2024年08月13日、韓国メディア『ソウル経済』がなかなかうがった記事を出しました。
「外人今年17兆嵐の買収…『国債発作』警告音」というタイトルで、あり得るかもしれないシナリオを提示しています。
結論からいうと「『韓国銀行』はこれから基準金利(政策金利と同義)を下げて、お金を回そうとするが、その意図は外国人投資家による国債売却によって邪魔されるかもしれない」というものです。
『ソウル経済』の記事を引用してもいいのですが、返ってややこしくなるので、どういうシナリオを想定しているのかをできるだけ簡単にやっつけてみます。
淡々と17兆ウォンを積み上げて……
まず、外国人投資家は2024年になって韓国の国債を大量に買収しています。これが話の前提です。
2024年08月12日までで純買収金額は16兆9,470億ウォン、つまり約17兆ウォンに達しています。
特に露骨なのは、
06月:10兆3,688億ウォン
07月:13兆6,437億ウォン
という巨額の買収を行っていることです。これは間もなく『韓国銀行』が基準金利を下げるだろう――と見越しての動きです。
政策金利が下がると、市場全体の金利が低下します。新規に発行される国債の利回り(クーポン金利)も低くなります。
それを見越して国債の大量買収を行った外国人投資家の目論見は次の2つにあると思われます。
①利回りの確保
投資家は、金利が高い段階で国債を購入すると、その後利下げが行われた場合でも、購入時の高い利回りが保証された国債を保有することができます。
②債券価格の上昇
政策金利の引き下げは、既発の高利回りの国債の価格を上昇させます。これは、投資家が新しい低利回りの国債よりも、既存の高利回りの国債を好むためです。
これにより、既存の国債を保有する投資家は、債券価格の上昇によるキャピタルゲインも期待できます。
つまり、外国人投資家が韓国の国債を大量に買収しているのは、『韓国銀行』が近い将来「利下げを行う」と見込んで、現在の比較的高い利回りの国債を手に入れ、その後の債券価格の上昇や安定した収益を狙うためです。
――で、その後が問題です。
「風が吹けば桶屋が儲かる」式で瞬間的に「逆に市場金利」が上がるかも
次の3ステップが予想されます。
1.債券価格の上昇
利下げが行われると「市場金利が下がる」ため、既に比較的高い利回りで発行されている既発債(過去に発行された国債)の価格が上昇します。
これは、新発債(新たに発行される国債)の利回りが低下するため、相対的に既発債の価値が高まるからです。
2.利益確定の売却
債券価格が上昇すると、投資家は保有する既発債を売却して利益を確定しようとします。
特に、短期的なキャピタルゲインを狙う投資家は、債券価格が上がったタイミングで大量に売却する可能性があります。
3.大量売却による国債利回りの上昇
債券が市場に大量に供給されると、その供給過剰によって債券価格が下落し、結果として国債の利回りが上昇することになります。
これは、価格と利回りが逆に動くという債券市場の基本的な関係によるものです。
「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話ですが――利下げが行われた後、外国人投資家が大量に韓国債を売却すれば、その結果、国債利回りが上昇する可能性がある――というわけです。
国債利回りが上昇すると、当然市場金利が上昇します。
つまり、『韓国銀行』が市場金利を下げようとして基準金利を下げた場合、その瞬間を狙っていた外国人投資家が国債を大量に売り浴びせると――国債利回りが上昇して、逆に瞬間的に市場金利が上がるかもしれないのです。
恐らく外国人投資家は売る気マンマンで仕込んでいます。
『ソウル経済』の表現を借りるなら「国債発作」が起こるかも……だそうですよ。
(柏ケミカル@dcp)