2024年08月16日、韓国の防衛事業庁が「第163回防衛事業推進委員会」を開催。今回議論された案件についてのプレスリリースが出ていますが、この中に見逃せない記述があります。
第163回防衛事業推進委員会(以下「防推委」)が08月16日(金)午前10時に国防部で開催されました。
今日の防推委では、以下の案件が議論されました。
1.155mm射程延長弾の量産計画(案)
2.弾道修正信管事業推進基本戦略(案)
3.中型戦術車両事業推進基本戦略の修正(案)
4.韓国型戦闘機(KF-21)の共同開発負担割合調整および後続措置計画(案)1.155mm射程延長弾事業
この事業は、わが軍の自走砲に搭載されている155mm航力減少弾よりも射程が約30%以上延長される弾を確保するもので、2023年にシステム開発を完了しました。今回の防推委では、初の量産計画(案)を審議・決定しました。本事業により、わが軍の自走砲は現在よりも大幅に射程が向上し、遠距離の敵を攻撃する能力を確保することで、砲兵部隊の戦力が一層強化されると期待されています。
また、将来的には弾道修正信管やK9自走砲と連携した輸出も可能になると期待されています。
――事業期間:2024年~2027年、総事業費:約3,754億ウォン2.弾道修正信管事業
この事業は、155mm射程延長弾の精度を向上させるため、誘導機能を持つ弾道修正信管を確保するもので、今回の防推委では、企業主導の研究開発で推進する事業推進基本戦略(案)を審議・決定しました。この弾道修正信管事業により、射程が延長された砲弾の精度が向上し、遠距離に位置する敵目標に対する打撃効果が増大し、弾薬の消費量を削減できるため、わが軍の砲兵戦力の強化に大きく貢献できると考えられます。
また、155mm射程延長弾とパッケージ化することで、K-防衛産業のグローバル展開に大きな役割を果たすことが期待されています。
――事業期間:2025年~2033年、総事業費:約8,400億ウォン3.中型戦術車両事業
この事業は、歩兵部隊の迅速な機動を実現するため、中型戦術車両を確保するもので、今回の防推委では、向上した国内技術水準を考慮して、取得方法を研究開発から国内購入に変更する事業推進基本戦略の修正(案)を審議・決定しました。本事業により、多数の戦闘兵力の迅速な機動を通じた効率的な戦力運用が可能となり、わが軍の戦力強化に寄与できると期待されています。
――事業期間:2026年~2031年、総事業費:約3,825億ウォン4.韓国型戦闘機(KF-21)共同開発事業
この事業は、空軍の長期運用戦闘機(F-4、F-5)を代替し、基盤戦力として活用する韓国型戦闘機を、韓国とインドネシアの国際共同研究開発によって確保するものです。今回の防推委では、インドネシアのシステム開発負担金を6,000億ウォンに調整し、技術移転の調整や不足資金の確保などの後続措置計画(案)を審議・決定しました。
インドネシア型戦闘機の量産(IF-X)など、両国の協力関係および不足資金の確保可能性を総合的に考慮しました。
インドネシア側との負担金協議を円滑に進め、国民の期待に応える形で事業が成功裏に終了するよう努める予定です。
本事業を通じて、独自の戦闘機開発能力を保有し、適時な戦力化および防衛産業の輸出に貢献できると期待されています。
――事業期間:2015年~2026年、総事業費:約8兆1,000億ウォン
ご注目いただきたいのは「4」の、韓国型戦闘機「KF-21」共同開発事業です。
インドネシアは1.2兆値切ったわけだが……
Money1でも何かあるたびにご紹介してきましたが、韓国型次期主力戦闘機と称するものは、インドネシアとの共同開発案件でした。
総事業費「8兆8,000億ウォン」の約20%「1兆7,338億ウォン」(約1.7兆あるいは約1.8兆と報じられます)を負担するという話で、費用負担の代わりに試作機1機と技術資料を受け取り、インドネシアで48機を現地生産する計画だったのです。
ところが、インドネシア側がお金がない――といい、2023年末までに支払ったのは3,800億ウォン――と報じられています。
韓国はこれまで散々なだめすかしてきたのですが、2022年02月、インドネシアはフランスからダッソー・ラファール戦闘機42機を購入する81億ドルの契約を結びました。08月にはアメリカ合衆国『ボーイング』社から第4.5世代戦闘機F-15EXを24機購入するという覚書に調印しています。
つまり、インドネシアにとってKF-21はすっかり「いらないコ」になっているのです。
しかし、インドネシアに逃げられてしまうと、総事業費に穴があきます。ちょっとでもインドネシアから取り立てないと、韓国としても困りますし、そもそもメンツ丸潰れです。
これまで韓国のKF-21の開発企業である『KAI』は、「インドネシアからの拠出金がなくても財政難にはならない」とし、同社関係者は、「『プランB』があり、いつ実行に移すか検討している」と強弁していました――が、そんなものはなかったようです。
2024年05月にMoney1でもご紹介したとおり、インドネシアが「費用負担は6,000億ウォンしかしない。その代わり技術移転の少なくていい」と言い出した――と報道が出ていました。
今回公表された防衛事業庁のリリースを見ると、「インドネシアの負担を6,000億ウォンに調整」――となっていますから、先の報道どおりの結果になったわけです。
つまり、インドネシアは予定より1.2兆ウォンほど値切りました。先に3,800億支払っていますので、残り「2,200億ウォン」です。
ただし、これはあくまでも韓国側が決定した――という話。さあ、インドネシアは支払ってくれるのでしょうか?
ご期待ください。
(吉田ハンチング@dcp)