先に、韓国政府と『韓国電力公社』(以下『韓国電力』と表記)が、『サムスン電子』と『SKハイニックス』に対して「5年分の電気料金を前払いしろ」と要求した――という件をご紹介しました。
まず、2026年09月03日の時点で出ていた情報をまとめます。
『韓国電力』が求めている規模は、
『サムスン電子』:20兆ウォン
『SKハイニックス』:5兆ウォン
小計:25兆ウォン
――で「2027~2031年の5年間分に相当する電気料金」です。
2025年の実績では、年間『サムスン電子』が約4兆1,000億ウォン、『SKハイニックス』が約9,000億ウォンの電気料金を支払っており、これを基準に5年分を算定したものです。
報道された『韓国電力』の内部案では――両社が約12カ月かけて月2兆ウォン程度ずつ前払いし、その前受金から毎月の実際の電気料金を差し引く仕組み――でした。
未消化の残高には利息を付け、現金ではなく半年ごとに電気料金から割り引く形で利息相当額を還元する案です。金利については韓国国債2年物+0.15%ポイント程度を検討――となっていました。
重要なのは「なぜ前払いさせるのか」です。
送電網建設の資金調達のためです。
『韓国電力』は先払いされた25兆ウォンを、主として龍仁半導体クラスター、湖南半導体クラスターなどへの送・変電網整備に投入する構想としました。
半導体工場とAIデータセンターの電力需要が急増する一方、『韓国電力』は2026年06月末時点で「総負債:210.7兆億ウォン」を抱えており、この利払いだけで「1日:約115億ウォン」に達します。
要はお金がないのです。
さらにマズイことに、資金調達のための『韓国電力』が発行できる社債(韓電債)の発行限度を特例的に緩和している措置が、2027年末に終了します。
この特例措置というのは、ずいぶん前にMoney1でもご紹介したことがありますが、この「韓電債の発行限度を緩める特例」は、2022年末の『韓国電力』の資金繰り危機を受けて設けられたものです。
もともと『韓国電力』が発行できる社債の総額は「『資本金+積立金』の2倍まで」※――という規定だったのですが、これを「5倍、緊急時には6倍」という規定に変更しました。
ただし、2027年までの時限立法です(2022年12月28日に国会通過/施行日は12月31日 ⇒ つまり2027年12月31日で切れます)。
※この規定は「韓国電力公社法第16条」による。
現在も『韓国電力』は経営が危なくなっていますのでお金がなく、韓国大統領に成りおおせた李在明(イ・ジェミョン)さんの政権が「半導体ファブを新造する」などというビッグな企画をぶち上げたところで、そのための電力を強化することもできないのです。
要するに――、
『韓国電力』には送電網を造る必要がある。しかし210兆ウォンを超える負債を抱えており、これ以上韓電債を大量発行するのも厳しい。
そこで、将来『サムスン電子』と『SKハイニックス』から受け取るはずの電気料金を約25兆ウォン先に受け取り、それを建設資金に回そう。
――という話なのです。よくまあこんな虫のいい話を思いつくものですが、本件について『サムスン電子』と『SKハイニックス』は一蹴した――という報道が出ました。
『サムスン電子』『SKハイニックス』は一蹴した!
韓国メディア『聯合ニュース』の記事から一部を以下に引きます。
14日、業界によると、『サムスン電子』と『SKハイニックス』は、『韓国電力』の提案について社内で検討した結果、受け入れるのは難しいと判断し、このような決定を韓電に伝えたという。
半導体業界は昨年下半期から過去最大の好況を迎えているものの、このような業績が5年間にわたって続くことを所与のものとして、費用を前倒しで支出するには負担が大きいという意味だと解釈される。
莫大な電気料金を一度に支払うことが、中長期的な経営戦略上の負担として作用する可能性があるためだ。
電気料金の前払いが、龍仁および湖南半導体クラスターの電力インフラ構築に役立つ可能性があるとの分析もあったが、ひとまず経営の不確実性を最小化する方を選択したものと分析される。
(後略)
韓国政府も「半導体企業の異常な業績がこれからも続く」とあて込んで予算を組んでいます(ばかすぎる話で長くなるので別記事にします)。
しかし、『サムスン電子』『SKハイニックス』の経営陣からすれば、「いつまでも続くと思うな」と考えるわけで、「先払いしろ」という要求を拒否するのも当然です。
(吉田ハンチング@dcp)





