タイムリーに取り上げ損なったのですが、2022年07月06日、韓国の企画財政部が主催して「外国為替健全協議会」が開催されています。
出席者は金融委員会、『韓国銀行』、金融監督院ですが、この会議はその名のとおり、外為市場の健全性(つまりはウォンの安定性)を協議するためのもので、もともとは前文政権下で初めて儲けられました。
尹政権としては初の会合です。
なぜこの07月06日に会議が行われたのでしょうか?
以下のドルウォンチャートをご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用:日足)
前日の07月05日は、高値が「1ドル=1,315.57ウォン」で、ローソク足の実体先で(韓国通貨危機以来)初めて「1ドル=1,300ウォン」を超えて確定させた日でした。
韓国通貨当局の皆さんが「どうすんだコレ」となっても仕方ありません。
韓国政府は「大丈夫だ」と言う
というわけで、07月06日に緊急的に開催されたのは、韓国通貨当局がいかに慌てていたかを示しています。
上掲は会議の内容を伝えるプレスリリースですが、中に非常に興味深い点がありますので、以下に該当部分を引用します。
(前略)
また、最近対外債務が増加しているが、豊富なグローバル流動性および韓国経済ファンダメンタルに対する海外投資家の肯定的な見方による債権投資資金の流入が主な要因であり、-外国為替健全性指標も過去の推移や他の新興国と比較するとき、良好な水準だと認識を共にした。
(後略)
対外債務が増加しているが、豊富な外貨の流動性があり、また韓国経済のファンダメンタルズが良好と見た外国人投資家が韓国の債券を購入しているだけなので大丈夫だ――なんて言っています。
本当にそうでしょうか?
韓国の外貨準備は減少を続けていますし、貿易赤字で外貨を積めなくなっています。その上、先にご紹介したとおり、韓国の債券に対する投資金額も小さくなってきているのが現状です。有価証券市場ではついに資金流出に転じたのです。
この会議について『ソウル経済』が興味深い記事を出しています。
2022年の外貨流出は貿易黒字がすっかりなくなるレベル?
以下に同記事から一部を引用します。
(前略)
実際、外国為替当局は今年の外国為替純流出規模が200億ドル台後半に達する可能性があると見ている。これは昨年の貿易収支黒字規模(294億9,000万ドル)に匹敵する。
歴代最大の外国為替純流出が2000年半ば頃の200億ドル前半水準だったことを勘案すれば、最近のドル流出がそれほど深刻ということだ。
(後略)
2022年の外貨流出規模は歴代で最大になるのではないか、と書いています。
ただ、韓国の通貨当局が2022年の外貨の純流出規模が200億ドル台後半とした――となっていますが、上掲のプレスリリースにはそのような数字が出てきません。
本当に通貨当局の高官から入手した情報だとして、200億ドル台後半というのはかなりの金額です。
記事内にあるとおり、(あくまでも通関ベースですが)2021年の貿易黒字額に匹敵します(産業通商資源部の公表データによれば2021年の貿易黒字金額は正確には293億700万ドル)。
つまり、2021年の貿易黒字金額がすっかりなくなるのと同じ――ということです。
同記事では「ドルの流出が深刻なので会議が開催されたに違いない」と書いています。
しかしながら、上掲のチャートのとおり、「1ドル=1,315ウォン」などという通貨危機レベルまでウォン安が進んだら、皆さんはいても立ってもいられないでしょう。
おっとり刀で集合し、会議も開こうというものです。
いずれにせよ、韓国のドル流出は大きくなっている可能性は高いです。対外債務の拡大が伴っており、また「償還できなくなる」なんてことにならないようお祈り申仕上げます。
(吉田ハンチング@dcp)