ウォン安が危険水準まで進行しているため、安全弁としての「通貨スワップ」を求める声が韓国で高まっています。ついに本命の『中央日報(日本語版)』にも「通貨スワップ」の記事が出ました。
2022年05月06日の同紙記事から一部を以下に引用します。
(前略)
国民の力のソン・イルジョン政策委議長は06日、国会院内対策会議で「尹錫悦(ユン・ソクヨル)政府が民生安定という最優先課題を解決するためには、為替・金融市場の不安定性を取り除くことが重要だ」として「このため、韓米間通貨スワップの締結が必ず必要だ」と話した。(中略)
ソン議長は「文在寅(ムン・ジェイン)政権が外交的・経済的に崩壊させた通貨スワップを尹錫悦政府は必ず立て直しておくべきだ」とし、「発足すれば直ちに米国・日本など主要国との通貨スワップを締結して最悪の状況に備えて緊急外貨流動性の確保など金融のセイフティネットの構築に出る必要がある」と話した。
アメリカ合衆国のみならず日本の名前も挙がっています。
韓国にハードカレンシー国との「通貨スワップ」協定が必要であることは確かですが、このソン議長の発言は明らかに「通貨スワップ」を政争の具にしようとしています。
「文政権で崩壊した」などと言っているのがその証拠です。
2020年03月に連邦準備銀行(フロントはNY連邦準備銀行)と各国中央銀行の間で締結されたドル流動性スワップ(韓国側呼称は「通貨スワップ」)は、あくまでも一時的なもの。『韓国銀行』とだけではなく、計9つの中央銀行との間で結ばれました。
理由は世界的なドル不足によって合衆国の金融をも毀損する可能性があったためで、韓国の窮地を救うために実施されたのではありません(結果的にドルが枯渇した国を救うことになりましたが)。
このドル流動性スワップは三度延長した後に2021年12月31日に終了しました。これまた『韓国銀行』とだけ終了したのではありません。9つの中央銀行全てとの契約が終わりました。
終わったのもコロナ禍によるドル不足が解消されたと判断されたことが理由です。また、インフレ解消で金融引き締めに向かうため、ドルを供給するドル流動性スワップというシステムを放置できなかったことも理由でしょう。
ですから、ドル流動性スワップは、特に韓国を救うために提供したのでもなければ、文政権だから終わったのでもありません。もう目的は達したので終わったのです。
最初から「一時的なもの(temporary)」と定義されていたので、終わっても当たり前です。
文政権で崩壊したなどと言い立てるのは、尹政権で再開できれば「尹政権の功績になる」からに他なりません。
世にもあほらしい話ですが、『国民の力』の希望どおり「ドル流動性スワップを締結しよう」なんて話になるかどうかは甚だ疑問です。
金融引き締め方向に向かっている『FRB』が、ドルの流動性を増やすものであるドル流動性スワップをなぜ締結しなければならないのでしょうか。話が無理筋に見えるのですが、『国民の力』、いや韓国の皆さんはそうは考えないのでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)