところも注目ポイントです。親北の文政権ならではといえるでしょう。
文大統領の口から「『CPTPP』のようなメガFTA加盟も推進しています」という発言が出たのは最大の注目ポイントではないでしょうか。
日本との関係があるためか、洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官を前に押し立て、自らは『CPTPP』については知らん顔をしていたくせに、外国投資企業にはこのように言うのです。
しかし、最大の問題は「韓国は安定的で持続可能で魅力的な投資先」かどうかです。
『韓国GM』の社長が韓国内に幽閉されるような国です。とても魅力的な投資先とはいえないのではないでしょうか。むしろ外国企業は韓国を「避けるべき投資先」と考えているのでは……。
(柏ケミカル@dcp)