韓国は電気代が安いなどといわれますが、『韓国電力公社』が飛びそうになっていることからも分かるとおり、真っ当な電気料金を徴収していないからです。
同様の構造なのが韓国の「鉄道」です。
「韓国の鉄道料金は安い!」といわれますが、これも乗降客からきちんと対価を取っていません。補助金頼みで運営されています。政府からの支援がなければ飛ぶ構造です。
ソウル地下鉄はもう維持できない!
Money1でも先にご紹介したことがありますが、ソウル市の人の移動を担う「ソウル地下鉄」は火の車で、呉世勲(オ・セフン)市長が「もう無理」とギブアップ宣言をしているくらいです。
上掲の記事でもご紹介しましたが、
輸送原価:1,988ウォン
※2022年末時点データ
輸送原価は、基本運賃のなんと約1.6倍です。こんな状態で黒字になるわけもなく、不足分は地方政府(ソウル市)が穴埋めしてもたせているのが現実です。
上掲のとおり、2020年にソウル地下鉄の赤字は1兆ウォンを超え、2021年も約1兆ウォン水準で下がりませんでした。
そのため呉世勲(オ・セフン)ソウル市長は、2022年12月に「地下鉄の赤字幅が大き過ぎる。政府が助けてくれないとなれば、料金引き上げを考慮するしかない立場となり得る」とギブアップ宣言。
「『交通は福祉』という次元で年1兆ウォンの赤字を毎年計上することはできない」と述べました。
政府は「知らんぷり」のママ
――で、どうなったかというと、政府は知らんぷりを決め込んでいます。
ただし、政府の態度にも理由があります。そもそも地下鉄は各地域の管轄なのです。ソウル地下鉄は『ソウル交通公社』の仕切りです。
「そっちでなんとかしてくれよ」というのが当然であって、仮にソウル地下鉄だけ支援するということになれば、残りの地域だって黙っていません。「うちも助けろ!」になるに決まっています。
このソウル地下鉄の窮地について、『NEWSIS』がキム・ヒョンギ「ソウル市議会」議長にインタビューした記事を出しています。
キム議長が何と言っているかというと――、
「ソウル地下鉄はソウル市民だけが利用する地下鉄ではない。京畿道民、仁川市民だけでなく路線が拡大して全国民が利用する地下鉄だ」
「『韓国鉄道公社』の赤字の一部は政府が支援している。
全国民が利用するソウル地下鉄を支援してくれないのは公平性に合わない」
――です。『韓国鉄道公社』は支援されているじゃないかと不満を表明していますが、同社の場合は(一応)全国の路線と統括する会社であって、地下鉄のように地域ごとに仕切る会社があるわけではありません※。
※『韓国鉄道公社』はソウル本部の他、「首都圏東部本部」「江原本部」など地域ごとの本部を置いています。『国家鉄道公団』が所有する鉄道関連施設を上下分離方式で運営しています。
一応スジとしては、前記のとおり『ソウル交通公社』が責任を持って公共交通機関を維持するという建て付けなのです。
やっと地下鉄料金の値上げに向かう
解決策としては、地下鉄料金を上げるしかないのですが、ようやくそれに踏み込みます。
同じくキム議長ですが、以下のように述べています。
「公共交通料金を2015年以降全く引き上げなかった。
今回は一度に上げようとしているので、庶民経済に及ぼす影響、庶民家計に及ぼす悪影響をソウル市議会が考慮しなければならなかった。
150ウォンずつ二度にわたって引き上げることにした。
市民には申し訳ないが、もはや赤字を放置していくという安全など大きな問題が発生する」
市議会が庶民家計に及ぼす悪影響を市議会が考慮しなければならなかった、と「政府が支援してくれなかったからだ」と言わんばかりの発言がありますが、市議会が市民生活を考えるのは当たり前でしょう。
しかし、発言にあるとおり、やっとのことで計300ウォン上がる予定です。
市民生活には影響があるでしょうが、中央政府からの補助金でなんとかしようとするよりは、よほど健全な解決法といえます。
「実際に乗った人からそれにふさわしい対価をもらおう」というわけですので。
(吉田ハンチング@dcp)