2024年も08月15日を迎えました。
日本では終戦日ですが、韓国では「光復節」で日本の統治から解放された記念日となっています。
毎年「光復節」には現役の大統領が国民向けの演説を行うのが定例です。
以下は、尹錫悦（ユン・ソギョル）大統領による2024年8月15日の第79周年光復節記念式典での演説の日本語訳です。
尊敬する国民の皆さん、700万の在外同胞の皆さん、そして2,600万の北朝鮮同胞の皆さん、今日は光復79周年を迎えました。
祖国の独立のために献身された殉国先烈と愛国志士の皆様に敬意を表します。
そして、遺族の皆様にも深く感謝いたします。
国権を奪われた後、今日に至るまで、我々の国民は本当に偉大な歴史を築き上げてきました。
そして、この偉大な旅路を貫く価値はまさに自由です。我々の光復は、自由を求める闘争の結実でした。国権を失った暗澹たる状況の中でも我々の国民は諦めませんでした。
1919年の3.1運動を通じて、国民が主人となる自由な国を作るという国民の一貫した熱望を確認しました。
このような熱望を込めて上海臨時政府を設立し、国内外でさまざまな独立運動を展開していきました。
内では教育や文化を通じて自らの力を養うために絶えず努力し、外では外交的、軍事的独立運動をやめませんでした。
1945年の解放以降も自由への闘争は続きました。1948年に自由民主主義憲法を制定してこの地に大韓民国政府を樹立しました。
建国以来守ってきた自由民主主義と市場経済の憲法精神はわれわれが享受している豊かさと繁栄の基盤となりました。
北朝鮮の南侵により6.25戦争が勃発すると、自由民主主義国家と共に血を流して戦いわれわれの自由を守り抜きました。
自由の価値を守り発展させ、共に汗を流して努力した結果、産業化と漢江の奇跡、そして民主化を成し遂げました。
今や大韓民国は、眩しい経済成長を超えて、グローバル中枢国家、グローバル文化強国へと飛躍しました。
帝国主義勢力による国権の奪取も、分断も、戦争も、いかなるものも自由に向けた我々の力強い前進を
止めることはできませんでした。しかし、我々には依然として未完の課題として残る完全な光復があります。
われわれの前には必ず解決すべき重大な歴史的課題があります。
それは、統一です。
1919年、我々の国民は朝鮮半島に国民が主人となる自由民主国家を樹立するための努力を始めました。
1945年に日本の敗戦により解放されましたが、分断体制が続く限り、われわれの光復は未完成であると言わざるを得ません。
自由が奪われた凍土の王国、貧困と飢餓に苦しむ北の地にわれわれが享受する自由が拡大されるべきです。
朝鮮半島全体に国民が主人となる自由民主統一国家が作られるその日、ようやく完全な光復が実現するのです。
私は今日、憲法が大統領に命じた自由民主主義平和統一の責務に基づいて、我々の統一ビジョンと統一推進戦略をわれわれの国民と北朝鮮住民、そして国際社会に宣言します。
国民の皆さん、われわれが夢見る統一韓国の未来は明らかです。
国民の自由と安全が保障される幸せな国、創意と革新で飛躍する強く豊かな国、
国際社会の和合と発展を先導し、世界平和と繁栄に寄与する国、これがまさに統一韓国の未来です。
私は今日、このような統一韓国へ進むための我々の課題を提示します。
第一に、われわれ国民が自由統一を推進できる価値観と能力をさらに確固としたものにしなければなりません。
第二に、北朝鮮住民が自由統一を切実に願うような変化を生み出すことが必要です。
第三に、国際社会と連帯しなければなりません。
まず、われわれ自身が自由の価値に対する確信をより強固に持つべきです。
われわれの中の自由を確固たるものに守ってこそ、われわれが自由民主主義統一を主導する統一推進勢力となることができるのです。
われわれすべてが自由人となりわれわれの自由が共存するためには、責任と配慮、秩序と規範が前提とならなければなりません。
秩序と規範を無視する放縦と無責任を自由と混同してはなりません。
自由社会を崩壊させるための虚偽の扇動や偽りの論理に振り回されてはさらにいけません。
いわゆるフェイクニュースに基づいた虚偽の扇動や偽りの論理は自由社会を混乱させる恐ろしい凶器です。
