小ネタかもしれませんが興味深い話ですのでご紹介します。
韓国の文在寅前大統領が退任して、慶尚南道梁山市平山洞にある私邸で隠居生活を送っていらっしゃるのですが、保守系のデモ団体が押し寄せました。シュプレヒコールを上げるなどして、文在寅さんを糾弾。
外に出られない上に近所の迷惑になるということで、文夫妻は2020年05月31日、代理人を通じて市民団体のメンバー4人を侮辱、名誉毀損、共同脅迫などの容疑で警察に訴え出ました。
この騒動について、左派系市民団体や野党に転落した『共に民主党』の議員などから「尹大統領自らがデモ規制に乗り出すべきだ」という意見が上がっていました。
尹大統領は「恣意的な規制はできない」
尹大統領はこれに関して「大統領執務室でもデモは許可される」「法律の規制を受けるべきだ」と述べていました。2022年06月07日、尹大統領室の関係者がこの発言に補足説明を行いました。
韓国メディア『ソウル経済』によれば以下のようになります。
(前略)
大統領室の関係者はこの日、ソウル龍山大統領室庁舎で記者たちと会って「尹錫悦大統領が午前出勤途上で私邸前デモと関連して『大統領執務室もデモが許可される』と発言したのは、私邸前デモを阻むための法的根拠を見つからなかったと理解すればいいか」という質問にこのように答えた。この関係者は、「集会の自由を任意に抑えられない。集会基準に合えば集会できる」と強調した。
続いて「すでに一部デモ者に対して告訴がなされている」とし「集会過程にもしも不法行為があったり、許可範囲を越える犯法行為があれば、法に従って処罰を受けるだろう。(大統領は:筆者注)その原則を述べたのだ」と話した。
(後略)
集会と結社の自由を恣意的に制限することはできない――というのです。検察総長を務めた尹錫悦(ユン・ソギョル)さん(とその政権)らしい回答だといえるでしょう。
すでに文夫妻から訴えがなされていますので、調査をする中で不当な行為があれば法的に処理されるはずです。いくら前大統領の私邸前でのデモだとしても、法的に問題がなければ政権が動く必要はない――と原則論を語っていますので、文派の人々も難癖をつけられないでしょう。
「文在寅に対する愛はないのか」などと言い出すかもしれませんが。
『共に民主党』が法改正を準備している
興味深いのは、この尹政権の関知せずな態度に、野党に転落した『共に民主党』が「前大統領の私邸前でのデモを禁じる」という法改正案を準備していることです。
これに対して、与党『国民の力』やメディアからは――自分たちは李明博(イ・ミョンバク)元大統領私邸や『サムスン電子』の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の自宅前などで散々デモを行い、あまつさえ市民団体を激励などしていたにもかかわらず、文前大統領にデモが掛けられると法改正に乗り出すのか――と批判が湧き起こっています。
これはまさに「自分がやったらロマンスで他人がやったら不倫」(ネロナムブル)という態度に他なりません。
法改正を行うなら、」元大統領の私邸の前でデモは行ってはならない」などというものではなく、誰であっても等しく静かな生活が送れ、かつ集会・結社の自由を損なわないものでなければならないでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)