2023年03月15日に韓国政府は、半導体戦争を勝ち抜くために、京畿道龍仁市に710万平方メートル規模の「システム半導体特化産業団地」(クラスターと呼ぶ)を造成する、という計画を公表しました。
このビッグな企画は、第20代大統領室が出したプレスリリースによると「国家先端産業育成戦略」と「国家先端産業ベルト造成計画」となっています。
⇒参照・引用元:『韓国 第20代大統領室』公式サイト「尹錫悦大統領、第14次緊急経済民生会の主宰および関連事項について報道官書面ブリーフィング」
上掲のように「先端産業超強大国」と大書されていたのですが、これが「チャンチャン! ありがとうございましたー」になるかもしれません。
会議で致命的な不備が露呈!
というのは、2023年06月12日、建設場所となる京畿道の庁舎で地方政府、『サムスン電子』『韓国土地住宅公社』(略称「LH」)などが介して会議を行ったのですが――水不足・電力不足の実態が明らかになったのです。
ご案内のとおり、半導体産業は大量の水を消費します。そのため、しばしば半導体ファウンドリーでは、水によるトラブルが起こります。台湾での渇水、アメリカ合衆国・テキサス州での凍結などは記憶に新しいところですが、大量の水資源がなければ半導体産業をドライブできません。
で、今回の会議(「京畿道半導体支援タスクフォース」第2次会議)で問題になったのは「どこから水を持ってくるよ」です。
会議では「八堂ダムから持ってくるしかないのでは……」と検討されたのですが、「これ以上八堂ダムから取水する」のは無理なのです。
↑赤いピンが立っているのが「八堂ダム」の場所。漢江の水系に属し、首都ソウルのすぐ近くにあります/Photo(C)GoogleMap
↑拡大したところ。「八堂ダム」が首都ソウルにほど近いのが分かります/Photo(C)GoogleMap
尹政権がぶち上げた「龍仁先端システム半導体クラスター」が1日に必要とする工業用水は「65万トン」と試算されました。
『SKハイニックス』が入居している「龍仁半導体クラスター」が1日に消費する水量が「27万5,000トン」ですから、このビッグな企画はその約2.4倍の水を使うことになるのです。
水がないんだってば!
ところが、Money1でも先に少しだけご紹介しましたが、現状でも水量は十分ではありません。
『SKハイニックス』も水量が足らず、八堂ダムからではなく、ヨジュ市南漢江ヨジュボから総延長36.9kmの取水管を通してクラスターに水を供給すうように変更したほどです。この工事は2026年07月にならないと完成しないと見られています※。
※取水計画が京畿道龍仁市によって承認されたのが2022年11月のこと。それまでに環境団体などとの折衝があって計画は約1年6カ月遅延しました。
つまり、新たに65万トンもの水を「新設するクラスター」に供給するなんて話は土台無理なのです。
韓国メディアによると、会議に出席した韓国政府・環境部の関係者は「八堂ダム自体に余裕がないため、水の供給が容易ではない状況。下水の再利用、他の水源の確保などの代替案を設け、供給に問題がないようにする」と話したとのこと。
そんなもので間に合うかどうかです。半導体産業に必要なのは純水、しかも超がつく純水です。「また日本企業の出番かなぁ」という話になりますし、そもそも計画が無茶なのではないのか?です。
(吉田ハンチング@dcp)