2026年09月18日、『韓国銀行』が「2025年公共部門勘定(暫定)」を公表しました。
件名:2025年公共部門勘定(暫定)
□2025年の公共部門(一般政府+公企業)の収支(総収入-総支出)は83.1兆ウォンの赤字となり、前年(69.1兆ウォンの赤字)に比べ、赤字幅が14.0兆ウォン拡大ㅇ公共部門の総収入は1,192.1兆ウォンで、前年(1,139.1兆ウォン)に比べ53.0兆ウォン(+4.7%)増加
ㅇ公共部門の総支出は1,275.2兆ウォンで、前年(1,208.1兆ウォン)より67.0兆ウォン(+5.5%)増加
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2025년 공공부문계정(잠정)」
「Public Sector Accounts(公共部門勘定)」というのは、「韓国の政府と公企業を全部まとめて、一つの巨大な経済主体として見たとき、1年間にいくら入って、いくら使い、最終的に黒字だったのか赤字だったのか」を示す統計です。
次のものを全部含んでいます。
中央政府
地方政府
社会保障基金――国民年金、健康保険など
非金融公企業――韓国電力公社(韓電)、韓国土地住宅公社(LH)など
金融公企業――韓国産業銀行、韓国住宅金融公社など
2025年末時点で一般政府5,801機関、公企業172社などを含み、公共部門全体では5,973の機関・基金等が対象です。
簡単にいえば、「韓国政府の家計簿」というだけではなく、「韓国の政府+自治体+社会保障+公企業を連結した巨大な家計簿」です。
中身にとても面白いデータがありますのでご紹介しておきます。
収入は大幅に増えたが支出も拡大した
まず、上記の「83.1兆ウォンの赤字」です。中身を分解すると、何が起こたのかがはっきりします。
2025年の公共部門全体は、総収入1,192.1兆ウォン、総支出1,275.2兆ウォン、差し引き「-83.1兆ウォン」(83.1兆ウォンの赤字)です。
2024年の「-69.1兆ウォン」から14.0兆ウォン悪化しました。対GDP比で見ても「-2.7%」から「-3.1%」へ悪化しています。
ところが、部門別に分解するとこうなります。
| 収支 | 2024年 | 2025年 | 悪化・改善 |
|---|---|---|---|
| 一般政府 | ▲57.5兆 | ▲60.1兆 | ▲2.6兆 |
| 非金融公企業 | ▲16.7兆 | ▲22.1兆 | ▲5.5兆 |
| 金融公企業 | +5.1兆 | ▲0.9兆 | ▲6.0兆 |
※内部取引があるため、下位部門の単純合計と公共部門全体は一致しません。
公共部門全体の赤字悪化14兆ウォンですが、一般政府の財政悪化が原因とはいい切れません。
一般政府の悪化は2.6兆ウォンにとどまり、むしろ大きかったのは、非金融公企業の「5.5兆ウォン悪化」と金融公企業の「6.0兆ウォン悪化」です。
つまり2025年には、政府だけでなく、『韓国電力公社』・『韓国土地住宅公社』(Korea Land and Housing Corporation:略称「LH」)などの非金融公企業、国策銀行の『産業銀行』・『住宅金融公社』などの金融公企業まで同時に収支が悪化したわけです。
一般政府だけ見ると「税収は猛烈に回復している」
一般政府の総収入は848.6兆ウォンから903.2兆ウォンへ「54.6兆ウォン」増加しました。そのうち国税収入は、
456.8兆 ⇒ 502.0兆ウォン
です。実に「+45.2兆ウォン」、約9.9%増加しました。
社会保険料などの社会負担金も237.8兆から248.7兆ウォンへ10.9兆ウォン増えています。
それなのに一般政府の収支は、
▲57.5兆 ⇒ ▲60.1兆ウォン
へ悪化。赤字が拡大しました。なぜでしょうか?
総支出も906.0兆から「963.3兆ウォン」へ「57.3兆ウォン」も増えたからです。
つまり2025年については、「税収不足で赤字が膨らんだ」のではありません。税収は45兆ウォン以上回復したのに、それを上回る規模で支出が増えたのです。
57.3兆ウォンも何に使ったのか?
