韓国企業の業績発表のシーズンが継続しています。2023年08月10日、『CJ ENM』が2023年第2四半期の業績を公表し、これが業界に衝撃を与えました。
『CJ ENM』は韓国最大のコンテンツ企業として知られ、エンターテイメント産業の雄です。
「グローバルNo.1ライフスタイルクリエイター」を標榜し、映画製作、映画配給、ケーブルテレビ局の運営から番組制作などまで手広く手掛けています。
↑『Netflix』で放映されて話題となった『愛の不時着』。
例えば、日本でも有名なドラマ『愛の不時着』は『CJ ENM』グループ会社の制作。映画『パラサイト 半地下の家族』※は『CJ ENM』が投資・配給を行いました。
↑日本でも話題になった『パラサイト』(公式サイトのスクリーンショット)
※カンヌ国際映画祭パルム・ドール、アメリカ合衆国・アカデミー賞で作品賞を含む4部門を受賞。
韓国エンターテイメント業界の雄である『CJ ENM』の業績が非常に悪いものになったのです。以下をご覧ください。
2023年第2四半期
総売上:1兆488億7,800万ウォン(-12.0%)
営業利益:-303億6,300万ウォン(赤字転落)
当期純利益:-1,232億2,500万ウォン(赤字持続)2023年累計
総売上:1兆9,978億6,400万ウォン(-7.1%)
営業利益:-807億700万ウォン(赤字転落)
当期純利益:-2,121億6,500万ウォン(赤字持続)
第2四半期の営業利益は「-303億6,300万ウォン」で対前年同期比で赤字に転落。累計ではこちらも赤字に転落して「-807億700万ウォン」です。
これはかなり危険な状況と見られており、例えば韓国メディア『ヘラルド経済』は以下のように書いています。
(前略)『パラサイト』など数々のヒット作を生み、コンテンツ時代に大きな注目を浴びた『CJ ENM』が、またもや市場の予想を上回る衝撃的な赤字を出した。
公開した映画が相次いで大敗し、第2四半期だけで300億ウォンを超える赤字を記録した。
(中略)
市場でも衝撃的に受け止めている。赤字幅が予想よりはるかに大きいと懸念の声が高まっているのだ。
先に証券会社は『CJ ENM』の第2四半期の赤字幅を100億ウォン台と予想し、14万ウォン台の目標株価を8~9万ウォン台に大幅に下方修正した。
しかし、実際の赤字幅はこれをはるかに大きかった。
業界関係者は「景気低迷による広告収入の悪化、OTTの登場など、『CJ ENM』の危機には、複合的な要因が作用している。会社の誇りと呼ばれていた映画産業が不振の崖に陥ったことがより致命的だ」と話した。
下半期の展望も暗い。
赤字が続くと予想される。最悪の状況を迎えているが、時間が解決してくれるわけではない。
最近、『CJ ENM』のコンテンツについて、競合他社に比べて「見るべきものがない」「面白くない」という評価が多い。
コンテンツ競争力の低下など、根本的な問題を解決しなければならないという指摘だ。
⇒参照・引用元:『ヘラルド経済』「“아! 이럴줄은” 충격의 300억 적자 사태 발생…환호 받던 영화 ‘명가’ 몰락 위기」
「見るべきものがない」「面白くない」とケチョンケチョンに言われていますが、コンテンツ産業にとってはつらい指摘です。
下半期の見通しも暗いというのは、夏公開の超大作『ザ・ムーン』がすでにずっこけたことが判明しているからです。
上掲は08月02日に公開された『ザ・ムーン』のPVですが、月を舞台にしたSFアクションで280億ウォンも突っ込まれた超大作です。
ところが、公開7日目で累積観客動員は41万人。同日に公開した『非公式作戦』は同じ期間に81万人を動員しています。
『ザ・ムーン』の損益分岐点は約600万人と予想されており、とてもではありませんが届きません。
ですので『ヘラルド経済』は「アカンこの先も赤字だ」と悲観的に書いているのです。
今回の業績発表に先立って2023年06月21日には「600億ウォン」を年利4.60%で借りるという公示を出しています(以下が『DART』に出た公示)。
↑『CJ ENM』の短期借入金の公示。系列会社から600億ウォンを年利4.60%で借ります。満期は半年後の2023年12月29日。
どうも、韓国最大のコンテンツ企業が危なくなっているようです。
(吉田ハンチング@dcp)