元人権派弁護士の文在寅大統領らしいといえるかもしれません。
2021年11月25日、韓国の文在寅大統領は「国家人権委員会20周年記念式典」に出席し、
「尊敬する国民の皆さん、国家人権委員会設立20周年を迎えました。
今は国家に独立した人権委員会があることがあまりにも当然のことと考えられていますが、多くの人権団体と人権運動家たちの熾烈な努力の上で金大中大統領様の決断で成し遂げた大切な結実でした」
「20年前、私たちは人権や差別禁止法に関する基本法を作ることができず、国家人権委員会法という機構法の中に人権規範を盛り込むのが限界だった」
「人権先進国になるために必ず超えなければならない課題」
⇒参照・引用元:『韓国 大統領府』公式サイト「私たちは自由と平等尊厳と権利のために生き生きと目覚めなければなりません「国家人権委員会設立20周年記念式」
と発言しました。
この「人権や差別禁止法に関する基本法」は、韓国では「差別禁止法」あるいは「反差別法」と呼ばれる法案を指しています。
文大統領の言葉にもあるように、そもそもは金大中(キム・デジュン)大統領の時代に端を発します。実際に政府案が発議されたのは盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代の2007年。
今回20周年を迎えた「国家人権委員会」の2006年の勧告によります。
しかし、2007年の法案は2008年17代国会の終了に伴い廃案に。以降、2013年までに6回発議されたのですが、全て成立しませんでした。
2008年:10人の議員から発議
2011年:11人の議員から発議/10人の議員から発議
2012年:10人の議員から発議
2013年:51人の議員から発議/15人の議員から発議
2020年:10人の議員から発議
2021年:24人の議員から発議/13人の議員から発議
文在寅政権になってからは3回発議されましたが、まだ成立していません。このように「差別禁止法」は盧武鉉大統領時代から現在まで、いわば放置されてきました。
理由は、「言論・表現の自由を制限する」可能性があるからです。
また、韓国の場合にはキリスト教信者が多いため「宗教の自由を制限する可能性があるから反対」という意見も根強いのです。極端な例では「差別禁止法は同性愛を助長するから反対」という意見があるほどです。
2013年から7年もあいて、文大統領になってから同法案が発議された理由は簡単で、また左派政権になったからです。何度もご紹介したとおり、盧武鉉さんと文在寅さんは釜山で共同弁護士事務所を開いていたことがあります。
それにしてもなぜまた、今になって文大統領が差別禁止法の制定に熱心になっているのでしょうか。
理由は幾つか考えられますが、以下のようなものはいかがでしょうか。
②文在寅政権のレガシーとしたい
③盧大統領時代に成立できなかったので敵討ち
④退任後の自分への批判を封じたい
現在熱心に取り組んでいる「朝鮮戦争の終戦宣言を出す」は、アメリカ合衆国のノリ次第※。北京冬季五輪で金正恩総書記と会談を行うという野望は、「自由主義陣営国が(少なくとも)外交ボイコットを行うという方向になりつつあるので、どうも望み薄です(それでも文大統領は北京に行くかもしれませんが)。
このまま任期が終了すると、本当に文大統領のレガシーは「マイナスの評価」しか残らない可能性があります。実現可能性があるものとして、同法の可決成立を目指している――というのはうがち過ぎでしょうか。
盟友であった盧武鉉大統領の遺志を果たすことにもなりますし。
もちろん成立するかどうかは立法府次第ですので、文大統領が発破をかけてもその行方は不透明ですが。
(吉田ハンチング@dcp)