信用取引では、自分の持っている資金以上の取り引きを行うことができます。また自分の持っていない株式を売ることもできます。ただし、この特殊な取り引きにはリスクもあります。今回はそのリスクについてご紹介します。
「信用買い」「信用売り」どちらの場合でも、資金を借りたり、株を借りたりしますから、その資金、貸し株には手数料が取られます。信用買いの場合には「買方金利」、信用売りの場合には「貸株料」という手数料が、通常の取引手数料よりも余計に掛かるのです。
この「買方金利」「貸株料」がまずリスクになります。前回の記事で、株ドットコム証券の「制度信用取引」と「一般信用取引」の違いを表にしましたが、その中の「買方金利」と「貸株料」の部分だけピックアップしてみましょう。
■信用買いの「買方金利」
●制度信用取引の場合:2.98%
●一般信用取引の場合:3.6%
■信用売りの「貸株料」
●制度信用取引の場合:1.15%
●一般信用取引・長期の場合:1.5%
●一般信用取引・売短(短期)の場合:3.9%
⇒データ出典:『株ドットコム証券』公式サイト「信用取引(制度・一般) 取引ルール」
これらの金利。貸株料はいずれも「年利」です。ですので、1日当たりどのくらいの利率になるかは「365日」で割ることになります。
■「買方金利」の計算方法
まず買方金利の計算方法をご紹介しましょう。例えば、上記の株ドットコム証券の場合で制度信用取引を選択し、買い玉を建てた(株式を購入した)場合には、
2.98% ÷ 365日 = 0.00816438356164384%
ですから、1日当たり「0.00816438356164384%」の金利が取られることになります。これを「日歩(ひぶ)」と呼びます。
信用買いで買い玉を建てると、その約定金額にこの日歩が掛けられて、借りた日数分のお金を「金利」として支払わなければなりません。つまり、
買い玉の約定代金 × 日歩 × 借りた日数 = 金利
となります。気を付けなければいけないのは「借りた日数」の計算です。「借りた日数」は「受け渡し日」を基準として計算されます。例えば、「月曜日」に買い玉を建てたとします。この場合、(株式の)受け渡し日は4営業日目の「木曜日」になりますね。
で、翌日の火曜日にその建て玉が全部売れて約定したとします。この場合、(売り代金の)受け渡し日は4営業日目の「金曜日」になります。
すると、
月曜日に買い ⇒ 火曜日に売り
で、
木曜日に株式の受け渡し ⇒ 金曜日にお金の受け渡し
となり、受け渡し日基準では「2日」ですから、2日しかお金を借りていなかったとなり、上記の式でいう「借りた日数」は「2日」です。
ところが、建てた買い玉を売れたのが「水曜日」だったら、4営業日目は「翌週の月曜日」になります。ところが土日はお休みです。ですので、
木曜日に株の受け渡し ⇒ 翌週の月曜日にお金の受け渡し
となり、受け渡し基準では、木・金・土・日・月の「5日」が「借りた日数」になってしまうのです。
つまり同じ約定金額だったとしても、土日をまたぐとその分金利を余計に支払わないといけなくなってしまうわけです。
■実際の計算を見てみよう!
都合の良いことに、先日佐藤ボイラー(バカ)が「信用買い ⇒ 売り」の取り引きを行っていますので、その実例を基に計算てみましょう。
●03月07日(火)
平田機工(銘柄:6258/JASDAQ)
8,110円 × 300株 = 243万3,000円
●03月09日(木)
平田機工(銘柄:6258/JASDAQ)
8,210円 × 300株 = 246万3,000円
まず、建て玉で約定した金額は「243万3,000円」ですから、この金額に金利が発生します。バカですからすんごい高い株で建て玉をしていますね(笑)。
制度信用取引を選んでいますので金利は「2.98%」です。同じ株ドットコム証券なので「日歩」は上で計算したとおりです。
03月07日(火)に建て玉をしているので、受け渡し日の4営業日目は03月10日(金)。株式を売却したのは03月09日(木)ですから、受け渡し日の4営業日目は03月14日(火)になります。ですので、借りた日数は、03月10日 ⇒ 03月14日で「5日間」。
つまり、
243万3,000円 × 0.00816438356164384% × 5日 = 993.1972603円
1円未満は切り上げとなっているので「994円」が金利負担となります。信用建て玉「200万円超-500万円以下」の手数料が、株ドットコム証券の場合「1,100円」なので、
「1,100円 + 994円」 = 2,094円
で、これに消費税が掛かりますから計「2,262円」が手数料として引かれているはずです。先の記事で「3万円の儲け!」なんて書いていましたが、実際には「2万7,738円の儲け」が正解です。この例でも分かるとおり、買い玉を建てるのはいいのですが、売却まで時間が掛かるとその分だけ金利負担が大きくなり、利益を食っていくことになります。
信用買いを行う際にはこのリスクと、金利コストの計算を怠らないようにしないといけません。次回は信用売りの場合がどのような計算になるかをやってみましょう。
(吉田ハンチング@dcp)