韓国では、家計負債の異常な増加が経済危機に陥る導火線と心配されています。
家計負債の最大のものは、どの国でも普通は住宅ローンです。韓国も例外ではありませんが、韓国の場合は不動産価格の急騰により、負債も膨らみました。
2022年08月10日、『韓国銀行』から「2022年07月の金融市場動向」のデータが公表されましたので、家計負債の現状を確認してみましょう。
2022年07月
住宅ローン:791.0兆ウォン
その他ローン:268.2兆ウォン
家計ローン小計:1,060.5兆ウォン⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2022年07月の金融市場動向」
07月時点で家計ローンは「1,060兆ウォン」あります。家計負債の水準は相変わらず主要国の中でもTop水準です。
ただし、2021年には「世界一の家計負債の増加速度」だったのですが、これには急ブレーキがかかっています。
上掲の赤い四角枠で囲った一昨年、昨年の同期での増加額にご注目ください。
2020年:48.2兆ウォン
2021年:51.3兆ウォン
2022年:-0.3兆ウォン
2020年の01~07月は「48.2兆ウォン」、2021年の01~07月は「51.3兆ウォン」も増加しているのに、2022年01~07月には「0.3兆ウォン減少」しています。
これは、2021年の終わりから、韓国金融当局が「金融機関から家計への融資を絞れ」という施策を実施したためです。Money1でもご紹介した、いわゆる「DSR規制」などが効果を上げたのです。
ちなみに「0.3兆ウォンの減少」は、2004年01月に関連統計を取り出して以来、最大の減少幅です。
また、インフレ対策のあって金利を引き上げた効果もあったものと推測されます。金利が上がればお金を借りる人が減りますので。
ただし、『韓国銀行』がビッグステップ(0.5%=50bpの金利引き上げ)を行ったのは07月13日ですので、この効果は08月以降に本格的に現れるものと思われます。
家計は金利負担増に苦しんでいる
家計負債の増加に歯止めがかかっていますが、現在金利引き上げ局面ですので、多くの家計が利子負担増に苦しむことになっています。
どのくらい住宅ローン金利が上がっているのかというと……。以下は『韓国銀行』が公表した金融機関の動向の資料(2022年06月まで)。
2022年06月時点で家計向け住宅ローンの金利(平均)は「4.04%」です。
2020年12月が「2.59%」でしたから、1.6倍になっています。
つまり、2020年の12月に住宅ローンを組んでマンションを購入した人は、現在金利負担が1.6倍になっているはずなのです。
韓国は住宅ローンを変動金利で組む人がほとんどですから、多くの人が金利負担増に苦しんでいるのです※。
しかも金利負担はこれからも上がります。『韓国銀行』は資金流出を抑えるため、アメリカ合衆国の政策金利上昇についていかないとならないからです。
『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、0.25%ずつの上昇が望ましいとしていますので、あと2回で少なくとも「0.5%」(=50bp)は上昇するものと覚悟しておかないといけないのです。
問題はこのまま利子負担が増加して、どれくらいの家計が負担増に耐えられなくなるかです。
負担増に耐えられなくなった家計が多くなり、マンション売却に走って、これが大きなうねりになれば不動産価格の暴落局面が訪れるでしょう。
そのときは、バブル崩壊です。
韓国の金融当局はバブル崩壊が起こらないよう金融市場を注視していなければなりません。
※変動金利を組む人の割合は、統計を取る時期によっても違うのですが、7~8割が変動金利と考えて差し支えありません。
(吉田ハンチング@dcp)