韓国の世論は反米に傾いています。
2025年09月04日(現地時間)、アメリカ合衆国のジョージア州に建設中だった、『現代自動車』と『LGエネルギーソリューション』の合弁会社の工場が、合衆国当局による急襲を受けました。
ビザなしのくせに訪米して仕事をしていた韓国人不法就労者が逮捕・拘禁されました。
09月11日に韓国政府がチャーターした飛行機に乗って、韓国人不法労働者316人が仁川空港に帰国。
韓国では「投資してやっているのに韓国人を逮捕するとは何事か」と反米感情が盛り上がりました。
また「関税交渉の合意」によって、対合衆国投資を3,500億ドル行うことになった※のですが、韓国では「そんなお金あるわけないだろ」と猛反発。これまた反米感情を高める「燃料」になっています。
※2025年09月30日現在「3,500億ドル」という数だけが注目されていますが――韓国大統領室の金容範(キム·ヨンボム)政策室長は、3,500億ドルとは別に1,500億ドルの投資があると明確に発言しましたし(09月09日)、合衆国から燃料購入:1,000億ドルもあるはず――なのです。
つまり、小計「6,000億ドル」の対合衆国投資が求められているのではないのか?――なのです。
韓国政府は、李在明(イ・ジェミョン)さんはじめ大統領室の高官を含めて、合衆国に要求されただけ投資するには「日本のように無制限の通貨スワップが必要だ」と主張しています。
しかし、これは大筋において「おかしな主張」なのです。
韓国の主張はお門違い
要求している「通貨スワップ」を何に使うつもりなのか?――です。
『FRB』の提供する「ドル流動性スワップ」というのは、危機時に各国の中央銀行が国内の金融機関へ短期ドル資金を供給するための流動性バックストップであって、政府や公的機関が対米投資の“前払い原資”に使うための資金調達手段ではありません。
※「backstop(バックストップ)」というのは、元々はボールがよそへ行ってしまわないように設けるフェンスやスクリーンを指す言葉です。
例えば野球のキャッチャー、審判の後ろにネットが張ってありますね。
あれが「バックストップ」です。日本ではバックネットといいますが、実はこれは和製英語なのです。
バックストップには「よそへこぼれるのを防ぐもの」から転じて「支援」「補強」という意味もあります。
英語で「financial backstop」といえば「金融援助」「財政支援」といった意味になります。
ドル流動性スワップの目的は、各国中銀 ←→ FRBの「往復の通貨交換」で、相手中央銀行が受け取ったドルは国内の金融機関向けに(オークションなどで)供給されます。
投資ファンドや政府の投資原資に直接回す主旨のものではありません。
はっきりいえば、金融危機などが生じてドル不足に陥った場合、「その危機が合衆国に及ばないよう」に、必要なだけドルを供給しますよ――というシステムです。
そのため、金融危機を招く可能性があるようなハードカレンシーを持つ国の中央銀行が対象です。
吹けば飛ぶよなウォンが対象になってないのは、当然のことです。
世界経済に影響を与えるような通貨ではないのです。
『FRB』の常設・事実上無制限のドル・スワップは、
『欧州中央銀行』
『日本銀行』
『イングランド銀行』
『カナダ銀行』
『スイス国民銀行』
――の中央銀行だけが対象で、『韓国銀行』は平時の常設対象外。
2020年03月に『FRB』が一時的に(急きょ)ドル流動性スワップをその他9つの中央銀行と締結しましたが、これは世界的なドル不足によって、合衆国経済をも毀損する可能性が高まったからです。
このときに『韓国銀行』も上限「600億ドル」でドル流動性スワップが供与された前例があるに過ぎません。
しかし、臨時のドル流動性スワップは予定どおり2021年12月末で終了しました。世界的な「ドルの流動性不足」が解消されたからです。
合衆国からすれば吹けば飛ぶよなウォンとのドル流動性スワップなどなんの得にもならないので、当然のことです。
繰り返しになりますが、ドル流動性スワップとは、危機時のバックストップの役割を果たすものであり、そのためにあります。
ですから、「無制限」を前提に「投資の前払い」(トランプ大統領は前払いと述べました)の議論を行うなどというのは、完全に「制度外」の話なのです。
ましてや、韓国が「投資のためのドルの原資として使おう」などと考えているのなら、完全にお門違いで、「3,500億ドル投資の前提に“無制限スワップ”が必要」という主張は、制度の目的・運用から脱線しています。
特定の国相手にドル流動性スワップを締結することはない
実は、韓国メディアが直接連銀に「韓国が一時的なものでも通貨スワップを締結することは可能ですか」と聞いたことがあります。
若い読者の方はご存じないかもしれないのですが、聞いたのは『SBS』で、返事はきっぱりしたものでした。
Q1.合衆国は準(基礎)基軸通貨国以外の国と常設通貨スワップを締結したことがあるか?
