韓国大統領に成りおおせた李在明(イ・ジェミョン)さんが内閣改造に乗り出し、財政経済部の具潤哲(ク・ユンチョル)長官、国防部の安圭伯(アン・ギュベク)長官などが更迭され、新しい人物を指名したのですが……議論を引き起こしています。
最大の注目(および批判の的となっているの)は、性平等家族部の部長に指名された龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんです。

「長官になっても議員は辞めない」
李在明(イ・ジェミョン)さんは2026年08月30日、『基本所得党』の龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんを性平等家族部長官候補に指名しました。
『基本所得党』というのは、政府与党に成り上がった『共に民主党』よりも「さらに左」の政党で、文字どおり「ベーシックインカム」の給付を主張する政党です。

↑龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんが講演をしていますが、後ろのフラッグには여성혐오 찢고 나온 후보들- 21대 총선 페미니스트 수난토크(「女性嫌悪を突き破って出てきた候補たち」― 第21代総選挙 フェミニスト受難トーク)と書いてあります。
大体どういう人物かは上掲の講演タイトルを見ていただければ分かるのではないでしょうか。
このような人物こそ「プロ市民」と呼ぶべきですでしょう。なにせ、まともに労働してお給料をもらった形跡がない――とのことです(このことが後述に関連します)。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんが批判されているのは、「長官職に氏名された人物は議員を辞職する」という、これまでの慣例を守る気がないことです。
国会の人事聴聞会をクリアして実際に性平等家族部の部長となっても、『基本所得党』の議員職を続けるとしています。
議員辞職すると夫ともども「食えなくなる」
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんは1990年生まれ。再選議員で、『基本所得党』に所属する唯一の現職国会議員です。
韓国の国会法上、国会議員が国務委員、つまり長官を兼ねること自体は禁止されていません。したがって、これは法律違反ではありません。
しかし「慣例」には反するのです。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんは比例代表議員です(どこかの国で聞いたような話になってきます)。
比例代表議員は辞職しても「候補者名簿の次順位者が議席を承継可能」なのです。
このため、比例代表議員が入閣する際には議員を辞職するのが一般的でした。例えば、朴槿恵(パク・クネ)政権のイ・ダルゴンさん、カン・ウンヒさんなどは、比例議員から長官に転じる際、議員職を辞しています。
ところが龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんは辞めません。
08月31日に本人がはっきり述べています。
「自分は基本所得党所属の唯一の国会議員であり、自分が辞職すれば『基本所得党』が院外政党(国会議員が所属しない政党)になってしまう。
その上、個人の決断が党の存立そのものに直結してしまいます。『少数政党の厳しい現実』について理解を求める」
――としました。
これが騒動の核心です。
普通なら、龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんが議員を辞めれば、「基本所得党の次の候補」が繰り上がれば良い――ように見えます。
しかし、これができないのです。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんは2024年の第22代総選挙で基本所得党単独の比例名簿から当選したのではなく、『共に民主党』などが作った――比例代表連合政党『共に民主連合』の候補として当選しています。
したがって龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんが辞職した場合、比例名簿の次順位者が承継し、その人物が基本所得党所属になる保証はありません。現在の構造では『基本所得党』の議席は失われることになります。
しかも龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんにとってこれは「2回目」です。
2020年の第21代総選挙でも、基本所得党は民主党系の比例連合政党『共に市民党』に参加し、龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんを比例候補として送り込みました。
『基本所得党』自身が当時、『共に市民党』への参加と龍氏らの比例候補申請を正式発表しています。
つまり、龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんの国会議員歴は、
2020年:『共に市民党』の比例代表として当選
⇒『基本所得党』に復帰
2024年:『共に民主連合』の比例代表として再選
⇒『基本所得党』に復帰
という形になっています(で現在も『基本所得党』)。どう見ても「いい加減なヤツだなあ」――です。
そのため今回、
「『共に民主党』系の衛星・連合政党を利用して2度議席を得て、その議席によって『基本所得党』を院内政党として維持し、その議席を今度は長官就任後も手放さないのか!」
――という批判が出ました。
『韓国女性政治ネットワーク』は、龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんを「衛星政党を通じて国会入りし、連動型比例代表制の趣旨を歪めた主役」と批判しています。
大笑いなことに、進歩陣営の内部からも批判が出ているわけです。
「1議席」を失うと金も組織も失う
ここから国庫補助金問題につながります。お金の話です。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんが辞職して『基本所得党』が「0議席の院外政党」になれば、同党は院内政党として得ている各種の制度的恩恵を失います。
『韓国経済新聞』は、『基本所得党』の1議席に伴う党の国庫補助金、議員室の補佐スタッフなどを合算して、年間約13億ウォン規模の「インフラ」が失われる――と指摘しています。
長官になって辞職すれば、この「収入」が絶たれるのです。
議員辞職すると夫ともども「食えなくなる」
夫・朴起弘(パク・キホン)さんの問題もあります。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんの夫、朴起弘(パク・キホン)さんは、単に「政治家の夫」なのではなく、『基本所得党』の戦略企画副総長を務める常勤の党の職員です。
『基本所得党』自身の説明によれば、朴さんは「創党以前から活動」しており、創党準備委員会の戦略企画本部長を皮切りに、事務総長、組織副総長、戦略企画副総長などを歴任。
2020年に龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんが総選挙に出馬した際には、党代表権限代行も務めています。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんが辞職
↓
『基本所得党』が院外政党化
↓
補助金や党財政が縮小
↓
常勤の職員である夫の給与にも影響する
↓
だから議員職を手放さないのではないか
――という疑惑が当然提起されます。
皮肉屋の安哲秀(アン・チョルス)さんからは『基本所得党』を文字って「これでは가족소득당(家族所得党)ではないか」と揶揄する発言が出ています。
そうなのです。この龍慧仁(ヨン・ヘイン)さん夫婦にとっては「国会議員」というのは、まさに「ファミリービジネス」なのです。
この龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんの「議員を辞職しませんよー」という態度は、『共に民主党』からも「大統領が指名を撤回しろ」「龍慧仁(ヨン・ヘイン)は指名を辞退しろ」の声が上がっています。
傑作なことに、揉めているので龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんに対する人事聴聞会の日程が決まりません(2026年09月06日現在)。
『共に民主党』内部にも「これはまずい」という反応になっていますが、別の見方もあります。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんの指名が騒動を起こすことは分かっていて、敢えて行った。囮作戦――だというのです。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんについての議論が拡大すれば、(李在明の公訴帳消しを行う予定の)新法務部長官の方はあまり騒がれないのでは――という「姑息な考え」です。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんは結局長官になれなくても構わない、要するにただの煙幕です。
龍慧仁(ヨン・ヘイン)さんが揉めている間に、金勝源(キム・スンウォン)『共に民主党』議員を次の法務部長官にしてしまおう――というわけです。
ただの邪推なのか、それとも核心を突いているのかは、それこそ李在明(イ・ジェミョン)さんに聞いてみないと分かりません。
ところが先にご紹介したとおり、李在明(イ・ジェミョン)さんは昨日から、フランス出張に出掛けています。
(吉田ハンチング@dcp)