今やフェイクニュースは一つの大規模な産業になりました。
偽りの知識人たちはフェイクニュースを商品として包装して流通させ、既得権益集団を形成しています。
偽りの知識人や扇動家たちはわれわれが真に目指すべき価値やビジョンを全く提示できません。
提示することができないのです。
国民を惑わして自由社会の価値と秩序を崩壊させることが彼らの戦略であり、真の目標を明らかにすれば嘘の扇動が通じなくなるからです。
扇動と捏造で国民を分裂させ、その隙間で利益を享受することに執着しているだけです。
彼らこそが、われわれの未来を妨げる反自由勢力、反統一勢力です。
デジタルサイバー産業の発展に伴い知識産業が指数関数的に成長している状況の中で、これを悪用する黒い扇動勢力に対抗して、自由の価値体系を守るためには、われわれ国民が真実の力で武装し戦わなければなりません。
自由は闘争で得られるものです。決して自然に得られるものではありません。
私と政府は我々の社会で自由の価値を守るために全力を尽くします。
民間主導の市場経済の基調の下で企業が存分に活躍し、質の高い雇用を多く創出し、国民が就職と経済活動の機会をより多く享受できるよう最善を尽くします。
われわれの社会をさらに公正で健全にするための教育改革、労働改革、年金改革、医療改革に一層の拍車をかけます。
困難な方々を集中支援するカスタマイズされた弱者福祉を拡充し国民の生活をより温かく見守り、すべての国民の自由を守り拡大していきます。
これを通じて我々の社会に自由の価値がさらに深く根付くようにし、黒い勢力の偽りの扇動からわれわれの国民を守ります。
われわれ国民が自由の価値と責任意識で強く武装すれば、朝鮮半島の自由統一を主導できるのです。特に、若者や未来世代が自由統一への期待と夢を持てるように、未来志向の「先端実践型統一教育プログラム」を提供します。
さらに、統一がもたらす機会と変化を仮想空間で事前に体験できるようにします。
次に、北朝鮮住民が自由統一を強く願うよう、配慮し変化をもたらす課題です。
自由の価値を北に広げ、北朝鮮の実質的な変化を引き出すために、われわれがより積極的に取り組まなければなりません。何より、北朝鮮の人権を実質的に改善するために、多面的な努力を展開します。
北朝鮮の人権の惨状を、我々国民と国際社会にありのまま正確に知らせる必要があります。
われわれの政府が初めて「年次北朝鮮人権報告書」を公開したのもその理由からです。
今後はさらに充実させて、全世界により広く伝えていきます。
国内外の民間団体（NGO）、友好国、国際機関と協力し、北朝鮮の人権侵害の実態を広く知らせ、人権改善を持続的に促していきます。
「北朝鮮人権国際会議」を推進し、北朝鮮人権に関する議論を全方位的に拡大していきます。
「北朝鮮自由人権基金」を創設し、北朝鮮住民の自由と人権を促進する民間活動を積極的に支援します。
北朝鮮住民の生存権を保障するための人道支援も引き続き推進します。
8月1日に北朝鮮の洪水被災者に対して救援物資の支援を提案したのも、北朝鮮住民の苦痛を絶対に見過ごさないというわれわれの意思を示したものです。
北朝鮮政権が再び拒否しましたが、我々は人道支援を諦めません。
北朝鮮の乳幼児、女性、高齢者、障がい者など、北朝鮮の脆弱な階層に対して、食糧や保健を含む人道支援を今後積極的に推進します。
北朝鮮住民が自由の価値に目覚めることが非常に重要です。
多くの脱北者はわれわれのラジオ放送やテレビを通じて、北朝鮮政権の虚偽の宣伝と扇動に気づいたと言います。
自由統一が彼らの生活を改善する唯一の道であることを、さらに多くの北朝鮮住民が理解し、統一韓国が彼らを包容するという信念を持てば、彼らは自由統一の強力な味方となるでしょう。
特に、北朝鮮の未来世代に自由統一の夢と希望を植え付けるべきです。
北朝鮮住民がさまざまな経路で外部情報にアクセスできるよう、「情報アクセス権」を拡大します。
「先に来た統一」である脱北者たちを温かく受け入れることも非常に重要です。
07月14日に「脱北者の日」が制定され、初の記念式が開かれました。
脱北者の保護と支援に対する我々政府の確固たる意思を示したものです。政府は脱北者を適切に保護し、彼らの役割を統一への力として加えます。
