2023年07月04日、『IAEA』(国際原子力機関)のラファエル・マリアーノ・グロッシ事務局長は訪日し、岸田文雄首相に正式に報告書を提出。
この報告書では「処理水の放出が人々と環境に及ぼす放射線の影響は無視できる程度である」としています。
※以下は『IAEA』のプレスリリース(スクリーンショット)
また、「『IAEA』は引き続き国際社会に透明性を提供し、全ての関係者が検証された事実と科学に頼ってプロセス全体を通じてこの問題について理解できるようにする」とグロッシ事務局長は述べました。
日本の経済産業省では以下のように、公表された報告書の結論をまとめています。
1.IAEA包括報告書の要旨(Executive Summary)においては、以下の結論が述べられています。
1)包括的な評価に基づき、IAEAは、ALPS処理水の海洋放出へのアプローチ、並びに東電、原子力規制委員会及び日本政府による関係する活動は関連する国際的な安全基準に整合的であると結論付けた。
2)包括的な評価に基づき、IAEAは、東電が現在計画しているALPS処理水の海洋放出が人及び環境に与える放射線の影響は無視できるものと結論付けた。
2.また、IAEAは、同要旨の中で、放出前、放出中及び放出後もALPS処理水の放出に関し日本に関与することにコミットし、追加的レビュー及びモニタリングが継続予定であることは、国際社会に追加的な透明性及び安心を提供するものであると述べています。
3.日本政府は、同報告書の内容を詳細に確認した上で、透明性をもって国内外に情報発信してまいります。また、今後とも、IAEAに対する必要な情報共有を継続するとともに、ALPS処理水の海洋放出について、国際社会の一層の理解を醸成していくことに努めます。
[参考] ALPS処理水
ALPS(多核種除去設備(Advanced Liquid Processing System))等により、トリチウム以外の放射性物質について安全に関する規制基準値を確実に下回るまで浄化した水。さらにALPS処理水は、その後十分に希釈され、トリチウムを含む全ての放射性物質について安全に関する規制基準値を大幅に下回るレベルにした上で、海洋放出されることが想定されている。⇒参照・引用元:『日本国 経済産業省』公式サイト「IAEAが東京電力福島第一原発におけるALPS処理水の安全性レビューに関する包括報告書を公表しました」
この報告書に対して、反日国家である韓国と中国の反応はどうかといいますと……。
韓国については保守よりの尹錫悦(ユン・ソギョル)政権ということもあり、特に反発などはしていません。ただし、国民の不安の声が大きいとして福島産の水産物の輸入は止めたままを維持する、という非科学的な決定をしています。
また、極左メディア『ハンギョレ』は「日本の汚染水放出に『お墨付き』与えたIAEA…韓国政府は沈黙」という記事を出しています。『IAEA』の報告書について文句がつけられなかったので、韓国政府はなぜ黙っているんだという批判を繰り出しているのです。
科学的に反論できないのであれば黙っているしかないでしょうに。
中国については引っ込みがつかない面もあって、「この報告書では日本の正当性と合法性を証明できない」と意味不明なことを述べています。
中国の態度はダブルスタンダードだ
2023年07月04日、中国外交部の定例記者ブリーフィングで、『NHK』記者が中国の態度について「ダブルスタンダードではないか」と質問を投げました。以下に引用します。
『NHK(日本放送協会)』記者:
日本の福島第一原子力発電所の汚染水の海洋放出計画についての補足質問です。先ほどのお答えは、もし『国際原子力機関』(IAEA)の報告書が日本の海洋放出を支持するものであれば、中国はこの報告書を受け入れないということですよね?
もしそうなら、中国は国連憲章の目的と原則に基づく国際関係の基本規範の遵守を常に主張しているが、科学的根拠に基づく『IAEA』のアプローチは受け入れていないことになります。 これは「ダブルスタンダード」ではないのでしょうか?
毛寧:
『IAEA』の報告書はまだ見ていません。先ほど申し上げたように、日本側は最初から『IAEA』の作業部会の権限を制限し、他の処分方法の評価を受け入れていません。
つまり、『IAEA』は、海からの排水という選択肢しか評価することを許されなかったのです。
このような状況下では、『IAEA』の報告書は、日本側の海洋排出を正当化・正当化するものではないし、日本側の道義的責任や国際法上の義務を免除するものでもありません。
これはいわゆる「ダブルスタンダード」とは何の関係もありません。『IAEA』は、核汚染水(原文ママ:引用者注)の海洋放出を是認する報告書ではなく、科学と歴史の検証に耐えうる報告書を出すべきです。
国連はじめ国際機関の定めるところに従うというのが中国の大義名分です。それに従っているから中国は国際秩序の遵守者であるというのが主張です。
ところが、中国は『IAEA』の報告書には従えないとも強弁しており、これは明らかにダブルスタンダードです。
また、日本が海洋放出についてしか『IAEA』に判断させなかったなどと強弁していますが、これは完全に間違った認識です。
汚染水を処理する方法は大きく5つあります。
水蒸気放出
電気分解水素放出
地下埋設
地層注入
です。
『IAEA』は報告書で「5つの方法のうち海洋放出と水蒸気放出が最も実現可能性が高い」と述べています。
残りは、技術や時間的な面では容易ではありません。水蒸気に放出する方法は、大気中に散在した放射性物質を追跡することが困難という欠点があります。また、大気中の放射性物質が雨や雪で陸地に落ちるでしょう。
このため、日本の選択肢は事実上海洋放流だけです。
選択肢が他にないということは、日本が『IAEA』と4年以上論議してきた上での結論です。中国の報道官が今考えたようなことを安易に述べてほしくはありません。恐らく知らないか、知らないふりをしているだけです。
つまり、毛寧報道官は詭弁で逃げました。
中国の主張は日本を貶めたいための弁に過ぎません。また、中国は自分の気に入らない「国際機関の提言」には従わないことがこれで証明されました。
(吉田ハンチング@dcp)