尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領弾劾の動きが強まっている韓国ですが、いろんな意味で前文政権で要職を務めた人物に注目が集まっています。
『WTO』(World Trade Organizationの略:世界貿易機関)の事務局長に立候補して落選した兪明希(ユ・ミョンヒ)さんもそのひとりです。
この兪明希(ユ・ミョンヒ)さんは、文政権下で産業通商資源部の通商交渉本部長を務めた人です。
兪明希(ユ・ミョンヒ)さんは、『WTO』事務局長選挙が落選した後、表舞台から姿を消していたのですが、韓国メディア『韓国経済』がインタビュー記事を出しました。
トランプさんが再選されたというので、トランプ大統領政権とどのように交渉すべきかを取材しています。
兪明希(ユ・ミョンヒ)さんは、先のトランプ政権時、2017年の米韓自由貿易協定(FTA)再交渉時に、韓国側首席代表を務めていたから――というのが取材した理由ですが、このインタビューでは以下のように述べています。記事より一部を以下に引用します。
(前略)
――トランプの2期目の政策がより強硬になると考える理由は?「トランプの側近と共和党の人材の構成が変わりました。
トランプ1期目の時には無分別な関税課税に反対する人材も残っていましたが、現在はトランプの周囲や共和党内には関税を最良の解決策と信じる人材ばかりです」
――すべての輸入品に10~20%の一律関税が現実化する可能性は?
「高いです。
トランプの交渉スタイルと戦略を理解する必要があります。
1986年に最後に使用された通商拡大法232条(すべての輸入鉄鋼に25%の関税を一括で課す案)を2017年に持ち出した政権です」
――韓米はFTAを結んでいるが。
「トランプが他国との経済関係を評価する基準は貿易赤字です。
同盟国かどうか、FTA締結国かどうかは重要ではありません。
韓国はFTA締結国でありながらも、中国やロシアとともに鉄鋼関連の追加関税対象国に指定されたこともあります」
――トランプの交渉戦略やスタイルはどのようなものか?
「予測困難な事柄を絡め、意外なカードを切る戦略をとります。
メキシコとは通商交渉をしながら、突然不法移民問題を絡めてきました。意見の相違が生じた際の時間稼ぎとしての実務グループの編成や追加検討などは通用しません。
『2カ月以内に合意が得られなければすぐに措置を取る』といった具合です」
――米韓FTA再交渉への懸念も多い。
「トランプは今回の選挙過程で米韓FTAについては触れていません。
FTAの全面再交渉を求めるよりも、自動車など特定の分野に限定して要求してくる可能性が高いです」
――韓国の対応戦略は何か。
「2017年、私たちは米国の要求に最大限速やかに応じ、3カ月で協議を妥結させました。
中間選挙前にトランプ政権に『小さな勝利』を提供し、実利を得る方が得策だとの判断でした。
時間がかかった米・カナダ・メキシコ協定(USMCA)では、メキシコははるかに不利な協議結果を受け入れました」
(後略)
兪明希(ユ・ミョンヒ)さんの中では、前トランプ政権下での交渉をうまくやった――と自負しているようです。
しかし、上掲の先記事でもご紹介しましたが、拙速に妥結した「鉄鋼」に関しての交渉は、その後、韓国鉄鋼企業を苦しめることになりました。「合衆国と真っ先に交渉妥結した」のは良かったのでしょうか。
今回の第二期トランプ政権下で韓国がどのような交渉を行うことになるのか要注目です。保守寄りの尹錫悦(ユン・ソギョル)政権でまだ良かった――と見るべきでしょう。
北朝鮮に送金し、「中国にも謝謝、台湾にも謝謝と言っときゃいいんだ」と述べる李在明(イ・ジェミョン)さんが大統領だったら、韓国は間違いなく「中国の味方だ」と見られたことでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)