南北の両方を経験した脱北者の経験と知識を統一政策の策定と推進に積極的に反映し、統一韓国の未来を切り開く貴重な資産とします。
これらの努力と共に、南北対話の扉は広く開かれています。
南北対話は見せかけの政治イベントではなく、
われわれ国民と北朝鮮住民の平和保障と生活改善などを議論する実質的な場となるべきです。
私は今日、南北当局間の実務レベルの「対話協議体」の設置を提案します。
ここで緊張緩和をはじめ、経済協力、人員往来、文化交流、災害と気候変動への対応に至るまで
どのような問題でも取り扱います。
離散家族、国軍捕虜、拉致者、拘留者問題などの人道的課題も協議することができるでしょう。
一方で、一昨年の光復節に発表した「大胆な構想」で既に明らかにしたように、
北朝鮮が非核化の第一歩を踏み出すだけで政治的、経済的協力を即座に開始します。
対話と協力を通じて、南北関係の実質的な進展が得られるよう北朝鮮当局の対応を促します。
最後に、国際社会との連帯です。
われわれの分断が国際政治の産物であったように、統一はわれわれ一国だけで成し遂げるのは容易ではありません。
われわれの統一は自由と人権の普遍的価値を拡大する課題であり、世界平和と人類の繁栄に直結する問題です。
統一韓国が世界の平和と繁栄に寄与する国になるという信念を国際社会に広める必要があります。
国際社会に責任ある貢献をしながら、国際社会と共にわれわれの統一政策を推進していかなければなりません。
私は昨年の国連総会基調演説で、国家間の開発格差、気候格差、デジタル格差を解消することに韓国が先導的役割と貢献を果たすと表明しました。
われわれ政府の発足以来、ODA予算規模を大胆に2倍以上に増やしました。
われわれ主導の「無炭素連合」を立ち上げ、気候課題に関する国際的規範の議論を先導しています。
AIソウルサミットを開催するなど国際社会の新しいデジタル規範の確立にも先頭に立っています。
これらの貢献と役割を基に、自由統一に対する国際社会の支持を牽引していくためにさらに努力します。
これを達成するために、志を同じくする国々と共に「国際朝鮮半島フォーラム」を創設します。
同盟国や友好国と自由の連帯を強固にしながら、われわれの統一に対する共感を形成するために努めます。
国民の皆さん、そして北朝鮮同胞の皆さん！
統一韓国では我々はより大きな自由と機会を享受することができます。
さらには、人類社会全体への祝福のメッセージとなるでしょう。
私と政府は、2024年を「自由平和繁栄の統一韓国」に向けた新しい元年とするために尽力します。
尊敬する国民の皆さん、
韓国が歩んできた挑戦と成功の旅路は現代史に輝く記録となり、
大きな感銘を与えました。
08月01日、世界銀行は「中進国の罠」という報告書で韓国を「成長のスーパースター」と呼び、韓国の成長の歴史が「すべての中進国が習得すべき必読書」と評価しました。
この報告書は「Korea」という言葉を実に100回も言及し、「投資」「技術導入」「革新」に至るわれわれの成功の秘訣を詳細に紹介しています。
昨年、われわれの一人当たり国民所得は初めて日本を上回り、2026年には4万ドルに達する見込みです。
今年上半期、韓国と日本の輸出格差は史上最小の35億ドルを記録しました。
また、先日開催されたパリオリンピックでは世界8位という輝かしい成績を確認したように、我々の若者は挑戦を恐れず、力強く未来に向かって飛躍しています。
世界各国が韓国の歩んできた道を追いかけようとしています。
しかし、これに満足していてはいけません。
統一韓国へと進むためには、われわれはさらに強くならなければなりません。
われわれの自由を脅かす内外の挑戦に立ち向かい、さらに大きな歴史の進展を成し遂げなければなりません。
尊敬する国民の皆さん、共に歩みを進めましょう！
より大きな韓国、統一韓国に向けて、皆で手をしっかりと取り合い、力強く前進しましょう！
ありがとうございます。
⇒参照・引用元：『韓国 第20代大統領室』「『完全な光復に向けたより大きな大韓民国、統一大韓民国に力強く進みましょう！』」
なかなか感動的な演説でした。
左派・進歩系の皆さんにはどう響いたか分かりませんが。
（吉田ハンチング＠ｄｃｐ）