一般政府支出増57.3兆ウォンの主要項目は、
最終消費支出
447.5兆ウォン ⇒ 469.2兆ウォン(+21.7兆ウォン)
社会給付
174.9兆ウォン ⇒ 189.8兆ウォン(+15.0兆ウォン)
その他経常移転
117.2兆ウォン ⇒ 135.6兆ウォン(+18.4兆ウォン)
一方、投資は、
118.0兆ウォン ⇒ 119.7兆ウォン(+1.7兆ウォン)
にすぎません。これはかなり需要なポイントです。
2025年の政府支出急増は、公共インフラなどへの投資が主因ではありません。
『韓国電力』自身が、最終消費増には健康保険給付費などが含まれると明記しています。社会給付には基礎年金、国民年金などが含まれ、その他経常移転には民間への支援金などが入ります。
したがって、57兆ウォンの支出増を単純な「将来の成長力を高めるための投資拡大」と評価することはできません。李在明(イ・ジェミョン)さんがいうところの「未来への投資が国力を上げる」という主旨で「支出が増えた」――わけではないのです。
「社会保障基金」の黒字が急速に減少した!
特に重要なのは「社会保障基金」です。韓国の老齢年金や医療保険などを支えるための重要な部分です。
それだけではなく、社会保障基金が公的部門の赤字を軽減しているのです。この資料によれば、公的部門の赤字収支は、
社会保障基金込み:対GDP比-3.1%
社会保障基金を除く:対GDP比-4.3%
――です。つまり、公的部門の赤字が少なくなるように社会保障基金の黒字額が助けているのです。
で、この黒字が減少したり、ましてや赤転したらどうなるでしょうか? 以下が今回の資料での重要なポイントです。
2024年
収入:259.3兆ウォン
支出:217.6兆ウォン
収支:+41.8兆ウォン
から、
2025年
収入:268.6兆ウォン
支出:236.7兆ウォン
収支:+32.0兆ウォン
になりました。わずか1年で黒字額が9.8兆ウォンも縮小しています。
しかも、
収入増:+9.3兆ウォン
支出増:+19.1兆ウォン
――です。支出の対前年比の増加額が、収入の2倍を超えています。
先に少しだけご紹介しましたが、『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)は、韓国の年金・医療・長期介護など高齢化関連支出について、中長期的に大きな増加圧力がかかるとしています。
改革を行わず、高齢化による潜在成長率低下まで織り込むシナリオでは、2050年の政府債務比率がGDP比90~130%に達する可能性を試算。
『OECD』(Organisation for Economic Co-operation and Developmentの略:経済協力開発機構)もまた2026年の韓国経済審査で、「急速な高齢化による財政支出圧力への対応」を韓国の重要課題として挙げています。
日本よりも急速に老いていく韓国ですから、社会保障基金への対処は焦眉の急なのですが、経済的無知蒙昧な李在明(イ・ジェミョン)さんが率いる政府では、対応が遅々として進んでいません。
(「知らねーよ」とばかりに)もう放り投げているのかもしれませんが、時間がたってひどい目に遭うのはもちろん韓国の皆さんです。
やるのはいつ? 「今でしょ!」に追い込まれている韓国
――まとめます。
今回の数字は「直ちに財政危機を示す数字」ではありません。
しかし、「今後に高齢化が急速に進展する前の段階で(もう始まっていますけれども)、すでに公共部門がこれだけの赤字を出し、その赤字を相殺している社会保障基金の黒字まで縮小している」という点には、かなり強い警戒が必要です。
そして、ここが重要です。
2026年は半導体輸出などによって成長率が回復し、OECDも実質GDP成長率を「2.6%」と見込んでいます。
景気・税収環境が改善している今の時期に公共部門収支をどこまで立て直せるのかが、いわば「試金石」になります。
好況時にも赤字構造を改善できないのなら、高齢化がさらに進んだ時にどうするんだ?――だからです。まあ、総じて言えば「お手並拝見」であり「知らんぞー」です。
(吉田ハンチング@dcp)





