ウォン安が進行して止まる様相を見せませんので、韓国メディアも悲鳴のような記事を出すようになっています。
三高の複合危機だ!という話
もちろんウォン安だけではなくて、尋常ではないインフレ、高金利を合わせて、「高物価・高為替レート・高金利」で「三高の複合危機だ」といった書き様です。
どのメディアの記事も出てくる話は同じです。
(物価は高水準をいまだ維持している)
②「1ドル=1,400ウォン」目前まで通貨安
(かつての通貨危機水準までウォン安が進行)
③基準金利が2.50%
(『韓国銀行』はあと0.5%上げるつもり)
①の高物価を退治するためには、お金の価値を上げないといけませんから、金利を上げる必要があります。
そのたの③高金利ですが、金利を上げると企業・家計の利払いが増加し、へたをすると家計負債の爆弾に点火する可能性があります。
②のウォン安が進行すると、韓国から資金が抜ける可能性が高まります。韓国に投資しても為替で損をするので、もっともうかる国に資金を移動するからです。
また、③は資金流出を止めるためでもありますが、家計爆弾と共に資金調達を難しくします。金利が上がって利払い額が増えると誰でもお金を借りるのに躊躇するからです。すると投資が減ってGDPを引き下げる方向で働きます。
韓国メディアが三高とするものは相互に関連し合っており、金利を上げる局面の方が危ないのはご案内のとおりです。
屋台骨の貿易が危ない状況
三高に加えて、韓国の屋台骨を支える貿易が振るいません。
通関ベースながら上掲のとおり、2022年04~08月と5カ月連続の赤字で、「まさか09月も赤字になるんじゃあるまいな」という懸念も出ています。
上掲の08月の「約95億ドルの赤字」が大問題で、筆者はこれが国際収支統計でも赤字になると見ていますが、その場合、経常収支が赤転する可能性があります。
これまで韓国政府、また『韓国銀行』は経常収支が黒だから大丈夫といってきたのですが、仮に08月に経常収支が赤字転落すると、いよいよ危険な兆候です。
対中国貿易と半導体の行方
さらに細かいトピックまで下りれば、対中国貿易の赤字化と半導体がどうなるか、です。
これまで散々もうけてきた対中国貿易で変調をきたしており、2022年は以下のとおり赤字が4カ月連続です(こちらも通関ベース)。
対中国貿易でもうからなくなると、韓国の貿易収支は大きく減少することになります。
さらには主力輸出品の半導体です。韓国は「半導体は世界一」などといいますが、その名に値するのはメモリー半導体だけです。メモリー半導体の価格は在庫がだぶついて下落傾向にあり、下半期は業績が良くないのでは……という予測が出ているのです。
さらにマイナスの話をすれば、韓国政府の財政は01~06月ですでに「管理財政収支:-101.9兆ウォン」に到達しています(下掲参照)。
⇒データ引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「財政動向08月号」
韓国政府には財政余力はありません。本当に危機がきたときに誰がお金を出すんだという話なのです。
――というわけで、韓国メディアでは「複合危機だー!」という悲鳴のような記事が出るようになっていますが、来ないようにするのは結構大変かと思われます。
(柏ケミカル@dcp)