「信用取引」では資金を借りたり、株式を借りて取り引きを行いますので、貸料が発生します。信用買い(買い玉を建てる)の場合には「買方金利」が取られ、信用売り(売り玉を建てる)場合には「貸株料」が取られます。前回は「買方金利のリスク」についてご紹介しましたが、今回は「貸株料のリスク」についてご紹介します。
■「空売」をする場合には「貸株料」が発生する!
「この銘柄の株価は下がる」と思ったら「空売」を仕掛けたいものです。先の記事でご紹介しましたが、「高いときに売って、安いときに買う」という通常とは逆の取り引きを行って利益を出すのが空売の手法です。
通常は持っていなければ株式を売ることはできませんが、空売では持ってない株式を証券会社・証券取引所から借りてきて、それを売るのです。証券会社・証券取引所から見れば「貸株」ですね。貸株を利用すると、証券会社・証券取引所にその利用料を支払わなければなりません。これが「貸株料」です。
この貸株料は証券会社によって異なっています(制度信用取引の場合は同じ)が、前回と同じく佐藤ボイラー(バカ)が使っている株ドットコム証券のものを再度見てみましょう。
■信用売りの「貸株料」
●制度信用取引の場合:1.15%
●一般信用取引・長期の場合:1.5%
●一般信用取引・売短(短期)の場合:3.9%
■「貸株料」の計算の実際
先の記事でご紹介したとおり、証券取引所が定めている「制度信用取引」と証券会社が独自に定めている「一般信用取引」では、返済までの期日、また上記のとおり貸株料の利率が異なっています。
どちらを選択するかはトレーダー次第なのですが、貸株料の計算の方法は基本同じですので、ここでは制度信用取引の場合を例とします。
サンプルは佐藤ボイラー(大バカ)がどの銘柄で空売を仕掛けているか白状しやがりませんのでモブキャスト(銘柄:3664/東証マザーズ)としました。
03月08日に遅行性のMACDではモブキャストに下げの気配が出ています。そこで「この銘柄で空売を仕掛けることにした」としましょう。
●03月09日(木)
1,082円 × 1,000株 = 108万2,000円
で、制度信用取引を用いて売り玉を建てました。ここから下がり、無事にこの銘柄が買えたら空売成功です。
幸いなことに、目論見どおり株価はこの日に大下落をします。
●03月09日(木)
始値:1,100円
高値:1,139円
安値:982円
終値:999円
という結果でした。その日のうちに、
1,010円 × 1,000株 = 101万円
で「買い」(これを返済をいいます)を行いました。
この場合の貸株料がいくらになるか計算してみましょう。
●制度信用取引の場合:1.15%
は、年利ですので1日の利率を計算してみます。
1.15% ÷ 365日 = 0.00315068493150685%
となります。1日当たりの貸株料の利率です。前回もご紹介しましたが、これが「日歩(ひぶ)」と呼ばれるものです。この日歩は、売り玉の約定金額に掛かります。つまり、03月09日の約定金額「108万2,000円」に日歩を掛けたものが、1日に掛かる貸株料になるのです。
108万2,000円 × 0.00315068493150685% = 34.0904109589041円
です。1円未満は切り上げというルールになっていますから「35円」が1日当たりの貸株料です。例えば、思惑どおり株価が下がらず、ずっとホールドしたままですと、
「35円 × 借りた日数」分だけ「貸株料」がかさんでいくのです。
前回の記事でも紹介しましたが、「借りた日数」は受け渡し日基準で計算されます。
今回の例では、03月09日(木)に売り玉を建てて約定されていますので。4営業日目は03月14日(火)になります。土日は休みですからね。また、その当日に買い(返済)も約定されていますので、こちらの受け渡し日も03月14日(木)です。
つまり、貸株の「借りた日数」は1日だけです。ですから「貸株料」は、
108万2,000円(売り約定金額) × 0.00315068493150685%(日歩) × 1(日) = 35円
となります。これに通常の手数料が加算されます。株ドットコム証券の場合、信用取引通常手数料の通常手数料は「100万円超~200万円以下:940円」としていますから、「940円 + 35円」で「975円」。これに消費税を掛けて「1,053円」が取られます。
●信用売り:1,082円 × 1,000株 = 108万2,000円
●信用買い:1,010円 × 1,000株 = 101万円
●取り引きにおける利益:7万2,000円
●手数料+貸株料(税込):1,053円
総利益:7万947円
となるはずです。「はずです」というのは、証券会社が設定している特別な割引などを計算していないからです。
信用売りを行う際には「貸株料のリスク」を十分に考慮する必要があります。今回の例のように、売りを建てすぐに返済できる場合はいいのですが、思惑どおりにいかない場合もあります。その際には、上記のとおり日々「貸株料」が積み上がって利益を食っていきます。空売を行う場合には、「貸株料が1日いくらになるのか」を計算してみて、そのリスクの量を見積もってから行うのが良いのではないでしょうか。
次回は、信用売買の際に注意しなければならない項目「逆日歩」についてご紹介します。佐藤ボイラー(巨バカ)や高橋モータース(超バカ)の記事がはさまらなければ、ですが。
(吉田ハンチング@dcp)