2023年11月14日、韓国の産業通商資源部が「情報通信産業(ICT)10月の輸出状況」を公表しました。
本来であれば、この情報通信産業(ICT)は、半導体・スマホ・ディスプレーなどの輸出品目で韓国にとっては誇るべき分野です。しかし、ここが弱っており、かてつのように大きく喧伝できなくなっています。
10月の結果がどうなったのか見てみましょう。まず、全般状況です。
2023年10月
ICT輸出:170.6億ドル(-4.5%)
ご注目いただきたいのは、オレンジの線です。対前年同期比の増減を示しており、2022年10月の「-10.3%」から直近の2023年10月「-4.5%」まで、前年割れが続いています。もう10月まできましたが、2023年は一度も対前年同期を上回ったことがありません。
輸出品目別に見ると以下のようになります。
○半導体:89.7億ドル(-4.7%)
⇒メモリー半導体:45.1億ドル(+1.0%)
⇒システム半導体:40.6億ドル(-7.4%)ご注目いただきたいのは、メモリー半導体の輸出が対前年同期比で「+1.0%」となっている点です。
上掲のようにプレスリリースでも、メモリー半導体が16カ月ぶりに対前年同期比で増加に転じたと大書しています。
これは、「メモリー価格が底を打ったかも?」という状況を反映したものです。
上掲は毎度おなじみの『DramExchange』のDRAM(8GB_1Gb8_2133MHz)、NANDフラッシュメモリー(64Gb_8G×8_MLC)の価格推移ですが、どちらも10月には価格が上昇しています。
プレスリリースには出てこないのですが、資料をダウンロードして半導体輸出の詳細を見ると、システム半導体の方は上掲のように「-7.4%」でした。
もともと韓国はシステム半導体の方はからっきしですが、こちらはプラスではありません。
○ディスプレー:22.9億ドル(+13.1%)
⇒LCD:4.1億ドル(+14.1%)
⇒OLED:16.6億ドル(+15.6%)ディスプレーの輸出金額が増加していますが、特にベトナムへの輸出が増加しているのです。
10月のディスプレーの対ベトナム輸出は「15.2億ドル(+23.5%)です。
なぜこれほどベトナムに輸出が増加しているかというと、携帯電話の製造拠点がベトナムにあるからです。つまり、完成品組み立て用のパーツがベトナムに送られているといわけです。
ただし、完成品のスマホは以下のように輸出が低迷しています。
○携帯電話:15億ドル(-3.3%)
※9カ月連続の減少○コンピューター・周辺機器:7.6億ドル(-26.2%)
⇒SSD:4.2億ドル(-42.9%)○通信設備:2億ドル(-23.4%)
※インフラ投資の世界的縮小で全体輸出は減少
ただし「日本:0.3億ドル(+50.3%)」
メモリー半導体が対前年同期比で1.0%増加したのがわずかな希望です。ディスプレー以外は総じて低迷、というのが本当のところです。
産業通商資源部のプレスリリースは、対中国の半導体輸出が「51.0億ドル(+1.1%)」と書いているのですが、対中国ICT輸出を全体で見ると、「75.5億ドル(-3.5%)」といまだに低迷しているのです。
韓国ICT輸出の泥沼はまだ続いています。さすがに、そろそろ基底効果が現れそうですが、しかしそうなると今度は実額が本当に回復したのかをよく見なければなりません。
(吉田ハンチング@dcp)