アメリカ合衆国陸軍が現在の韓国政府にとってはイヤな動きをしています。
欧州の「MDTF」を韓国に移動している――というのです。
MDTFというのは「Multi-Domain Task Force」の略で「多領域任務部隊」と訳されます。中国・ロシアなどの高度なA2/AD(接近阻止・領域拒否)ネットワークを突破するために新設した、戦域レベルの特殊な統合作戦部隊です。
2026年08月には外信『Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)』が、クリストファー・ラネーブ米陸軍参謀総長代行の体制下で、米陸軍がMDTFを欧州から韓国へ移動させている――と報じていました。
『Wall Street Journal』の報道が正しいのであれば、欧州戦域を担当する第2MDTFの戦力(ドイツに司令部を置く)を韓国へ移動していることになります。
「MDTF」とは何か?
事の重要性を理解するためには、MDFT(マルチドメイン・タスクフォース)がどのような部隊かを知らなければなりません。
至極簡単にいえば――MDTFは、地上、海上、空中、宇宙、サイバー・電子戦など、すべての領域(マルチドメイン)で行われる合衆国陸軍の作戦遂行概念である「多領域作戦」を遂行する部隊です。
合衆国陸軍自身はMDTFについて、「敵のA2/ADネットワークに対抗し、全領域において精密効果と精密火力を同期させる戦域級の機動戦力」と説明しています。
「A2/AD」のA2は「Anti-Access(アンチアクセス:近接阻止)、ADは「Area Denial(エリアデナイアル:領域拒否)を意味します。
A2=「ここまで来させない」
AD=「来ても好きにはさせない」
MDTFは――このような能力持つ敵、敵の「近接阻止・領域拒否」ネットワーク」を突破する能力を持ち、精密打撃を行える能力を併せ持つ部隊――なのです。
この場合の「敵」は、名指しこそされていないものの、中国、ロシアなどを指しているのは明らかです。
それはMDTFがどこにいるかで分かります。
MDTFは欧州戦域・太平洋戦域・
第1MDTFは最初の実験部隊でMDTFの原型ですが、2017年に試験編成が始まり、2020年09月16日に正式に活動を開始しました。
合衆国陸軍は、この第1MDTFは2026年06月18日に第7歩兵師団と第1MDTFを統合する形で、7th Infantry Division (Multi-Domain Command-Pacific) = 第7歩兵師団(多領域コマンド太平洋)を新設しました。
第2MDTFは2021年に設置され、ドイツのマインツ=カステルに司令部があります。
⇒「Multi-Domain Command Europe」には、
・Signal Company=通信中隊
・Extended Range Sensing and Effects Company=長距離センシング・効果中隊
・Information Defense Company=情報防御中隊
・Military Intelligence Company=軍事情報中隊
・Space Company=宇宙中隊
があります。欧州では、事実上ロシアの防空・ミサイル・電子戦・情報ネットワークに対抗する戦域級部隊として機能しています。
そして、この第2MDTFについて、2026年夏になって欧州から韓国へ戦力を移動しているという報道が出たわけです。
第3MDTFは2022年09月23日にハワイのフォート・シャフターで正式に発足しました。
第1MDTFに続く、インド太平洋向けの2番目のMDTFです。米陸軍はその任務を、
長距離精密効果を用い、サイバー、電子戦、情報、長距離火力を統合する
――と説明しています。また、2026年04月にも太平洋米陸軍は、第3MDTFについて、
インド太平洋における統合抑止を支え、複数領域でprecision effects(精密効果)を提供する部隊
――と説明しています。
第4MDTFは、現在まさに新編されつつある部隊です。
合衆国陸軍の2027年度予算資料には、
Army activates the 4th MDTF in Fort Carson, Colorado
――とはっきり書かれています。2026年度以降、合衆国陸軍は、MDTFだけではなく、Multi-Domain Command(MDC)というアップグレー組織へ移行し始めています。
その最初の具体例が、上記の第1MDTF ⇒ 第7歩兵師団(MDC-Pacific)です。世界的展開力を持つ合衆国軍は最新の能力を持つ部隊を組成して重点地域を配置しています。
欧州戦域・インド太平洋戦域ですから、A2/ADネットワークを展開しているのはどこかといえば、ターゲットはもちろん中国・ロシアとなるわけです。
ここから韓国にとってイヤな話になります。
在韓米軍を対中国・ロシア対抗にも使うよ――という表明
欧州から第2MDTFが韓国に移動するということは――その目的は明白で、在韓米軍を対中国・対ロシアにも使うということです。

↑2025年11月16日、在韓米軍はジェイビー・ブランソン司令官名義の文書を公表。添付されていた地図。
この文書では、(朝鮮の)戦略的価値は、「北京の視点(Beijing perspective)」と私が呼ぶ視点から見ると一層鮮明になる――と書かれていますから、もちろん中国を念頭に置いているわけです。
ところが、韓国は「在韓米軍は北朝鮮を抑止するためのみに存在している」という言動を続けており、現実を見ていません。
※1953年の米韓相互防衛条約は、もちろん在韓米軍の任務を「北朝鮮抑止のみ」と限定してはいません。
親北朝鮮の李在明(イ・ジェミョン)さんは米軍は出ていけ!という人物であり、台湾は韓国に関係ない――「台湾にも謝謝、中国にも謝謝と言っときゃいいんだ」と言い放ったことがあります。
国際問題にはまったく不感症な人物なのです。
韓国国防部は本件について、
「合衆国政府の公式な立場ではない関連報道について、一つ一つ言及したり評価したりすることは適切ではない」
「米韓両国は、強固な韓米同盟の維持および対北朝鮮即応態勢の強化のため、さまざまな同盟懸案について随時緊密に意思疎通している」
――と反応しています。
(吉田ハンチング@dcp)