――ない。
Q2. 韓国と同じ規模の国が為替レート不安を理由に合衆国と常設通貨スワップを締結しようとすれば考慮できるか?
――いいえ。
Q3. 一時通貨スワップの場合、特定の国と締結が可能か?
――そんなことはない。
Q4.米ドルの価値上昇で世界の外国為替市場が不安だ。合衆国がこれらの国に提供できる流動性供給オプションは何ですか?
――ノーコメント。
ただし、現在はトランプ大統領が合衆国を仕切っており、この人は何を言い出すか分かりません。また、『FRB』に平気で圧力をかける人です。
合衆国は「韓国は親中だから助けない」のでは?
2025年09月24日(現地時間)、合衆国のベッセント商務長官は「アルゼンチン中央銀行に200億ドル規模のスワップラインを提供する準備をしている」と表明しています。
トランプ大統領も「アルゼンチンを助ける。しかしベイルアウト(bail out)は不要」と述べています。
ベイルアウトというのは、経営が行き詰まった企業や金融機関、あるいは国家に対して、政府や国際機関などが公的資金を投入して救済すること――を指します。
つまり、丸ごと公的資金で穴埋めする救済ではなく、条件付きの支援や市場メカニズムを通じた支援を考えている――と見るべきでしょう。
韓国では「韓国にはくれないのか」と物乞い根性を発揮しているのですが、合衆国がアルゼンチンを支援するのは、以下のような理由があると考えられます。
1.地政学(対中)
アルゼンチンが中国人民銀行(PBoC)の人民元スワップに大きく依存してきた流れを反転させたい(対中金融依存の縮小)。米側の支援は中国スワップの縮小・見直しを条件に絡められていると報じられています。
2.イデオロギー/同盟政治
トランプとミレイ大統領の政治的近接性(市場重視・反規制・反左派)が強く、合衆国は「同質的な保守リーダ」”を地域に維持する意図があると分析されます。
3.金融安定(危機拡大の封じ込め)
ペソ不安・外貨不足が激化すると、債務再編や周辺国・市場への波及が強まる懸念があります。ドル流動性の後ろ盾(スワップや債券購入示唆)で期待・信認を下支えし、ショート(売り)攻勢を抑える狙いがあると見られます。
4.政策レバレッジの確保
合衆国財務省のESFや国際金融機関(『世界銀行』/『IMF』)と組み合わせて政策条件(為替・資本フロー・財政運営等)を働きかけ、ミレイ政権の路線を「合衆国に整合的」に誘導する思惑があると思われます。
5.資源・経済利害
リチウム、Vaca Muerta(バカ・ムエルタ)※のシェール油ガスなど資源分野での合衆国企業機会を広げたい、という見方も有力です。短期は為替安定、長期は投資環境整備につなげたいという計算があるでしょう。
※Vaca Muerta(バカ・ムエルタ)は、世界有数規模のシェール資源埋蔵地です。合衆国の『EIA』(エネルギー情報局)によれば、世界で2番目に大きいシェールガス資源量、4番目に大きいシェールオイル資源量を持つと評価されています。アルゼンチン政府にとっては外貨獲得・経済再建の切り札です。当然ですが、韓国にはこんな「うまみ」はありません。
早い話が、トランプ政権がアルゼンチンを助けるのは「対中包囲」の一環ですし、助けると「うまみ」があるからです。
韓国はどうでしょうか? 親北・親中・反米・反日の人物が大統領に成りおおせ、同様の志向の政権が国を「おしまい」に向かって主導しています。
合衆国が助けるでしょうか。
韓国がいくら困っても、むしろ「韓国は親中&反米だから助けない」になるのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)






