国民が飢えており、近代的な産業もほとんどない中世王朝国家のような北朝鮮ですが、(よせばいいのに)ミサイル挑発だけには熱心です。
この北朝鮮に「人道支援」を行うのは正しいことなのか、という件について『産経新聞』の黒田勝弘さんと『朝日新聞』の市川速水さんが論じ合ったことがあります。
『朝日 vs 産経 ソウル発』という新書が朝日新聞社から2006年に刊行されており、その中にお二人の対談の様子が掲載されています。
読者の皆さまもご存じのとおり、『産経新聞』は日本を代表する保守系媒体で、朝鮮半島の国からは時に「極右メディア」などといわれることもあります。一方の『朝日新聞』は左派系媒体であり、北朝鮮が日本人拉致を認めるまでは北朝鮮よりの論陣を張ってきたメディアです。
以下に『朝日 vs 産経 ソウル発』から一部を以下に引用します。
北への人道支援はありえない?
市川 ただ、そのときに、人道支援はどう考えますか?
黒田 人道支援もしてはだめです。ああいう体制の国に、人道支援というものはありえないですよ。
市川 でもね、WFP(世界食糧計画)などが地方に行って、直接食糧支援するのは、これは必要不可欠じゃないですか?
黒田 人道援助が成立するのは開放社会であることが前提ですよ。アフリカなどでやっているように。しかし北朝鮮のような体制上の閉鎖社会っていうのは、場合によっては非人道の犯罪になりかねない。
市川 僕はその意見には、反対です。だって、目の前に飢え死にしていて、しかも権力とは関係ない人がいるのに。
黒田 もし人民の餓死が気になるなら、戦争や大砲を売ってでも、米を買ってこいって言えばいいんです。兵器は大量にスクラップにすれば売れるんだから。それをせずに、しかも一方ではミサイルや核兵器を造りながら人道支援なんて、絶対ダメです!
市川 それはつまり、なけなしの金を全部軍事費につぎこんでおいて、庶民を見殺しにしている国に援助する必要はないってことですね?
黒田 そうです。(後略)
⇒参照・引用元:『朝日 vs 産経 ソウル発』著:黒田勝弘 市川速水,朝日新書,2006年12月30日 第1刷発行,pp148-149
この本でのお二人のプロフィールですが、黒田勝弘先生は「産経新聞ソウル支局長」、市川速水先生は「朝日新聞前ソウル支局長」となっています。
保革相反する2つの媒体のソウル支局長経験者が意見を戦わせたわけです。
北朝鮮に人道支援を行うべきなのかどうかは今でも論点になり得ます。読者の皆さんは、黒田先生と市川先生、どちらの意見により共感されますでしょうか。
筆者は「北朝鮮が独裁体制のママであるなら、WFPの行うことであろうが、北朝鮮への人道支援はすべきではない」という黒田先生の意見に賛成です。
萩原遼先生の著作『金正日 隠された戦争 金日成の死と大量餓死の謎を解く』によって、WFPによる食糧援助がいかに北朝鮮側にコントロールされたのかが分かってもいます。
金正日体制に反抗的な人々が住むと目された地域には、恐ろしいことにほとんど食糧支援がいかず、餓死者が出続けることになったのです。萩原遼先生はこれを「殺人」と断じていらっしゃいます。
北朝鮮の中世国家のような体制を崩壊に追い込むためには、徹底的に締め上げるしかないと考えた方がいいのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)