韓国政府は家計負債の不良債権化を食い止めようと必死になっています。
そこで「徳政令」の登場だ!
コロナ禍による経済低迷から回復するために、前文政権時代に韓国政府は、小商工人・個人事業主の「融資の満期延長、元利償還の猶予」措置を行いました。
流動性を高めるための一環でしたので、これはやむを得ない緊急措置として理解できます。
しかし、文政権はこれを回収せず、現在の尹錫悦(ユン・ソギョル)政権に丸投げしました。
そもそも6カ月だけの措置だったはずが4回も期限延長を繰り返し、いよいよこの措置が2022年09月末に終了となります。
何度もご紹介しておりますが、金融委員会によれば、満期延長、元利償還の猶予が適用された融資の元利総額は「133.4兆ウォン」※。
※2022年01月末時点
「133.4兆ウォン」というと、韓国政府の支出がざっくり約600兆ウォンとして、国家予算の約22.2%にもなるのです。
恐るべき規模といわざるを得ません。
これのうちいくらが不良債権になるのか分かりませんが、来る09月末に「はい猶予はおしまい。さあ返済ですよ」となった場合、金融機関が不良債権の津波に襲われる可能性があります。
あまりに不良債権が膨れ上がった場合には、金融機関の健全性を揺るがしかねません。
金融当局はそのような事態だけは絶対に避けなければならないのです。
そこで、韓国政府が持ち出したのが(事実上の)徳政令です。
90%の減免はやりすぎだ!
2022年07月14日に開催された「第2次緊急経済民生会議」で、この不良債権の津波に「新出発基金」を作って対処する旨が発表されました。
サポート規模:30兆ウォン
「新出発基金」を設立
不良債権の買い取りなどによる償還日程調整、金利・元金減免などによる債務調整
・一時償還 ⇒ 分割償還(最長20年まで)
・利子・元金減免(60~90%)など
新設される「新出発基金」が不良債権を引き受けるバッド・バンクの役割を果たします。
償還日の調整、「60~90%の利子・元金の減免」を行うという大盤振る舞いで、まさに徳政令という部分ですが、さすがにこれが金融圏で問題視されています。
減免される規模が大きすぎる――というのです。
貸した側である金融機関としては、政府が作る「新出発基金」が不良債権化するのを防いでくれるわけで、焦げ付きを減らすことができるのでいいのですが、「こんなことをしたら、借金をしてもほとんど返済しなくてもいいという認識が広がってモラルハザードが深刻になる」というのです。
また、事実上の税金で(条件を満たした)個人の借金を消すのは公平性に欠く、という批判も根強くあります。
「今さら言うのか」30兆ウォンで足りるのか
韓国ウォッチャーならみんな知っていることですが、韓国という国はこれまでも「ほとんど徳政令」という借金棒引き措置を行ってきました。
そうしないと経済が回らないという状況に追い込まれてきたからです。モラルハザートなど、とっくに生じているのではないでしょうか。
ですので、このような苦言は「今さら?」ですし、他に方法がないのも事実です。ここまで膨らんでしまうと、公的に負債を消し込んで社会不安が醸成するのを防がなければなりません。
金融圏からは「せめて減免の上限を50%にしたらどうか」という声も上がっているのですが、金融委員会は「それは債権者側の視点だ」と否定しています。
――というわけで、来る09月に向けて、「事実上の徳政令」について詳細を急いで決めなければなりません。そもそも30兆ウォンで足りるのか、という疑問もあります。
韓国政府の徳政令の中身がどうなるのか、またこれによって不良債権の津波を止めることができるのかにご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)