今年も韓国にこのシーズンがやってきました。
最低賃金(時給)を巡る攻防です。
文在寅の妄想で雇用が減少した!
文在寅大統領は「所得主導経済」という妄想に突き動かされ、就任した翌年、2018年に最低賃金を一気に16.4%も上げました。
文在寅さんの公約は「最低賃金を1万ウォンに上げる」でしたので、それに着手したのですが無残な失敗に終わりました。
最低賃金を払えない雇用主が続出し、雇用が減少するという事態に陥ったのです。韓国経済の現実を見ない左派・進歩系らしい話です。
返って雇用が減少したという現実を突きつけられてからは、卑怯にも「最低賃金1万ウォン」を口にしなくなり、統計データを改ざんしてごまかすという逃げまで打ちました。文在寅大統領はまさに最低の名がふさわしい大統領だったといえるでしょう。
文在寅大統領の失策の余波は大きく、その後もじわじわと最低賃金は上がり続けています。
そして、今年は2024年度の最低賃金を決めなければならないのですが、労働者側からは、なんと「1万2,000ウォン」という破格の要求案が出ています。
最低賃金の推移は……
以下は、2014年~2024年の最低賃金の推移です(2024年は労働者側からの要求額を入れています)。
恐らく「1万2,000ウォン」は不可能ですが、「1万ウォン」になるかどうかは見ものです。
対前年比での伸び率が「3.95%」以上であれば、1万ウォンを超えることになります。また、要求どおり1万2,000ウォンの場合、対前年比での伸び率は「24.7%」に達します。
2023年04月04日、『全国民主労働組合総連盟』(民主労総)と『韓国労働組合総連盟』(KCTU)は、共同記者会見を開き、「物価上昇率にも及ばない賃金引き上げで実質賃金が下落しており、最低賃金がそのまま自分の賃金となる低賃金労働者には耐え難い痛みを与えている」とアピールを行いました。
また、「今回の労働界の最低賃金時給1万2,000ウォンは、物価暴騰と実質賃金引き下げで苦しんでいる労働者世帯の生存のための切実な要求」と述べています。
労働者側の主張の「実質賃金は低下している」というのは正しいです。Money1でも先にご紹介したとおり、『韓国銀行』の資料もそれを裏付けています。インフレ率が上昇しているからです。物の価値が上がって、相対的にお金の価値が下がっているのです。
ただ、1万2,000ウォンは法外な要求だといえます。インフレ率は対前年比で24.7%も上昇しているわけではありません。むしろインフレ率はやっと下がってきたという状況ですので。『韓国銀行』は2023年のインフレ率は3%台になると見ています。
この労働者側の要求に対して、雇用側は当然「できるだけ賃金上昇を抑えたい」という立場です。04月12日、『小商工人連合会』は記者会見を開き「限界状況に追い込まれた小商公人の支払能力を勘案して来年度最低賃金は凍結しなければならない」と主張しました。
双方の舌戦はすでに始まっているのです。
最低賃金が決まる仕組みとは?
毎年のことですが、最低賃金は『最低賃金委員会』で決定されます。
この委員会は、
・労働者側の委員:9人
・公益委員:9人
・特別委員:3人
(企画財政部・雇用労働部・中小ベンチャー企業部の局長級公務員)
小計:30人
で構成されています。
ただし、政府側の特別委員には議決権がありません。多数決を取る場合には、特別委員を除く27人の投票で決します。
来る2023年04月18日、第1回の全体会議が開催されて、議論の火蓋が切られます。
毎年怒号が飛び交い、組合員が怒って退席――といった事態になるのですが、今年もすでに法外な要求が出出ていますから揉めること必至です。
審議要請を受けた日から90日後の06月末まで2024年度最低賃金を議決し、雇用労働部長官に提出しなければなりません。雇用部は異議申し立て手続きを経た後、08月05日までに最終決定して告示することになります。
果たして韓国の最低賃金がいくらになるのか、ぜひご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)