韓国には「伝貰(チョンセ)チャーター」という独自の住宅賃借システムがあります。
簡単にいえば、保証金をべらぼうに積む代わりに月々の賃借料が無料になるというものです。この保証金は退去時に全額戻ってきます。
大家さんはどこでもうけるかというと、最初にどかっと入ってくるお金を運用するのです。銀行金利が高かった時代には、銀行に放り込んでおくだけで年間10%以上の利回りだったりしたのです。しかし、韓国の銀行金利は下げていますので、チョンセで支払う金額も上昇しています。
で、時々あるのが大家さんが店子に「チョンセが返せない」というトラブル。
1LDKでもチョンセが「1,000万円」など平気でありますので、返ってこないなんて事態になると泣くに泣けません。
2021年には、韓国でチョンセが返済できないという金額が5,790億ウォン(約555.8億円)に達したというのです。
一気にお金を積まなければいけない弊害
『住宅都市保証公社』が明らかにしたところによれば、2021年の返金事故は以下のようになっています。
貸切保証金返還保証保険(貸切返済保証)事故:2,799件
事故総額:5,790億ウォン(約555.8億円)⇒データ引用元:『住宅都市保証公社』公式サイト
「555.8億円」というと相当な金額です。このうち、政府機関である『住宅都市保証公社』が代位弁済(大家さんに代わって店子に支払い)を行った金額は、なんと「5,034億ウォン」(約483.3億円)。
つまり、保証公社が「86.9%」を大家さんに代わって支払ったのです(件数でいうと2,473件/88.4%)。
日本のように、保証金が2カ月などであれば保証金が返ってこないという被害もそこまでは膨らまないでしょう。最初にドカンと資金を積まなければならないチョンセシステムの弊害といえます。
ちなみに、2021年に記録した「5,790億ウォン」は、2015年に統計を取り始めて以来で最大です。
韓国では不動産価格が異常に高騰しています。当然、これによってチョンセの金額も上昇しました。返ってこない金額が膨らむのも当然のことですが、それにしても「555.8億円」というのは非常に大きいです。
公社が補てんしているので、これは政府が出しているのと同じです。韓国政府はこういうお金でも出費が増えているのです。
(吉田ハンチング@dcp)