ここのところ韓国『サムスン電子』に暗雲が垂れ込めていますが、その理由の一つが『NVIDIA』による「HBM(高帯域メモリー)3E」の品質検証テストを受けているのにさっぱり合格してという話が出てこないことです。
業界の話では、2024年第3四半期には合格するだろう――という話だったのですが、09月はもう過ぎました。このままでは2024年中には無理だろうし、たとえ品質合格しても、もう「4」が出てくるだろうから無意味――という観測が出ているのです。
韓国メディア『NEWSIS』は以下のように報じています。
複数の業界関係者によると、現在、1年以上にわたって『NVIDIA』の品質検証(Qual Test)を受けている『サムスン電子』のHBM 3E製品は、遅くとも今年第3四半期中にはテストを通過すると予想されたが、まだ通過できず、年内通過が難しいという観測が有力視されている。
(中略)
『サムスン電子』に精通した業界関係者は、「『サムスン電子』のHBM3Eの『NVIDIA』納品は、もはや遅延ではなく、事実上納品が実現しないと見られる。サムスン電子がHBM3Eの代わりに次世代HBM4の納品に専念するのが順序的にも正しい」と述べました。
(中略)
これは、競合会社である『SKハイニックス』が今年03月にHBM3E 8段を納品し始めたのに続き、第4四半期に12段を供給することにしたのとは対照的だ。
(中略)
『サムスン電子』が『NVIDIA』へのHBM3E納品が不発となった背景には、HBM市場への対応が比較的遅れたことが主な原因だ。
『サムスン電子』のライバルである『SKハイニックス』は、2020年07月にHBM2E(第3世代)、2022年06月にHBM3(第4世代)を先に量産し、主導権を握った。
業界では、『サムスン電子』が過去にHBMの収益性を低く判断し、関連組織を縮小するなど投資を減らしたことを敗因として挙げている。
現在、『SKハイニックス』と『サムスン電子』の技術格差は1年以上開いているという分析も出ている。
『NVIDIA』はグローバルAI半導体市場を事実上独占している企業で、このサプライチェーンから排除されるということは、HBMの主力市場を獲得できないことを意味する。
『NVIDIA』の今年のHBM3Eのシェアは、グローバル市場で60%以上を占めるほどだ。
しかし、強豪の『サムスン電子』がHBM3Eの代わりにHBM4市場を先取りするために総力戦を展開し、成果を出せば状況を逆転できる可能性がある。
『サムスン電子』はこのHBM4市場をつかむために総力戦を展開しているという話だ。
(後略)
HBM3Eで今から品質テストに合格しても仕方がないので、その次の「4」に注力しており、これがうまくいけば挽回できる――という話なのですが、「3E」はできなかったけど「4」はできました――なんてことが本当に可能なのでしょうか。
先にご紹介したとおり、後ろからは国の全面バックアップを受けた中国企業が山姥のごとく追いかけてきているのです。
突然「できました!」と発表される可能性もありますが、なったらなったでそれは「アーニングサプライズ」でしょう。喜ぶべきことですが、そんなにうまくは運ばないでしょう。
かといって『SKハイニックス』の方がうまくいっているかというと……そんなこともありません。グループ全体では金欠でまさに半導体の業績次第という状態です。
(吉田ハンチング@dcp)