電気自動車に全振りした韓国の完成自動車メーカーですが、電気自動車のニーズは停滞しています。
「キャズム」といわれたりしますが、このキャズムは「深い溝」といった意味で、そもそもはアメリカ合衆国のマーケティング理論家 Geoffrey A. Moore(ジェフリー・ムーア)が著書『Crossing the Chasm』(邦題『キャズム』)で提唱した概念です。
アーリーアダプター(初期採用者)とアーリーマジョリティ(前期多数派)の間にある大きな心理的・市場的ギャップを指す言葉です。
簡単にいえば、「新しいモノ好き」が最初に飛びつき、その後一般消費者に広がっていきますが、多数派になっていく過程で「新しいモノ好き」と「一般消費者」の間に、ギャップが生じます。
これがキャズムです。
電気自動車では、このキャズムが最初に考えていたよりもずっと長引いている――といわれます。
そもそも本当に電気自動車がそれほど一般的になるのか――ですが、韓国では電気自動車の普及速度が減速しています。
「電気自動車のキャズム」とは、
2023年頃から韓国のEV市場が、初期の熱心な購入層(環境意識が高い人・新し物好き)から、一般消費者層への移行に失敗しかけている
状態を指しています。
電気自動車の普及が減速する韓国
どのくらい減速しているかというと、政府の補助金が余るほどです。
国会予算政策処(略称「NABO」)によれば、
2021年:1,120億ウォン
2022年:4,385億ウォン
2023年:6,563億ウォン
2024年:7,982億ウォン
へと拡大しているのです。

↑2024年08月01日、韓国・仁川西区のマンションの地下駐車場で火災が発生しました。ベンツの電気自動車が自然発火し、周囲に駐車していたクルマに延焼。約100台が巻き込まれた大規模な火事になりました
電気自動車の需要が縮小しているのは、自然発火の発生や不可解な事故の発生などが影響したことは確かです。

基本的な充電施設の欠如や「受電時間がかかりすぎ」といった不便さに消費者が気付いたといったことが影響したと推測できます。
現在では「充電時間も短縮されている」のですが、一度「電気自動車は充電が大変」というイメージがつくと払拭するのは難しくなります。
電気自動車の普及が捗はかどらない!
2024年は、韓国政府の電気自動車の普及目標(新規登録台数)は23万3,000台だったのですが、実際に新たに登録された電気自動車は「12万2,675台」でした。
目標の約52.7%に過ぎません。
2025年の目標は「26万台」ですが、上半期時点での新規登録台数はたったの「8万310台」です。
つまり、目標の約30.9%しか達成していないのです。
なぜ韓国政府がいまだに電気自動車の普及を推進しているのかというと、文在寅アンポンタン大統領がクリーンエネルギー政策に舵を切り、「国家温室効果ガス削減目標(期限2030年)」を設定したからです。
どうするんですかね――なのですが、2025年08月04日、環境部の金星煥(キム・ソンファン)部長(長官)は、
「電気・水素車の比率が30%を超えるまで補助金政策を中断しない」
「世界の舞台でアメリカ合衆国・中国など先進国を上回れるよう支援する」
と述べました。
環境部では、内燃機関車を売却または廃車にして電気自動車を購入した場合、既存の補助金に加えて追加支援する「内燃車転換支援金」を新設する案も検討している――とのこと。
この金星煥(キム・ソンファン)というオッサンは、長官になる前は、
「内燃車購入の魅力度が依然高い」
「電気自動車を効果的に普及させるには、電気自動車普及活性化とともに内燃車削減を誘導する政策手段を導入することも必要だ」
――と述べていました。
中国のようになりたいみたいです。
(吉田ハンチング@dcp)






