韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領(当時)が「日本海に大規模ガス田が開発できる可能性がある」――と発表して大注目を浴びたことがあります。

↑2024年06月03日、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領自らが発表の場に立ち、140億バレル埋蔵の可能性があるとぶち上げました。
この発表後、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が2024年の12月03日に非常戒厳を宣布し、この騒動で韓国全体は騒然となりました。
しかし、Money1でもご紹介したとおり、(尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が非常戒厳の結果でドタバタ不在であるにもかかわらず)「掘ってみにゃ分からん」というわけで、「大王クジラ」エリアにおいて2024年12月20日から試掘を開始。

↑試掘を担当したノルウェー企業『Seadrill Limited(シードリル)』のドリルシップ「ウェスト・カペラ号」。ちなみにこの船は『サムスン重工業』製で在庫となっていたという傑作な過去があります。
――試掘してみた結果、産業通商資源部が「可能性なし」と公表する結果となりました。

尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領を引きずり下ろした李在明(イ・ジェミョン)政権になってからは、日本海ガス田開発計画には予算がつかず、結局「140億バレル」は幻のママで終わったのです。
今回は、ここからが本題です。監査院の調査結果が出たのです。
2026年09月16日、監査院が「『東海(原文ママ:引用者注)深海ガス田事業関連の公益監査請求』主要監査結果」を公表しました。冒頭部分だけを以下に日本語訳します。
面倒くさい方は、飛ばしていただいても大丈夫です。
「東海(原文ママ:引用者注)深海ガス田事業関連の公益監査請求」主要監査結果
「『国家契約法』に違反して指名競争入札および技術評価を不当に実施したこと、業務委託結果に対する十分な検証を行わないまま性急に掘削を推進したことなどについて改善を要求」
Ⅰ.監査実施の概要
□産業部長官(請求人)は、2025年10月23日、「東海深海ガス田事業」の進行に関連し、有望性評価の業務委託先の選定過程および基準、掘削事業を推進した根拠、決定および発表過程などの事業推進の経緯等について、公益監査を請求
○監査院は、公益監査請求事項を、
❶第1・2次有望性評価の業務委託先の選定過程および基準
❷掘削事業を推進した根拠、決定および発表過程などの事業推進の経緯
❸韓国石油公社の担当チームおよび役員に対する業績評価
❹担当処長の本部長への昇進
❺韓国地質資源研究院による東海探査掘削関連の地震安全性検討研究が中止された経緯――など、5項目に分けて監査を実施する一方、
⇒ 政策決定の当否ではなく、客観的な経緯・事実関係の確認、および業務委託先の選定など、事業執行過程の適正性に重点を置いて監査を実施
今回の監査院の報告書を読むと、「大王クジラ(エリア)では有望なガス田が開発できるかもしれない」という発表には「何の科学的根拠もなかった」とは認定していません。
まず重要なのはこの点です。
『韓国石油公社』は日本海の深海について有望性評価を行い、国内外専門家の助言などを経て「大王クジラ」を含む7つの有望構造を抽出しました。
大王クジラについて算出された地質学的成功確率は19.1%でした。
監査報告書は、この有望構造そのものを「捏造」「虚偽」とは認定していません。
さらに、海外の石油開発企業によるクロスチェックでは、『石油公社』と調査会社『Act-Geo』の評価について、
「業界の標準的な基準によって実施されており、評価の質も優秀」
との意見が示されています。
ただし……です。
「最大140億バレルは非常に楽観的な数字だった」と監査院はかなり踏み込んで評価しています。
尹錫悦(ユン・ソギョル)前大統領が2024年06月03日の国政ブリーフィングで強調した「最大140億バレル」は、7つの有望構造それぞれについて、最も楽観的なP10の資源量を単純に全部足した数字だったことが分かりました。
P10というのは、「実際の回収期待量がその評価量以上になる確率が少なくとも10%」という、いわば楽観的な推計です。
しかも7構造それぞれの地質学的成功確率は7.1~21.2%。監査院はわざわざ7つ全部が成功する確率を計算し、「0.000218%」と記載しています。
当然ですが、監査院は「140億バレルという資源が存在すると確認されていた」とは全く認定していません。140億バレルとは、未発見資源について極めて楽観的な仮定を重ねた最大推計値だったことを明確にしています。
「まあそうでしょうね」という結論になっていますが、尹錫悦(ユン・ソギョル)前大統領は拙速に発表してしまったわけです。
また調査会社『Act-Geo』社が選定されたことについて、監査院は、
指名競争入札の要件について検討が不十分だったこと、評価基準を公開しなかったこと、技術評価を不当に処理したことなどにより、国家契約法などの関係規定に違反した
――と認定しています。
最も重い指摘は「十分な検証をしないまま掘削へ進んだ」こと――です。
監査院の「監査結果総括」には、はっきり、
『石油公社』は、有望性評価業務(第1次)および国内外専門家の助言などを経て7つの有望構造を導出した後、探査資源量が最も多い大王クジラ構造を掘削したが、業務結果に対する十分な検証なしに掘削を推進し、理事会の審議・議決なしに掘削船の用船業務を発注するなど、掘削推進過程に問題があったことが確認された
――とあります。
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権の肯定評価は、当時20%台まで下落していましたから、焦っていたのでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)






