もう10月も終わるというのにイギリスがEU離脱する際の条件についてまだ揉めています。いわゆる「ブレグジット問題」ですが、これについての報道が盛んなため、最近「バックストップ」という言葉をよく目にするようになりました。皆さんは「バックストップ」とはどういう意味かご存じでしょうか?
「バックストップ(backstop)」は元々はボールがよそへ行ってしまわないように設けるフェンスやスクリーンを指す言葉です。例えば野球のキャッチャー、審判の後ろにネットが張ってありますね。あれが「バックストップ」です。日本ではバックネットといいますが、実はこれは和製英語なのです。
バックストップには「よそへこぼれるのを防ぐもの」から転じて「支援」「補強」という意味もあります。英語で「financial backstop」といえば「金融援助」「財政支援」といった意味になります。
ブレグジットで使われている「バックストップ」は「バックストップ条項」を指していて、ブレグジットを「支援する」、あるいは「補助する」条項です。一番大きなバックストップ条項は北アイルランド(イギリス領)に関するものです。
ブレグジットによって北アイルランドとアイルランドとの間に「ハード」な「国境(ボーダー)」ができるのを避ける条項を設けようとしており、これがバックストップ条項と呼ばれています。イギリス側は「ハードボーダーを設けない期間を定める」ことを主張し、EU側は「ハードボーダーを設けない期間を無制限にする」ことを望んでいます。
ハードボーダーが設けられない北アイルランドの口はイギリスに開いた穴であり、この穴を通じてEUに付随し続けることになります。そのためイギリスをハードにEUから離脱させたい人達からすれば「移行期間はともかくとして、いずれ穴は塞がなければならない」のです。また、この穴は北アイルランドの独立問題(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国からの独立:アイルランドへの帰属問題)とも関わっています。ユナイテッド・キングダム、連合王国から独立させたくない人からすればずっと穴が開き続けているのは大問題というわけです。
対するEU側は「イギリスをEU側へ付随させておきたい」わけですから、当然「穴はずっと無期限に開けておきたい」と主張し、「北アイルランドをEUの関税域内に残す案」をイギリスに飲ませようとしています。また北アイルランドの独立(アイルランドへの帰属)を望む人からすればEUとの関係が密な方が望ましいでしょう。
というわけでブレグジット問題についての報道では「バックストップ」という言葉が頻繁に登場するわけです。
(柏ケミカル@dcp)