「野火が発生しました。博士、ご同道をお願いいたします」
韓国メディア『東亜日報』に興味深い記事が出ていまして、それを日本語化した記事がまた反響を広げています。
有名調査会社『帝国データバンク』の出したプレスリリースを基にした記事です。以下に『東亜日報』に記事から以下に引用してみます。
↑Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなところがありますがご寛恕ください。(前略)
日本で最近、中小・零細企業を中心に「円安倒産」が広がっている。大企業や上司は輸出好調、為替差益増加で莫大な利益を収めているが、小企業ほど円貨為替レート急変動に無防備にさらされ、原材料値の上昇に耐え切れず、売上の10分の1もならない借金に倒れる事例さえ現れている。
●円安倒産が5年で最大増加
16日、日本情報会社の『帝国データバンク』によると、今年1~10月の円安による倒産企業数は21に達した。
2019年に記録した倒産企業22社を越えることが確実視される、と同社は伝えた。
10月の1カ月だけで7箇所が円安倒産しており、これは昨年1年間の全体規模より多かった。
(後略)
この記事だけ読むと、円安が原因で倒産する企業が激増していると恐ろしくなるかもしれません。
なかなかおどろおどろしい記事で、この記事は後半では「日本の所得は減少している」と続け、結びは……、
(前略)
『東京新聞』は「実質所得の悪化が続くと消費が停滞し、景気下落につながる可能性が高い」とし、新型コロナウイルス感染症(コロナ19)の拡散後に困難になった経済が正常化するまでには時間がかかると予測している。
と日本がダメになりそうな感じで結んでいます。
確かに倒産件数は増加してるが……
まず、この記事の基になった『帝国データバンク』が出したリリースが以下です(2022年11月09日付け)。
⇒参照・引用元:『帝国データバンク』「『円安倒産』急増」
このプレスリリースの中に「円安倒産」と認定する件数の推移があります。以下です。
↑ドル円のレート(オレンジの線)が円安に急激に傾き、円安倒産件数が増えた。「円安倒産」の発生件数
2018年:18件
2019年:22件
2020年:5件
2021年:5件
2022年:21件
※2022年は01~10月の累計⇒参照・引用元:『帝国データバンク』「『円安倒産』急増」
さすが『帝国データバンク』というグラフですが、「10月の倒産件数だけで昨年を超えた」は確かに正しいですが、「2021年:5件」で「2022年10月:7件」なのです。
そもそも「10月の円安倒産:7件」が全体の倒産件数の中でどのくらいの割合を占めているのでしょうか?
これまた『帝国データバンク』が毎月「倒産集計」リポートを公開してくれています。以下をご覧ください。
2022年10月
倒産件数:594件
前年同月比:+16.0%負債総額:806億2,600万円
前年同月比:-16.6%⇒参照・引用元:『帝国データバンク』「『円安倒産』急増」
10月の倒産件数は「594件」で、円安倒産と認定されるのは「7件」です。
円安で資源・中間財・資本財などを輸入しなければならない企業が困っているのは確かですし、また円安によって「円安倒産」が増加したのも事実です。さらに、倒産した企業の中には「倒産理由には円安が関係している」ところが増えているかもしれません。
しかし、『東亜日報』が描きたいのかもしれない、
「燎原の火の如く円安倒産が広がっているのだ。グワハハハ」
みたいな風景には、まだなっていないと思われます。
(吉田ハンチング@dcp)