韓国の金融当局は基準金利を上昇させ続けており、高金利地獄に国民が苦しんでいます。
高金利地獄の一方で……
基準金利を上げるのは、インフレ退治で金利を上げているアメリカ合衆国に追随するため、また韓国自身も尋常ではないインフレに見舞われているためです。
合衆国に追随しないと深刻な資金流出に見舞われる可能性がありますので致し方ありません。また、自国のインフレ退治もあるので、こちらんも仕方ないですね。
当然の措置として基準金利を上げているだけなのですが、基準金利が上がると融資金利などが追随して上がります。金融機関の調達金利が上がるので、そりゃ上げないと仕方ありません。
しかし、借りる側からすると困ったことになります。住宅ローンで変動金利を選択している人は利払いが増加、所得が脆弱なため生活費を借金に依存している人はお金が借りられない、借金を返せないなどの事態に陥ってしまいます。
そもそも韓国は所得脆弱な人が多く、このまま金利が上がると耐えきれずデフォルトする人が増加。経済もズンと沈んでしまいます。
韓国政府としては、金利を上げてインフレ率を下げないといけませんが、流動性が下がって国民がドボンというわけにはいきません。
金利を上げる緊縮方向である一方で、所得脆弱層が死なないようにお金を回さなければならないのです。つまり緩和も求められているのです。
さあ、どうしましょう――です。
だんだん支離滅裂になってきた
中国共産党のように「インフレ? そんなもんは知らん!」「今は不動産業界を飛ばすわけにはいかないんだよ!」とお金じゃぶじゃぶをあくまで続ける――なんてことができればいいのですが――韓国には無理です。
一応、民主主義国であり、自由主義陣営にまだいますから。
金融緊縮方向で利上げをしながらも、お金は回さないといけない――という「どーすんのコレ」な局面ですので、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権の発言や施策がだんだん支離滅裂になってきました。
例えば、(前文在寅政権のせいですが)『韓国電力公社』が財政難のため03月には流動性危機を迎えるといわれています。
これに対して、毅然と「電気代を上げなければならない!」と言っていたはずなのに、最近尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は「電気代、ガス代などの公共料金を上げるのは望ましくない」などと発言してしまいました。間髪入れずに『韓国銀行』の李昌洋(イ・チャンヤン)総裁が「上げないと駄目だ」という旨の発言をしました。この幕間狂言など「どーすんのコレ」状態になっている証拠です。
お金を回さないと所得脆弱層が死ぬ――の件に戻ります。
金融監督院が面白い行動に出ています。
韓国メディア『毎日経済』の記事から一部を引用すると、こんな具合です。
(前略)
17日、金融圏によると、金融監督院は保険会社とカード会社に対するローン利子、成果給、配当などに対する現況把握に乗り出した。金融監督院は、カード会社が昨年の資金市場不安当時、顧客の利用限度額を下げ、カードローンなどの信用融資金利は10%台中後半まで引き上げた点に注目している。
最近、資金調達市場が安定化しただけに、カード会社が自律的にカードローン、現金サービス、リボルビングなど融資金利を下げるよう誘導するということだ。
金融監督院はカード会社と保険会社が巨額の成果給を支給し、配当も増やしていることに対しても制動をかける方針だ。
利益をなるべく内部留保にして損失の吸収能力を拡充しなければならないという判断からだ。
(後略)
何をやっているかというと、カードローンの金利を上げるな、利用限度額を下げるな、という圧迫です。国民が借金しやすいように金融会社にプレッシャーをかけているのです。
借りやすい条件になるようにしてお金を回そうという魂胆です。
金利が上がったので、カード会社と保険会社もお金がもうかったのですが、これに対しても「巨額の成果給を支給し、配当も増やしていることに対しても制動をかける」としています。
「もうけやがってけしからん」というわけで、これなど民業圧迫というか、資本主義の否定ではないでしょうか。「配当出すな」というのですよ。
「内部留保を積んで損失に備えるべき」もすごいです。「○%の現金性資産を積む」というルールを守っていれば文句をいわれる筋合いはないはずですが、それも許さない模様。
要は損失に備えてお金を積んで安全性を保ち、その分を貸し出せ、です。
まあ確かに流動性は高まるかもしれませんが、多重債務者が増えるなどのリスクもあるはずです。ただでさえ高利なのですから。
そもそも、基準金利がどんどん上がっているのに、金融機関に貸し出し金利を上げるな!というのが無茶苦茶です。韓国の金融当局は「どーすんのコレ」で右往左往しているように見えますが、いかがでしょうか。
(柏ケミカル@dcp)