ご存じない方もいらっしゃるでしょうが、韓国は毎年信用格付け会社との協議を行っています。
格付けが下落すると、韓国への投資の忌避・資金流出が起こり、社債などを発行する際の利率を上がる――といった事態が想定されます。これを防ぐために信用格付け会社に「きれいな韓国」を知ってもらえるよう協議するのです。
総じていえば、韓国が外貨を得やすいよう(韓国から外貨が抜けないよう)に政府が世界的信用格付け会社とネゴネゴしているわけです。
企画財政部 vs 『ムーディーズ』
2022年02月21日、韓国の企画財政部が予定どおり信用格付け会社『Moody’s(ムーディーズ)』との協議に入りました。
以下が企画財政部が出したプレスリリースです。
政府は2.21(月)から28(月)まで国際信用評価会社ムーディーズ(Moody’s)と
’22年年次協議を実施する。*ムーディス協議団:ジーン・ファン(Gene Fang)アジア太平洋地域の国家信用格付副代表、クリスチャン・デ・グズマン(Christian De Guzman)首席取締役、アヌシュカ・シャー(Anushka Shah)韓国担当取締役など
□『ムーディス』協議団は02月21日(月)企画財政部と最近の経済・財政動向および展望、「韓国版ニューディール」、カーボンニュートラルなど主要政策推進成果及び計画などを議論し、
ㅇ国会予算政策処(02月22日)、金融委員会(02月23日)、統一部(02月24日)、および『韓国銀行』(02月28日)との協議を通じて、韓国の国家信用等級評価に関連する経済動向および展望、通貨政策、南北関係など主要政策対応などを議論する予定だ。
□一方、洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官は02月25日(金)、『ムーディーズ』国家信用等級グローバル総括(アン・ヴァン・プラーク、Anne Van Praagh)と会談し、最近韓国経済動向と完全な回復・先導型経済への跳躍のための経済政策方向、財政運用現況などを共有する予定だ。
協議の見どころは?
協議は02月21日に始まり、なんと28日まで続けられます。
・金融委員会
・統一部
・『韓国銀行』
が次々と協議を行います。韓国政府の財政、金融を指揮するトップ機関ばかりですから、『ムーディーズ』の面々もいろいろと貴重な情報が得られるでしょう。
「国会予算政策処」(National Assembly. Budget Office:略称「NABO」)は日本にはない組織です。「国会予算政策処」は国の予算に関する政策について、第三者として冷静な突っ込みを入れるための機関です。
「このままですと○年に国民年金の積立金は枯渇します」とか「2022年に政府負債は対GDP比で50%を超えます」とか、シャレにならないことを計算して教えてくれる有り難い組織なのです。
こういう組織を「 独立財政機関」(Independent Fiscal Institution:略称「IFI」)といいますが、日本にはまだありません(日本も設立すべきという声は大きくなっています)。
韓国では1997年のアジア通貨危機をきっかけに2003年に設立されました。
Money1でも国会予算政策処のデータを幾度となくご紹介してきました。『ムーディーズ』の皆さんも「ゲ!」というデータを見ることなるかもしれません。
興味深いのは「統一部」が協議先に入っている点です。
もちろんこれは、上に北朝鮮という剣呑な国があるためです。南朝鮮には地政学的リスクが高いので、それでも信用格付けが左右されます。『ムーディーズ』は、北朝鮮とどんな交渉、交流を行っているかを聴取して地政学的リスクを計量するつもりでしょう。
大将同士の一騎打ちも予定されている!
25日には、あの「ワシが討って出る」でおなじみ洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官と、『ムーディーズ』国家信用等級グローバル総括のプラークさんの一騎打ち、もとい会談が予定されています。
これはぜひ側で見たい戦いです。
「こんなに政府負債増やしてどうするつもりなんですか」などの質問が出るはずで、洪長官がいかに信用格付けを下げない方向で言いくるめるのか――手に汗握る丁々発止が繰り広げられるでしょう。
というわけで、『ムーディーズ』が韓国にどのような判断を下すのかにご期待ください。
(吉田ハンチング@dcp)